古今和歌集 巻第二 春歌下 80番
たれこめて
簾を下ろして閉じこもり、春がどう過ぎていくのかも知らない間に、待っていた桜も色あせてしまった。

現代語訳
〔詞書〕気分が悪く病気で臥せっていた時、風に当たるまいと簾を下ろしこもってばかりいました間に、折った桜が散り際になっていたのを見て詠んだ歌。
簾を下ろして閉じこもり、春がどう過ぎていくのかも知らない間に、待っていた桜も色あせてしまった。
意訳
病で部屋にこもっている間に、春は過ぎ、待ち望んでいた桜も盛りを過ぎた。季節の移ろいに取り残された寂しさを詠む。
語釈・文法注
- たれこめて
- 簾を垂れて閉じこもって。
- 春のゆくへ
- 春の過ぎ去っていく様子。
- うつろひにけり
- 色あせてしまった。
和歌
- 作者
- 藤原因香(ふじわらのよるか) 生没年未詳(九世紀後半)
藤原高藤の娘とも伝える女官で、典侍(ないしのすけ)を務めた。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第二・春歌下・80番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「心地そこなひてわづらひける時に風にあたらじとておろしこめてのみ侍りける間に折れる櫻の散りがたになれりけるを見てよめる」(気分が悪く病気で臥せっていた時、風に当たるまいと簾を下ろしこもってばかりいました間に、折った桜が散り際になっていたのを見て詠んだ歌)。
解説
作者の藤原因香は典侍を務めた女官。病床の身から見た春の終わりが、しみじみと詠まれる。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、14〜15頁(コマ20)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日