古今和歌集 巻第一 春歌上 61番
さくらばな
桜の花よ、春がひと月加わった年でさえも、人の心に飽きられることがあろうか、いや飽きられはしない。

現代語訳
〔詞書〕三月に閏月があった年に詠んだ歌。
桜の花よ、春がひと月加わった年でさえも、人の心に飽きられることがあろうか、いや飽きられはしない。
意訳
閏三月で春が例年より長い年でも、桜はなお見飽きることがない。桜の魅力の尽きないことを、暦のめぐりを題材に詠む。
語釈・文法注
- 閏月
- 太陰暦で季節とのずれを調整するために加える月。ここでは三月の後に閏三月があった。
- くははれる
- 加わっている。
- あかれやはせぬ
- 「やは」は反語。飽きられることがあろうか。
和歌
- 作者
- 伊勢(いせ) 872?–938?
伊勢守藤原継蔭の娘。宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の皇子を産んだ。のち敦慶親王との間に娘の中務(歌人)を産んだ。『古今和歌集』に女性歌人として最も多い歌が入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・61番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「やよひに閏月の有りける年よみける」(三月に閏月があった年に詠んだ歌)。
修辞
- 反語
- 「あかれやはせぬ」。
解説
暦の事情をとらえて詠む点は、巻頭の年内立春の歌と同じく古今集らしい理知の歌である。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、11頁(コマ19)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日