古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 58番

たれしかも

紀貫之(きのつらゆき)

いったい誰が探し求めて折ってきたのだろう。春霞が立ちこめて隠しているはずの山の桜を。

春霞に隠れる山から届いた桜の枝を、驚きとともに眺める。花を探し当てた誰かを思う紀貫之の情景。
春霞に隠れる山から届いた桜の枝を、驚きとともに眺める。花を探し当てた誰かを思う紀貫之の情景。
作者
貫之(紀貫之)
  1. 1をれるをれるおれる櫻さくら櫻さくらさくらをををよめるよめるよめる詞書
  2. 2たれしかもたれしかもたれしかも初句
  3. 3とめてとめてとめてををおりつるりつるりつる二句
  4. 4春はる春はるはるがすみがすみがすみ三句
  5. 5立た立たたちかくすらむちかくすらむちかくすらむ四句
  6. 6山やま山やまやまののの櫻さくら櫻さくらさくらををを結句

引用の仕方

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現代語訳

〔詞書〕折った桜を詠んだ歌。

いったい誰が探し求めて折ってきたのだろう。春霞が立ちこめて隠しているはずの山の桜を。

意訳

霞に隠れているはずの山の桜を、いったい誰が探しあてて折ってきたのか、と手にした桜を見て驚く。

語釈・文法注

たれしかも
「しか」「も」は強調。いったい誰が。
とめて
「とむ」は探し求める。
たちかくすらむ
(霞が)立ち隠しているだろう。

和歌

作者
紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・58番
歌体
短歌
状況
詞書「をれる櫻をよめる」(折った桜を詠んだ歌)。

解説

霞が桜を隠すという前提を逆手にとった、貫之らしい機知の歌。

関連

出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、10〜11頁(コマ18)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日