古今和歌集 巻第一 春歌上 8番
春の日の
春の日の光(のような后のお恵み)を受けている私ですが、頭に降りかかる雪のように白髪になってしまったのがつらいことです。

- 1二條后二條后にじょうのきさきののの東宮東宮とうぐうののの御息所御息所みやすんどころときこえけるときこえけるときこえける時時とき正月正月むつき三日三日みか御前御前おまえににに召召めしてしてして仰言仰言おおせごとあるあるある間間まににに日日ひははは照照てりながらりながらりながら雪雪ゆきののの頭頭かしらににに降降ふりかかりけるりかかりけるりかかりけるをををよませよませよませ給給たまひけるひけるいける詞書
- 2春春はるののの日日ひののの初句
- 3光光ひかりにあたるにあたるにあたる二句
- 4われなれどわれなれどわれなれど三句
- 5かしらのかしらのかしらの雪雪ゆきととと四句
- 6なるぞわびしきなるぞわびしきなるぞわびしき結句
現代語訳
〔詞書〕二条の后がまだ春宮の御息所と申し上げた時、正月三日にお召しになってお言葉を賜る間に、日は照っているのに雪が頭に降りかかったのを、詠ませなさった歌。
春の日の光(のような后のお恵み)を受けている私ですが、頭に降りかかる雪のように白髪になってしまったのがつらいことです。
意訳
后の御前に召されて言葉をかけられる晴れがましさを「春の日の光にあたる」と言い、降りかかった雪を自分の白髪に見立てて老いを嘆く。お恵みへの感謝と、老いの身の謙遜を一首にこめている。
語釈・文法注
- 東宮の御息所
- 皇太子(のちの陽成天皇)の母の意。二条后高子のこと。
- 春の日の光
- 后(または皇太子)のお恵みのたとえ。
- かしらの雪
- 白髪のたとえ。
和歌
- 作者
- 文屋康秀(ふんやのやすひで) 生没年未詳(九世紀後半)
縫殿助・三河掾などを務めた下級官人。小野小町を三河への旅に誘ったという話が伝わる。仮名序は「詞たくみにてそのさま身におはず」と評する。六歌仙の一人。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・8番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「二條后の東宮の御息所ときこえける時正月三日御前に召して仰言ある間に日は照りながら雪の頭に降りかかりけるをよませ給ひける」(二条の后がまだ春宮の御息所と申し上げた時、正月三日にお召しになってお言葉を賜る間に、日は照っているのに雪が頭に降りかかったのを、詠ませなさった歌)。
修辞
- 掛詞・見立て
- 「かしらの雪」は頭に降った雪と白髪の両意。
- 寓意
- 「春の日の光」に后の恩寵を重ねる。
解説
晴れの場で即座に詠まれた歌で、文屋康秀の当意即妙ぶりがわかる。六歌仙の一人である康秀の歌は古今集に五首ある。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、2頁(コマ14)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日