古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 41番

春の夜の

凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)

春の夜の闇はわけがわからない。梅の花の色は隠して見えないけれど、香は隠れるだろうか、隠れはしない。

花の色を隠す春の闇にも、梅の香は隠れない。暗がりに枝の気配だけが残る、静かな夜の庭の情景。
花の色を隠す春の闇にも、梅の香は隠れない。暗がりに枝の気配だけが残る、静かな夜の庭の情景。
作者
躬恒(凡河内躬恒)
  1. 1春はる春はるはるののの夜よ夜よよ梅うめ梅うめうめののの花はな花はなはなをををよめるよめるよめる詞書
  2. 2春はる春はるはるののの夜よ夜よよののの初句
  3. 3闇やみ闇やみやみはははあやなしあやなしあやなし二句
  4. 4梅うめ梅うめうめののの花はな花はなはな三句
  5. 5いろこそいろこそいろこそ見み見みみえねえねえね四句
  6. 6香か香かかやはかくるるやはかくるるやわかくるる結句

引用の仕方

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現代語訳

〔詞書〕春の夜に梅の花を詠んだ歌。

春の夜の闇はわけがわからない。梅の花の色は隠して見えないけれど、香は隠れるだろうか、隠れはしない。

意訳

闇が梅の花を隠そうとしても、香までは隠せない。闇の無駄な働きを「あやなし」と責めるように言い、梅の香の強さをたたえる。

語釈・文法注

あやなし
わけがわからない、筋が通らない。
色こそ見えね
「こそ…ね(已然形)」で逆接。色は見えないが。
香やはかくるる
「やは」は反語。

和歌

作者
凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 生没年未詳(九世紀末〜十世紀前半)
『古今和歌集』の撰者の一人。甲斐少目・和泉大掾など地方の下級官人を務めたが、歌才は宇多・醍醐両天皇に重んじられ、屏風歌や歌合で活躍した。貫之と並ぶ歌人とされる。三十六歌仙の一人。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・41番
歌体
短歌
状況
詞書「春の夜梅の花をよめる」(春の夜に梅の花を詠んだ歌)。

修辞

反語
「香やはかくるる」。

解説

凡河内躬恒の代表作の一つ。闇を擬人化して責める機知が冴えている。

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出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、7頁(コマ17)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日