古今和歌集 巻第一 春歌上 25番
我がせこが
春雨が降るたびに、野辺の緑は色が濃くなっていくことだ。

現代語訳
〔詞書〕「歌を奉れ」とご命令があった時に詠んで献上した歌。
春雨が降るたびに、野辺の緑は色が濃くなっていくことだ。
意訳
春雨が降るごとに野の草が育ち、緑が深まってゆく。初句・二句は「はる」を導く序の役割で、夫の衣を洗い張りする女性の姿も重なる。
語釈・文法注
- わがせこが衣
- 「わがせこ」は妻が夫を親しんでいう語。衣を「張る」ことから「はる」を導く。
- ふるごとに
- 降るたびに。
和歌
- 作者
- 紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・25番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「歌奉れと仰せられし時詠みてたてまつれる」(「歌を奉れ」とご命令があった時に詠んで献上した歌)。
修辞
- 序詞
- 「わがせこが衣」が「はる」を導く。
- 掛詞
- 「はる」に「張る」と「春」をかける。
解説
序詞と掛詞で、衣を洗い張りする生活の場面と、春雨にけむる野の景色を重ね合わせた技巧の歌。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、5頁(コマ16)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日