古今和歌集 巻第十七 雑歌上 930番
おもひせく
思いをせき止めている心の中の滝だからだろうか。落ちるとは見えるけれど、音が聞こえない。
場面イラスト(準備中)
- 1田村田村たむらののの御時御時おおんときににに女房女房にようぼうのさぶらひにてのさぶらひにてのさぶらいにて御屏風御屏風おおんびょうぶののの繪繪え御覽御覽ごらんじけるにじけるにじけるに瀧瀧たき落落おちたりけるちたりけるちたりける所所ところ面白面白おもしろししし是是これををを題題だいにてにてにて歌歌うたよめとさぶらふよめとさぶらふよめとさぶらう人人ひとににに仰仰おおせられければよめるせられければよめるせられければよめる詞書
- 2おもひせくおもひせくおもいせく初句
- 3心心こころのののうちのうちのうちの二句
- 4瀧瀧たきなれやなれやなれや三句
- 5おつとおつとおつとははは見見みれどれどれど四句
- 6音音おとのきこえぬのきこえぬのきこえぬ結句
現代語訳
〔詞書〕田村の帝(文徳天皇)の御時、女房の詰め所で御屏風の絵をご覧になった時、滝が落ちている所がおもしろい、これを題にして歌を詠めと、お仕えする人に仰せられたので詠んだ歌。
思いをせき止めている心の中の滝だからだろうか。落ちるとは見えるけれど、音が聞こえない。
意訳
絵に描かれた滝は音がしない。それを、思いを抑えた心の中の滝にたとえた。
語釈・文法注
- 思ひせく
- 思いをせき止める。
和歌
- 作者
- 三条町(紀静子)(さんじょうのまち) ?–866
紀名虎の娘で、文徳天皇の更衣。惟喬親王の母。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第十七・雑歌上・930番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「田村の御時に女房のさぶらひにて御屏風の繪御覽じけるに瀧落ちたりける所面白し是を題にて歌よめとさぶらふ人に仰せられければよめる」(田村の帝(文徳天皇)の御時、女房の詰め所で御屏風の絵をご覧になった時、滝が落ちている所がおもしろい、これを題にして歌を詠めと、お仕えする人に仰せられたので詠んだ歌)。
修辞
- 比喩
- 絵の滝に心の中の涙を重ねる。
解説
三条町(紀静子)の歌。惟喬親王の母で、皇位につけない子を思う悲しみを秘めているとも読まれる。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、167〜168頁(コマ97)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日