古今和歌集 巻第三 夏歌 139番
さつき待つ
五月を待って咲く橘の花の香をかぐと、昔親しかった人の袖の香がする。

現代語訳
五月を待って咲く橘の花の香をかぐと、昔親しかった人の袖の香がする。
意訳
橘の花の香に、かつて親しかった人が衣にたきしめていた香を思い出す。香によって過去がよみがえる。
語釈・文法注
- 花たちばな
- 橘の花。初夏に白い花を咲かせ、強い香を放つ。
- 昔の人
- 昔親しかった人、昔の恋人。
和歌
- 作者
- 読人しらず(よみびとしらず)
作者の名が伝わらない歌。『古今和歌集』の約四割を占め、撰者の時代より古い歌や、民謡・宴席で歌い継がれた歌、身分の低い人や女性の歌などを含む。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第三・夏歌・139番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。
解説
「花橘の香」と「昔の人」を結びつけた最初の歌とされ、のちに橘は懐旧を誘う花として詠まれ続けた。『伊勢物語』第六十段にも見える。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、26頁(コマ26)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日