万葉集 巻第三 269番
人見ずば
人が見ていなければ、私の袖で隠してあげようものを。焼けて赤肌になっているのだろうか、着物も着ないで来たことだ。赤土の屋部坂を、裸で来た人にたとえた戯れの歌。
場面イラスト(準備中)
題詞阿倍女郎の屋部坂の歌一首
現代語訳
人が見ていなければ、私の袖で隠してあげようものを。焼けているのだろうか、着物も着ないで来たことだ。
意訳
屋部坂は、草木がなく赤い土がむき出しになった坂だったのだろう。作者はその坂を、着物も着ずに日に焼けた人の姿に見立て、人目さえなければ私の袖で隠してあげるのにと、ユーモアをこめて歌っている。
語釈・文法注
文法・本文
- 燒けつつかあらむ
- 「か」は疑問。焼けているのだろうか。
和歌
- 作者
- 阿倍女郎(生没年未詳)
奈良時代の女性歌人。巻第四に中臣東人との贈答がある。 - 出典
- 『万葉集』巻第三・雑歌・269番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
- 状況
- 阿倍女郎が、屋部坂(所在未詳)を詠んだ歌。
修辞
- 擬人法
- 赤土の坂を、着物を着ないで日に焼けた人にたとえる。
解説
歌意が取りにくく、さまざまな解釈がある。坂を人に見立てた機知の歌とみるのが一般的で、宴席などでの戯れの作であろう。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、96頁(コマ52)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、95頁(コマ53)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日