古今和歌集 巻第二 春歌下 74番
櫻花
桜の花よ、散るなら散ってしまえ。散らずにいても、昔なじみの人が来て見てくれるわけでもないのに。

現代語訳
〔詞書〕僧正遍昭に詠んで贈った歌。
桜の花よ、散るなら散ってしまえ。散らずにいても、昔なじみの人が来て見てくれるわけでもないのに。
意訳
出家した遍昭が訪ねて来ないことを、桜に託して恨む。散らずに咲いていても見に来る人はいない、と投げやりな言い方に寂しさがこもる。
語釈・文法注
- 散らなむ
- 「なむ」は願望。散ってほしい。
- ふるさと人
- 昔なじみの人。ここでは遍昭。
- 来ても見なくに
- 来て見ることもないのに。
和歌
- 作者
- 惟喬親王(これたかしんのう) 844–897
文徳天皇の第一皇子。母は紀名虎の娘静子(三条町)。皇位を弟(清和天皇)に越され、のち出家して比叡山の麓の小野に隠棲した。在原業平との交流が『伊勢物語』に描かれる。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第二・春歌下・74番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「僧正遍昭によみておくりける」(僧正遍昭に詠んで贈った歌)。
解説
作者の惟喬親王は皇位につけず、のちに出家して小野に隠れ住んだ。遍昭との親しい交わりがうかがえる。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、13頁(コマ20)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日