古今和歌集 巻第二 春歌下 133番
ぬれつつぞ
雨に濡れながら、無理をして折ったのですよ。今年のうちに、春はもう何日もないと思うので。

現代語訳
〔詞書〕三月末日、雨が降っていた時に、藤の花を折って人に贈った歌。
雨に濡れながら、無理をして折ったのですよ。今年のうちに、春はもう何日もないと思うので。
意訳
春の最後の日、雨に濡れるのもいとわず藤の花を折って贈る。春の残りわずかな日を惜しむ心を、藤に託した。
語釈・文法注
- しひて
- 無理に。
- 年の内に
- 今年のうちに。
- 幾日もあらじ
- 何日もないだろう。
和歌
- 作者
- 在原業平(ありわらのなりひら) 825–880
平城天皇の皇子阿保親王の子。右近衛権中将などを務め、「在五中将」と呼ばれた。仮名序は「その心餘りて詞たらず」と評する。『伊勢物語』の主人公「昔男」のモデルとされる。六歌仙・三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第二・春歌下・133番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「やよひのつごもりの日雨の降りけるに藤の花を折りて人に遣しける」(三月末日、雨が降っていた時に、藤の花を折って人に贈った歌)。
解説
在原業平の歌で、『伊勢物語』第八十段にも見える。春の最後の日に詠まれた歌として、惜春の名歌とされる。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、24頁(コマ25)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日