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源氏物語 第53帖 手習(34)

兄弟と思え

登場人物:中将・妹の尼君・浮舟

中将は、これほどの様子をした人を失って、尋ねない人があっただろうか、またあの人やこの人の娘が行方も知れず隠れてしまったとか、あるいは物を恨んで世を背いてしまったなどということは、自然と隠れないはずなのにと、不思議に繰り返し思う。尼であっても、このような様子をしている人は嫌だとも思うまいなどと、かえって見どころがまさって心苦しいはずなのを、忍んだ様子で、やはり語らって自分のものにしようと思うので、真剣に妹尼と語らう。「世の常の姿では遠慮なさることもあったでしょうが、このような姿におなりになったのは、かえって気安く申し上げられそうです。そのようにお教え申し上げてください。過ぎた昔が忘れがたくてこのように参りますのに、またひとつ志を添えて」などとおっしゃる。妹尼は「たいそう行く末が心細く気がかりな有様でございますようなので、真心からお忘れにならずお訪ねくださるのは、たいそう嬉しく存じます。私がいなくなった後のことが、哀れに思われることでしょう」と言ってお泣きになるので、中将は、この尼君とも縁のない人ではないのだろう、誰なのだろうと納得しがたい。「行く末のご後見は、命も知りがたく頼りない身ですが、そう申し上げ始めましたなら、決して変わりますまい。尋ね申し上げなさるはずの人は本当にいらっしゃらないのですか。そのようなことがはっきりしないので、遠慮すべきことではありませんが、やはり隔てのある心地がしましょう」とおっしゃると、妹尼は「人に知られるような様子で世に過ごしていらっしゃったなら、もしかすると尋ね出す人もございましょう。今はこのような仏道の方に思い定めた有様で、心の向きもそのようにばかり見えますので」などと語らいなさる。中将は浮舟の方にも消息なさった。「大方の世を背いてしまった君だけれど、厭うことにかこつけて、私の身が厭われるのはつらいことだ」。心を込めて深く申し上げなさることなどを伝える。「兄弟とお思いになってください。はかない世の物語なども申し上げて慰めましょう」などと言い続ける。

  1. 1かばかりかばかりかばかりのののさまさまさましししたるたるたる人ひと人ひとひとををを失うしな失うしなうしなひひいててて尋たづ尋たづたずねねねぬぬぬ人ひと人ひとひとありありありけむけむけんややや、、、又また又またまたそのそのその人ひと人ひとひとかのかのかの人ひと人ひとひとのののむすめむすめむすめなむなむなん行ゆく行ゆくゆく方へ方へえもももしらしらしらずずずかくれかくれかくれにににたるたるたる、、、もしはもしはもしは物もの物ものものゑんじゑんじえんじしししててて世よ世よよをををそむきそむきそむきにににけるけるけるなどなどなど、、、おのづからおのづからおのずからかくれかくれかくれなかるなかるなかるべきべきべきをををなどなどなど怪あや怪あやあやしくしくしく返かへ返かへかえすすすがへすがへすがえす思おも思おもおもふふう、、、尼あま尼あまあまなりなりなりともともともかゝるかゝるかかるさまさまさまえええたらたらたらむむん人ひと人ひとひとはははうたてうたてうたてももも覺おぼ覺おぼおぼえええじじじなどなどなど、、、なかなかなかなかなかなか見み見みみ所どころ所どころどころまさりまさりまさりててて心こゝろ心こゝろこころ苦ぐる苦ぐるぐるしかるしかるしかるべきべきべきをををしのびしのびしのびたるたるたるさまさまさまににに、、、猶なほ猶なほなおかたらひかたらひかたらいとりとりとりてててむむんととと思おも思おもおもへへえばばば、、、まめやかまめやかまめやかにににかたらふかたらふかたらう。。。「「「世よ世よよののの常つね常つねつねのののさまさまさまにににはははおぼしおぼしおぼしはゞかるはゞかるはばかる事こと事ことこともももありありありけむけむけんををを、、、かゝるかゝるかかるさまさまさまににになりなりなり給たま給たまたまひひいにににたるたるたるなむなむなん心こころ心こころこころ安やす安やすやすくくく聞きこ聞きこきこえええつつつべくべくべくなむなむなん侍はべ侍はべはべるるる。。。さやうさやうさようににに敎をし敎をしおしへへへ聞きこ聞きこきこえええたまへたまへたまえ來こ來ここししし方かた方かたかた忘わす忘わすわすれれれがたくがたくがたくてててかやうかやうかようににに參まゐ參まゐまいりりりくるくるくるににに又また又またまたひとつひとつひとつ志こゝろざし志こゝろざしこころざしをををそへそへそえてててこそこそこそ」」」などなどなどのたまふのたまふのたまう。。。「「「いといといと行ゆ行ゆゆくくく末すゑ末すゑすえ心こころ心こころこころぼそくぼそくぼそくうしろめたきうしろめたきうしろめたき有あり有ありあり樣さま樣さまさまににに侍はべ侍はべはべるるるめるめるめるにににまめやかまめやかまめやかなるなるなるさまさまさまにににおぼしおぼしおぼし忘わす忘わすわすれれれずずず問と問ととはははせせせたまはたまはたまわむむん、、、いといといとうれしくうれしくうれしくこそこそこそ思おも思おもおもひひいたまへたまへたまえおがおがおがめめめ。。。侍はべ侍はべはべらららざらざらざらむむん後のち後のちのちなむなむなん、、、哀あはれ哀あはれあわれににに思おも思おもおもひひい給たま給たまたまへへえらるらるらるべきべきべき」」」とてとてとてなきなきなき給たま給たまたまふふうににに、、、このこのこの尼あま尼あまあま君ぎみ君ぎみぎみもももはなれはなれはなれぬぬぬ人ひと人ひとひとなるなるなるべしべしべし。。。誰たれ誰たれたれならならならむむんととと心こゝろ心こゝろこころ得え得ええがたしがたしがたし。。。
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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

