古典ライブラリー

古今和歌集 巻第一 春歌上 2番

袖ひぢて

紀貫之(きのつらゆき)

夏の日に袖を濡らして手にすくった水が、冬の間に凍っていたのを、立春の今日の風が解かしているのだろうか。

立春の風が、冬に凍った水を解かし始める水辺。夏に袖を濡らしてすくった水を思い返す、紀貫之の歌をもとにした情景。
立春の風が、冬に凍った水を解かし始める水辺。夏に袖を濡らしてすくった水を思い返す、紀貫之の歌をもとにした情景。
作者
紀貫之
  1. 1春はる春はるはる立た立たたちけるちけるちける日ひ日ひひよめるよめるよめる詞書
  2. 2袖そで袖そでそでひぢてひぢてひじて初句
  3. 3むすびしむすびしむすびし水みづ水みづみずののの二句
  4. 4こほれるこほれるこおれるををを三句
  5. 5春はる春はるはるたつけふのたつけふのたつきょうの四句
  6. 6風かぜ風かぜかぜやとくらむやとくらむやとくらむ結句

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔詞書〕立春の日に詠んだ歌。

夏の日に袖を濡らして手にすくった水が、冬の間に凍っていたのを、立春の今日の風が解かしているのだろうか。

意訳

夏に袖を濡らしながら掬った清水が秋を経て冬に凍り、春の訪れとともにその氷が解ける。一首の中に夏・秋・冬・春の一年の巡りを詠み込み、立春の日の暖かな風を想像している。

語釈・文法注

ひぢて
「ひつ」は濡れる・ひたる意。
むすびし
「むすぶ」は手で水をすくうこと。「し」は過去の助動詞「き」の連体形。
とくらむ
「らむ」は目の前にない事柄を推量する現在推量の助動詞。

和歌

作者
紀貫之(きのつらゆき) 872?–945?
『古今和歌集』の撰者の中心で、仮名序を書いた。御書所預などを経て土佐守となり、任期を終えて帰京する旅を『土佐日記』に書いた。理知的で技巧に富む歌風で、『古今和歌集』に最も多い百首あまりが入る。三十六歌仙の一人。
出典
『古今和歌集』巻第一・春歌上・2番
歌体
短歌
状況
詞書「春立ちける日よめる」(立春の日に詠んだ歌)。

修辞

縁語
「むすぶ」と「とく(解く)」が縁語。

解説

『礼記』月令の「東風凍を解く」をふまえたとされる。季節の移り変わりを一首にまとめる構成力に、撰者紀貫之の技巧がよく表れている。

関連

出典

底本
有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、1頁(コマ14)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
更新日