古今和歌集 巻第一 春歌上 62番
あだなりと
桜の花は移り気だという評判が立っているけれど、一年にまれにしか来ないあなたのことも、散らずに待っていたのですよ。

現代語訳
〔詞書〕桜の花の盛りに、長く訪れなかった人が来た時に詠んだ歌。
桜の花は移り気だという評判が立っているけれど、一年にまれにしか来ないあなたのことも、散らずに待っていたのですよ。
意訳
桜はすぐ散る移り気な花と言われるが、こうして散らずにあなたの訪れを待っていた。久しく来なかった相手を、桜に託して軽く恨む。
語釈・文法注
- あだなり
- はかない、移り気だ。
- 名にこそたてれ
- 評判が立っているけれど。「こそ…已然形」で逆接。
- としにまれなる人
- 一年にまれにしか来ない人。
和歌
- 作者
- 読人しらず(よみびとしらず)
作者の名が伝わらない歌。『古今和歌集』の約四割を占め、撰者の時代より古い歌や、民謡・宴席で歌い継がれた歌、身分の低い人や女性の歌などを含む。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・62番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「櫻の花のさかりに久しくとはざりける人のきたりける時によみける」(桜の花の盛りに、長く訪れなかった人が来た時に詠んだ歌)。
修辞
- 寓意
- 桜に自分自身を重ねる。
解説
『伊勢物語』第十七段では、次の業平の返歌とともに、久しぶりに訪れた男と女の贈答として語られる。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、11頁(コマ19)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日