古今和歌集 巻第十二 恋歌二 589番
露ならぬ
露ではない私の心を花に置きはじめてから、風が吹くたびに、物思いがつのる。

現代語訳
〔詞書〕三月ごろに、言葉を交わしていた人のもとへ、ほかの人が行って手紙を送ると聞いて、詠んで贈った歌。
露ではない私の心を花に置きはじめてから、風が吹くたびに、物思いがつのる。
意訳
恋しい人を花にたとえ、ほかの男が言い寄ると聞いて、風に散らされはしないかと心配する。
語釈・文法注
- せうそこ
- 手紙。
- 置きそめて
- 置きはじめて。
和歌
- 作者
- 紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第十二・恋歌二・589番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「やよひばかりに物のたうびける人のもとにまた人まかりてせうそこすと聞きてよみてつかはしける」(三月ごろに、言葉を交わしていた人のもとへ、ほかの人が行って手紙を送ると聞いて、詠んで贈った歌)。
修辞
- 寓意
- 花に恋人を、風に恋敵を重ねる。
解説
紀貫之の歌。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、105〜106頁(コマ66)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日