古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 11番

春きぬと

壬生忠岑(みぶのただみね)

春が来たと人は言うけれど、鶯が鳴かないうちは、春ではあるまいと思う。

春が来たと聞きながら、鶯の初音を待つ壬生忠岑。静かな谷へ耳を澄ませ、声によって春を確かめようとする情景。
春が来たと聞きながら、鶯の初音を待つ壬生忠岑。静かな谷へ耳を澄ませ、声によって春を確かめようとする情景。
作者
壬生忠岑
  1. 1春はる春はるはるのののはじめのはじめのはじめの歌うた歌うたうた詞書
  2. 2春はる春はるはるきぬときぬときぬと初句
  3. 3人ひと人ひとひとはははいへどもいへどもいえども二句
  4. 4鶯うぐひす鶯うぐひすうぐいすののの三句
  5. 5鳴な鳴ななかぬかぎりかぬかぎりかぬかぎりははは四句
  6. 6あらじとぞおもふあらじとぞおもふあらじとぞおもう結句

引用の仕方

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現代語訳

〔詞書〕春の初めの歌。

春が来たと人は言うけれど、鶯が鳴かないうちは、春ではあるまいと思う。

意訳

暦の上で立春を過ぎ、人々は春だと言うが、自分は鶯の声を聞くまでは春が来たとは認めない、と言い張る。鶯の初音を待ちこがれる心を、頑固な言い方で表した。

語釈・文法注

あらじとぞ思ふ
「じ」は打消推量。「春ではあるまい」。「ぞ」は強調の係助詞で「思ふ」は連体形で結ぶ。

和歌

作者
壬生忠岑(みぶのただみね) 生没年未詳(九世紀後半〜十世紀前半)
『古今和歌集』の撰者の一人。右衛門府生など下級の武官を務めた。歌論書『和歌体十種(忠岑十体)』の作者とされる。三十六歌仙の一人。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・11番
歌体
短歌
状況
詞書「春のはじめの歌」(春の初めの歌)。

解説

鶯の声によって春を知るという考え方は、和歌の伝統的な季節感である。撰者壬生忠岑の、素直で力強い詠みぶりの歌。

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出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、3頁(コマ15)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日