古今和歌集 巻第三 夏歌 136番
あはれてふ
「ああ、すばらしい」と人が言う言葉を、ほかの花々に分け与えまいとして、春に遅れて、一本だけ咲いているのだろうか。

現代語訳
〔詞書〕四月に咲いている桜を見て詠んだ歌。
「ああ、すばらしい」と人が言う言葉を、ほかの花々に分け与えまいとして、春に遅れて、一本だけ咲いているのだろうか。
意訳
春が過ぎてから咲いた遅桜を見て、人々の賞賛を独り占めしようとしているのか、と機知的に詠む。
語釈・文法注
- 卯月
- 四月。夏の初め。
- あはれてふ
- 「あはれといふ」の縮約。
- やらじとや
- 与えまいとしてか。
和歌
- 作者
- 紀利貞(きのとしさだ) ?–881
紀貫之の一族で、少内記・阿波介などを務めた。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第三・夏歌・136番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「卯月にさける櫻を見てよめる」(四月に咲いている桜を見て詠んだ歌)。
修辞
- 擬人法
- 桜に人のような思惑を見る。
解説
作者の紀利貞は貫之の一族。夏の巻にあえて桜の歌を置く配列が面白い。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、25頁(コマ26)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日