これほどの様子をした人を失って、尋ねない人があっただろうか、またあの人やこの人の娘が行方も知れず隠れてしまったとか、あるいは物を恨んで世を背いてしまったなどということは、自然と隠れないはずなのにと、不思議に繰り返し思う。尼であっても、このような様子をしている人は嫌だとも思うまいなどと、かえって見どころがまさって心苦しいはずなのを、忍んだ様子で、やはり語らって自分のものにしようと思うので、真剣に語らう。「世の常の姿では遠慮なさることもあったでしょうが、このような姿におなりになったのは、かえって気安く申し上げられそうです。そのようにお教え申し上げてください。過ぎた昔が忘れがたくてこのように参りますのに、またひとつ志を添えて」などとおっしゃる。「たいそう行く末が心細く気がかりな有様でございますようなので、真心からお忘れにならずお訪ねくださるのは、たいそう嬉しく存じます。私がいなくなった後のことが、哀れに思われることでしょう」と言ってお泣きになるので、この尼君とも縁のない人ではないのだろう。誰なのだろうと納得しがたい。

「行く末のご後見は、命も知りがたく頼りない身ですが、そう申し上げ始めましたなら、決して変わりますまい。尋ね申し上げなさるはずの人は本当にいらっしゃらないのですか。そのようなことがはっきりしないので、遠慮すべきことではありませんが、やはり隔てのある心地がしましょう」とおっしゃると、「人に知られるような様子で世に過ごしていらっしゃったなら、もしかすると尋ね出す人もございましょう。今はこのような方に思い定めた有様で、心の向きもそのようにばかり見えますので」などと語らいなさる。こちらにも消息なさった。「大方の世を背いてしまった君だけれど、厭うことにかこつけて、私の身が厭われるのはつらいことだ」。心を込めて深く申し上げなさることなどを伝える。「兄弟とお思いになってください。はかない世の物語なども申し上げて慰めましょう」などと言い続ける。

意訳

中将は、これほどの人がいなくなれば必ず噂になるはずなのにと不思議に思う。尼であっても浮舟を慕う中将は、妹尼に、出家した今はかえって気安く話せるとして、浮舟の後見を申し出る。妹尼は、自分の死後の浮舟を案じて泣き、喜ぶ。中将は、浮舟を尋ねる人は本当にいないのかと問うが、妹尼は、今は仏道に心を定めていると答える。中将は浮舟に、世を背いたことにかこつけて自分まで厭われるのはつらいと歌を贈り、兄弟と思ってほしいと伝える。

語釈・文法注

文法

「物ゑんじ」(もしは物ゑんじして世をそむきにける)
物怨じ。物事を恨むこと。
「いとふによせて」(いとふによせて身こそつらけれ)
世を厭うことにかこつけて、自分も厭われる。
「はらから」(はらからとおぼしなせ)
兄弟姉妹。

解説

中将は、出家した浮舟にも変わらぬ思いを抱く。兄弟として慰めたいと言いながら、なお浮舟を得たいという下心を隠しきれない。

妹尼は、自分の死後の浮舟を案じ、中将の後見を頼みにする。浮舟の身の上を心配する妹尼の情愛は深い。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1226–1227頁(コマ324)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日