古今和歌集 巻第一 春歌上 31番
春がすみ
春霞が立つのを見捨てて北へ帰っていく雁は、花のない里に住み慣れているのだろうか。

現代語訳
〔詞書〕帰る雁を詠んだ歌。
春霞が立つのを見捨てて北へ帰っていく雁は、花のない里に住み慣れているのだろうか。
意訳
花が咲き始める春に、わざわざ北へ去っていく雁を、花の美しさを知らない里に住み慣れているからだろうかと、いぶかしむ。
語釈・文法注
- 見捨てて
- 顧みずに去る。
- 住みやならへる
- 「や」は疑問、「ならふ」は慣れる。「る」は存続「り」の連体形。
和歌
- 作者
- 伊勢(いせ) 872?–938?
伊勢守藤原継蔭の娘。宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の皇子を産んだ。のち敦慶親王との間に娘の中務(歌人)を産んだ。『古今和歌集』に女性歌人として最も多い歌が入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・31番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「歸る雁をよめる」(帰る雁を詠んだ歌)。
修辞
- 掛詞
- 「たつ」に、霞が「立つ」と雁が「発つ」をかける。
解説
伊勢の代表歌の一つ。春に去る雁を惜しむ「帰雁」の題は、のちの和歌や漢詩でも好まれた。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、6頁(コマ16)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日