古今和歌集 巻第一 春歌上 14番
鶯の
鶯が谷から出てくるときの声がなかったら、春が来たことを誰が知るだろうか。

現代語訳
鶯が谷から出てくるときの声がなかったら、春が来たことを誰が知るだろうか。
意訳
春の到来を最初に知らせるのは、谷を出て里に来る鶯の声である。もし鶯が鳴かなければ、誰も春の訪れに気づかないだろう、と鶯の声の大切さをたたえる。
語釈・文法注
- なくば
- 「なし」の未然形+「ば」で仮定。
- 知らまし
- 「まし」は反実仮想の助動詞。「…なら〜だろうに」。
和歌
- 作者
- 大江千里(おおえのちさと) 生没年未詳(九世紀後半〜十世紀初め)
参議大江音人の子。漢学に通じ、寛平六年(894)に、漢詩の句を題にして和歌を詠んだ『句題和歌(大江千里集)』を宇多天皇に献上した。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・14番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「寛平の御時后の宮の歌合の歌」(寛平の御時、后の宮の歌合の歌)。
修辞
- 反実仮想
- 「…なくば…まし」の形で、鶯のない春を想像する。
解説
『詩経』の「幽谷より出でて喬木に遷る」をふまえ、鶯は谷から里へ出てくると考えられていた。大江千里は漢学者で、漢詩文を和歌に生かすことを得意とした。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、3頁(コマ15)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日