古今和歌集 巻第五 秋歌下 276番
秋の菊
秋の菊が美しく咲いている間は、髪に挿しておこう。花より先に散るとも知れない我が身なのだから。

現代語訳
〔詞書〕世の中のはかないことを思っていた折に、菊の花を見て詠んだ歌。
秋の菊が美しく咲いている間は、髪に挿しておこう。花より先に散るとも知れない我が身なのだから。
意訳
菊は長寿の花だが、人の命は花より先に尽きるかもしれない。だから咲いている今のうちに菊を挿して楽しもう、と無常を思う。
語釈・文法注
- 匂ふかぎりは
- 美しく咲いている間は。
- かざしてむ
- 挿してしまおう。
- 花よりさきと
- 花より先に(死ぬ)と。
和歌
- 作者
- 紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第五・秋歌下・276番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「世の中のはかなきことを思ひける折に菊の花を見てよめる」(世の中のはかないことを思っていた折に、菊の花を見て詠んだ歌)。
解説
紀貫之の歌。長寿の象徴である菊を前に、かえって命のはかなさを思う。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、49頁(コマ38)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日