古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 59番

櫻花

紀貫之(きのつらゆき)

桜の花が咲いたらしい。山の谷あいから見える白雲は、きっと桜なのだろう。

山の谷間からのぞく白いかたまりを、咲いた桜かと思って眺める。山桜を白雲に見立てた紀貫之の歌の情景。
山の谷間からのぞく白いかたまりを、咲いた桜かと思って眺める。山桜を白雲に見立てた紀貫之の歌の情景。
作者
貫之(紀貫之)
  1. 1歌うた歌うたうた奉たてまつ奉たてまつたてまつれとれとれと仰おほ仰おほおおせられしせられしせられし時とき時ときときによみてたてまつれるによみてたてまつれるによみてたてまつれる詞書
  2. 2櫻花さくらばな櫻花さくらばなさくらばな初句
  3. 3咲さ咲ささきにけらしもきにけらしもきにけらしも二句
  4. 4あしびきのあしびきのあしびきの三句
  5. 5山やま山やまやまのかひよりのかひよりのかいより四句
  6. 6見み見みみゆるしらくもゆるしらくもゆるしらくも結句

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔詞書〕「歌を奉れ」とご命令があった時に詠んで献上した歌。

桜の花が咲いたらしい。山の谷あいから見える白雲は、きっと桜なのだろう。

意訳

山の谷間に白雲のように見えるのは、きっと咲いた桜にちがいない。遠くの山桜を白雲に見立てる。

語釈・文法注

けらしも
「けるらし」の縮約。…たらしい。「も」は詠嘆。
あしびきの
「山」にかかる枕詞。
かひ
山と山の間、谷あい。

和歌

作者
紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・59番
歌体
短歌
状況
詞書「歌奉れと仰せられし時によみてたてまつれる」(「歌を奉れ」とご命令があった時に詠んで献上した歌)。

修辞

見立て
山桜を白雲に見立てる。
枕詞
「あしびきの」。

解説

桜を白雲に見立てる表現は、のちに桜の歌の定型となった。

関連

出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、11頁(コマ19)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日