古典ライブラリー

古今和歌集 巻第十九 雑体(長歌) 1005番

ちはやぶる

凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)

十月になったというのか、今朝からは、空が曇りきらないうちに時雨が降り、紅葉とともに、古い都の吉野の山の山風も日ごとに寒くなっていくと、玉の緒が解けるように霰がしごき散らされて乱れ、霜が凍ってますます固まった庭の面にまだらに見える冬草の上に降り敷く白雪が積もりに積もるように、私は年を数多く過ごしてしまったことだ。

作者
凡河内躬恒
  1. 1冬ふゆ冬ふゆふゆのながのながのながうたうたうた詞書
  2. 2ちはやぶるちはやぶるちわやぶる   かみなづきとやかみなづきとやかみなずきとや1–2句
  3. 3けさよりけさよりけさよりははは   くもりもあへずくもりもあへずくもりもあえず3–4句
  4. 4うちしぐれうちしぐれうちしぐれ   もみぢとともにもみぢとともにもみじとともに5–6句
  5. 5ふるさとのふるさとのふるさとの   よしよしよし野の野のののやまののやまののやまの7–8句
  6. 6山やま山やまやまあらしもあらしもあらしも   さむくさむくさむく日ひ日ひひごとにごとにごとに9–10句
  7. 7なりゆけばなりゆけばなりゆけば   たまのたまのたまの緒を緒をおとけてとけてとけて11–12句
  8. 8こきちらしこきちらしこきちらし   あられみだれてあられみだれてあられみだれて13–14句
  9. 9しもこほりしもこほりしもこおり   いやかたまれるいやかたまれるいやかたまれる15–16句
  10. 10庭には庭にはにわのおもにのおもにのおもに   むらむらむらむらむらむら見み見みみゆるゆるゆる17–18句
  11. 11ふゆくさのふゆくさのふゆくさの   うへにうへにうえに降ふ降ふふりしくりしくりしく19–20句
  12. 12しらゆきのしらゆきのしらゆきの   つもりつもりてつもりつもりてつもりつもりて21–22句
  13. 13あらたまのあらたまのあらたまの   としとしとしをををあまたもあまたもあまたも   すぐしつるかなすぐしつるかなすぐしつるかな23–25句

引用の仕方

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現代語訳

〔詞書〕冬の長歌。

十月になったというのか、今朝からは、空が曇りきらないうちに時雨が降り、紅葉とともに、古い都の吉野の山の山風も日ごとに寒くなっていくと、玉の緒が解けるように霰がしごき散らされて乱れ、霜が凍ってますます固まった庭の面にまだらに見える冬草の上に降り敷く白雪が積もりに積もるように、私は年を数多く過ごしてしまったことだ。

意訳

初冬の時雨から霰・霜・雪へと進む冬の景を連ね、その積もる雪に重ねて、年を重ねた我が身の嘆きで結ぶ。

語釈・文法注

ふるさとの吉野
古い都の吉野。
玉の緒とけて
玉を貫いた緒が切れて。霰が散るさま。
むらむら
まだらに。

和歌

作者
凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 生没年未詳(九世紀末〜十世紀前半)
『古今和歌集』の撰者の一人。甲斐少目・和泉大掾など地方の下級官人を務めたが、歌才は宇多・醍醐両天皇に重んじられ、屏風歌や歌合で活躍した。貫之と並ぶ歌人とされる。三十六歌仙の一人。
出典
『古今和歌集』巻第十九・雑体(長歌)・1005番
歌体
長歌
状況
詞書「冬のながうた」(冬の長歌)。

修辞

見立て
霰を玉に見立てる。
枕詞
「ちはやぶる」「あらたまの」。

解説

凡河内躬恒の長歌。

関連

出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、188頁(コマ107)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日