古今和歌集 巻第一 春歌上 43番
春ごとに
春が来るたびに、水面に映る梅の花を本物の花と思って、折ることのできない水に袖を濡らしてしまうのだろうか。

現代語訳
〔詞書〕水のほとりに梅の花が咲いていたのを詠んだ歌。
春が来るたびに、水面に映る梅の花を本物の花と思って、折ることのできない水に袖を濡らしてしまうのだろうか。
意訳
川面に映る梅の影があまりに美しいので、本物と見まちがえて手を伸ばし、袖を濡らしてしまうだろう、と水に映る花の美しさを詠む。
語釈・文法注
- ながるる川を花と見て
- 川に映った花の影を花と思って。
- 袖やぬれなむ
- 「な」は強意、「む」は推量。
和歌
- 作者
- 伊勢(いせ) 872?–938?
伊勢守藤原継蔭の娘。宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の皇子を産んだ。のち敦慶親王との間に娘の中務(歌人)を産んだ。『古今和歌集』に女性歌人として最も多い歌が入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・43番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「水のほとりに梅の花の咲けりけるを詠める」(水のほとりに梅の花が咲いていたのを詠んだ歌)。
修辞
- 見立て
- 水に映る花の影を実際の花に見立てる。
解説
水に映る花を詠むのは古今集で好まれた趣向で、次の歌と対になっている。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、8頁(コマ17)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日