古典ライブラリー

万葉集 巻第三 278番

志可の海人は

石川君子(いしかわのきみこ)

志賀島の海人の娘は、海藻を刈り塩を焼くのに忙しくて、髪をとかす小櫛を手に取ってみることもないことだ。働く漁村の女性をいとおしんだ歌。

海辺で塩を焼く煙が立ちのぼる中、髪を乱したまま海藻を運ぶ若い娘たち

題詞石川少郎の歌一首

  1. 1志可しか志可しかしかののの海あ海ああ人ま人ままははは然之海人者
  2. 2藻め藻めめ苅か苅かかりりり鹽しほ鹽しほしお燒や燒ややききき軍布苅鹽燒
  3. 3暇いとま暇いとまいとまなみなみなみ無暇
  4. 4髮かみ髮かみかみ梳すき梳すきすきののの小を小をお櫛ぐし櫛ぐしぐし髮梳乃少櫛
  5. 5取と取ととりりりももも見み見みみなくなくなくににに取毛不見久爾

引用の仕方

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現代語訳

志賀の海人は、海藻を刈ったり塩を焼いたりして暇がないので、髪をとかす小櫛を手に取ってみることもないことだ。

意訳

筑紫の志賀島の海人の娘たちは、海藻を刈り、塩を焼くのに追われて、髪をとかす暇もない。大宰府に赴任した都の官人が、身なりを整える暇もなく働く漁村の娘たちを、同情と親しみをこめて眺めた歌である。

語釈・文法注

文法・本文

暇なみ
「なみ」は「無し」の語幹+「み」。暇がないので。

和歌

作者
石川君子(生没年未詳)
奈良時代の官人。大宰少弐などを務めた。左注に、号を少郎子といったとある。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・278番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
石川君子(少郎)が、筑紫の志賀島の海人を詠んだ歌。

解説

志賀島は博多湾の入り口にある島で、海人の住む所として知られ、万葉集に多く詠まれる。都の官人の目に映った地方の暮らしの一場面として、貴重な歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、97頁(コマ52)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、96頁(コマ54)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日