古今和歌集 巻第一 春歌上 30番
春くれば
春が来たので雁が北へ帰っていくようだ。白雲の中を行く道のついでに、あの人への伝言を頼もうか。

現代語訳
〔詞書〕雁の声を聞いて、北陸へ下っていった人を思って詠んだ歌。
春が来たので雁が北へ帰っていくようだ。白雲の中を行く道のついでに、あの人への伝言を頼もうか。
意訳
春に北へ帰る雁を見て、越(北陸)に下った知人を思い出し、雁に手紙を託そうかと思う。雁が便りを運ぶという故事をふまえる。
語釈・文法注
- 越
- 北陸地方。
- 帰るなり
- 「なり」は鳴き声から推定する伝聞推定。
- みちゆきぶり
- 道を行くついで。
- ことやつてまし
- 「まし」はためらいの意。「言づてをしようか」。
和歌
- 作者
- 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 生没年未詳(九世紀末〜十世紀前半)
『古今和歌集』の撰者の一人。甲斐少目・和泉大掾など地方の下級官人を務めたが、歌才は宇多・醍醐両天皇に重んじられ、屏風歌や歌合で活躍した。貫之と並ぶ歌人とされる。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・30番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「雁の聲を聞きて越へまかりける人を思ひてよめる」(雁の声を聞いて、北陸へ下っていった人を思って詠んだ歌)。
解説
漢の蘇武が雁の足に手紙を結んだという「雁書」の故事をふまえる。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、6頁(コマ16)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日