古典ライブラリー

万葉集 巻第三 282番

つぬさはふ 磐余も過ぎず

春日老(かすがのおゆ)

まだ磐余も通り過ぎていない。泊瀬山はいつ越えられるのだろうか。夜はふけていくのに。夜道を急ぐ旅のもどかしさを歌った歌。

夜ふけの山道を、旅人がたいまつを手に急いでいる。行く手に黒々とした山がそびえている

題詞春日藏首老の歌一首

  1. 1つぬつぬつぬさはふさはふさわう角障經
  2. 2磐余いはれ磐余いはれいわれももも過す過すすぎぎぎずずず石村毛不過
  3. 3泊瀨はつせ泊瀨はつせはつせ山やま山やまやま泊瀨山
  4. 4いついついつかかかももも越こ越ここえええむむん何時毛將超
  5. 5夜よ夜よよははは更ふ更ふふけけけにににつつつつつつ夜者深去通都

引用の仕方

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現代語訳

(つぬさはふ)磐余もまだ通り過ぎていない。泊瀬山はいつ越えられるのだろうか。夜はふけていくのに。

意訳

磐余(今の奈良県桜井市西部)から泊瀬(初瀬)を越えて東国へ向かう道で、作者は日が暮れてもまだ磐余を出られずにいる。泊瀬山を越えるのはいつになるのかと、夜道を急ぐ旅人のもどかしさが率直に歌われている。

語釈・文法注

文法・本文

つぬさはふ
「磐余(いはれ)」にかかる枕詞。
更けにつつ
「つつ」で結び、詠嘆をこめる。ふけていくのに。

和歌

作者
春日老(生没年未詳)
僧弁紀が還俗して春日倉首老と名のった。大宝元年(701)に還俗し、のちに常陸介となった。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・282番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
状況
春日老が、大和の磐余から泊瀬へ向かう夜の旅で詠んだ歌。

修辞

枕詞
「つぬさはふ」が「磐余」にかかる。

解説

作者の春日老は、もとは弁紀という僧で、朝廷の命によって還俗した。懐風藻にも漢詩が残る知識人である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、98頁(コマ53)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、97頁(コマ54)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日