古今和歌集 巻第一 春歌上 9番
かすみたち
霞が立ち、木の芽もふくらむ春に雪が降るので、まだ花の咲かない里にも花が散っていることだ。

現代語訳
〔詞書〕雪が降ったのを詠んだ歌。
霞が立ち、木の芽もふくらむ春に雪が降るので、まだ花の咲かない里にも花が散っていることだ。
意訳
春になって降る雪を、散る花に見立てた歌。霞・木の芽という春の景に雪を取り合わせ、花のない里にまで花びらが舞うような美しさを描く。
語釈・文法注
- このめもはるの
- 「はる」に、木の芽が「張る(ふくらむ)」と季節の「春」をかける。
- 花なき里
- まだ花の咲いていない里。
和歌
- 作者
- 紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・9番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「雪の降りけるをよめる」(雪が降ったのを詠んだ歌)。
修辞
- 掛詞
- 「はる」に「張る」と「春」をかける。
- 見立て
- 降る雪を散る花に見立てる。
解説
掛詞と見立てを重ねる貫之らしい技巧の歌。「花なき里も花ぞ散りける」という逆説的な言い回しに、古今集の理知的な美意識がよく表れている。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、2〜3頁(コマ14)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日