古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 10番

春やとき

藤原言直(ふじわらのことなお)

春が早く来すぎたのか、花の咲くのが遅いのか、聞いて判断しようと思うのに、その鶯さえ鳴かないでいることだ。

花も鶯の声もまだ訪れない、春初めの庭。春が早いのか、花が遅いのかと、静かな枝先に答えを待つ情景。
花も鶯の声もまだ訪れない、春初めの庭。春が早いのか、花が遅いのかと、静かな枝先に答えを待つ情景。
作者
藤原言直
  1. 1春はる春はるはるのののはじめによめるはじめによめるはじめによめる詞書
  2. 2春はる春はるはるやときやときやとき初句
  3. 3花はな花はなはなやおそきとやおそきとやおそきと二句
  4. 4聞き聞きききわかむきわかむきわかむ三句
  5. 5鶯うぐひす鶯うぐひすうぐいすだにもだにもだにも四句
  6. 6鳴な鳴ななかずもあるかなかずもあるかなかずもあるかな結句

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔詞書〕春の初めに詠んだ歌。

春が早く来すぎたのか、花の咲くのが遅いのか、聞いて判断しようと思うのに、その鶯さえ鳴かないでいることだ。

意訳

暦の上では春になったのに花はまだ咲かない。季節が早いのか花が遅いのか、春を告げる鶯の声で確かめようとしても、その鶯さえ鳴かない。春の到来を待ちかねる心を詠む。

語釈・文法注

春やとき花やおそき
「とし(早し)」「おそし」を対にし、「や」で疑問を重ねる。
聞きわかむ
聞いて区別しよう。
だにも
「さえも」。

和歌

作者
藤原言直(ふじわらのことなお) 生没年未詳
大和権掾などを務めたと伝える。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・10番
歌体
短歌
状況
詞書「春のはじめによめる」(春の初めに詠んだ歌)。

修辞

対句
「春やとき」「花やおそき」。

解説

理屈をたどるような問いかけで春を待つ気持ちを表す。作者の藤原言直は経歴のわからない人物で、古今集にはこの一首だけが入る。

関連

出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、3頁(コマ15)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日