古今和歌集 巻第十一 恋歌一 470番
音にのみ
噂にばかり聞くあの人を思って、菊の白露のように、夜は起きていて、昼は思いの火に耐えきれず、消えてしまいそうだ。

現代語訳
噂にばかり聞くあの人を思って、菊の白露のように、夜は起きていて、昼は思いの火に耐えきれず、消えてしまいそうだ。
意訳
まだ会ったこともない人を思い、夜は眠れず、昼は恋の思いに身も消え入りそうだ、と菊の露にたとえる。
語釈・文法注
- 音にのみきく
- 噂にだけ聞く。「聞く」と「菊」。
- おきて
- 「起きて」と露が「置きて」。
- おもひ
- 「思ひ」と「火」。
和歌
- 作者
- 素性法師(そせいほうし) 生没年未詳(九世紀後半〜十世紀初め)
僧正遍昭の子。俗名は良岑玄利(よしみねのはるとし)といい、父の命で出家した。雲林院や大和の石上の良因院に住み、宇多天皇・醍醐天皇の歌会や屏風歌に召された。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第十一・恋歌一・470番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。
修辞
- 掛詞
- 「きく(聞く・菊)」「おき(起き・置き)」「ひ(思ひ・火)」。
- 縁語
- 「露」「置き」「消ぬ」。
解説
素性法師の歌。掛詞と縁語を重ねた技巧の歌。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、91頁(コマ59)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日