古典ライブラリー

万葉集 巻第三 245〜246番

聞きし如

長田王(ながたのおおきみ)

話に聞いていたとおり、まことに貴く不思議なほどに神々しいことだ、この水島は。筑紫に遣わされた長田王が、肥後の水島を訪れて詠んだ歌二首。

静かな入り江に浮かぶ小さな岩の島に、旅の貴人を乗せた船が近づいていく

題詞長田王、筑紫に遣され、水島を渡る時の歌二首

  1. 1聞き聞きききききししし如ごと如ごとごと如聞245
  2. 2まことまことまこと貴たふと貴たふととうとくくく眞貴久
  3. 3奇くす奇くすくすしくしくしくももも奇母
  4. 4神かむ神かむかむさびさびさび居を居をおるるるかかか神左備居賀
  5. 5これこれこれののの水みづ水みづみず島しま島しましま許禮能水島
  6. 6葦北あしきた葦北あしきたあしきたののの葦北乃246
  7. 7野坂ぬさか野坂ぬさかぬさかののの浦うら浦うらうらゆゆゆ野坂乃浦從
  8. 8船ふな船ふなふな出で出ででしししててて船出爲而
  9. 9水みづ水みづみず島しま島しましまににに行ゆ行ゆゆかかかむむん水島爾將去
  10. 10波なみ波なみなみ立た立たたつつつなななゆめゆめゆめ浪立莫勤

引用の仕方

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現代語訳

〔245〕話に聞いていたとおり、まことに貴く、不思議なほどに神々しいことだ、この水島は。

〔246〕葦北の野坂の浦から船出して、水島に行こう。波よ、決して立つな。

意訳

水島は、景行天皇が島の崖から湧き出る清水を得たという伝説のある島で、日本書紀にもその名が見える。長田王は、伝説の島を目の前にして、聞いていたとおりの神々しさに打たれる。246番では、これから水島へ船出するので、波よ立たないでくれと海に呼びかけている。

語釈・文法注

文法・本文

神さび居るか
「神さぶ」は神々しく振る舞う。「か」は詠嘆。
波立つなゆめ
「な」は禁止、「ゆめ」は決して。

和歌

作者
長田王(?–737)
奈良時代前半の皇族。近江守・摂津大夫などを務めた。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・245〜246番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
長田王が筑紫に遣わされ、肥後国の水島(今の熊本県八代市の球磨川河口にある小島)を訪れたときの歌二首。

解説

伝説の地を実際に訪れた感動を、「聞きし如」という言葉で率直に表している。245番は水島に着いてからの歌、246番はそこへ向かう前の歌で、並びは逆になっている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、93頁(コマ50)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、91頁(コマ51)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日