古今和歌集 巻第一 春歌上 56番
見わたせば
見渡すと、柳の緑と桜の花の色とを混ぜ合わせて、都こそが春の錦であったことだ。

現代語訳
〔詞書〕花盛りのころに、都を見渡して詠んだ歌。
見渡すと、柳の緑と桜の花の色とを混ぜ合わせて、都こそが春の錦であったことだ。
意訳
高い所から都を見渡すと、柳の緑と桜の薄紅が入り混じって、まるで錦の織物のように美しい。秋の山を錦とする常識をくつがえし、春の都を錦と言った。
語釈・文法注
- こきまぜて
- 混ぜ合わせて。
- 都ぞ…なりける
- 「ぞ…ける」の係り結び。都こそが…だったのだ。
和歌
- 作者
- 素性法師(そせいほうし) 生没年未詳(九世紀後半〜十世紀初め)
僧正遍昭の子。俗名は良岑玄利(よしみねのはるとし)といい、父の命で出家した。雲林院や大和の石上の良因院に住み、宇多天皇・醍醐天皇の歌会や屏風歌に召された。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・56番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「花ざかりに京を見やりてよめる」(花盛りのころに、都を見渡して詠んだ歌)。
修辞
- 見立て
- 都の景色を錦に見立てる。
解説
紅葉の山を錦とするのは漢詩以来の常套であったが、春の都を錦と見たところに新しさがある。素性法師の代表歌。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、10頁(コマ18)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日