源氏物語 第52帖 蜻蛉(26)
姉妹の文通
薫は、匂宮が女一の宮に似ていらっしゃると見るにつけても、まず恋しいのを、たいそうあってはならないことと静めるのが、何もなかった時よりは苦しい。宮は絵をたいそう多く持たせて参っていた女房を使って、あちら(女一の宮)に差し上げさせなさって、ご自分もお移りになった。大将も近くに参り寄りなさって、御八講の尊かったことや、昔の六条院のことを少し申し上げながら、残った絵をご覧になるついでに、薫は中宮に「こちらにお住まいの皇女(女二の宮)が、宮中を離れて沈んでいらっしゃるのがお気の毒に拝見されます。姫宮(女一の宮)の御方からお便りもございませんのを、このように臣下の身分に定まりなさったので、お見捨てになったように思って、心が晴れない様子ばかりでございますので、このような絵などを時々お贈りくださいませ。私が持ち帰りましても、また見る甲斐もございますまい」と申し上げなさると、中宮は「妙なことを。どうしてお見捨てになりましょう。内裏では近かったので時々お便りを交わしていらしたようですが、別々の所におなりになった時に途絶え始めたのでしょう。今に勧めましょう。あちらからもどうしてなさらないのでしょう」とおっしゃる。薫は「あちらからはどうして。もともと人数にお入れくださらなかったとしても、このように親しくお仕えすべき縁に寄せて、お心にかけてくださるのこそうれしいことでございましょう。ましてそのようにお便りを交わしていらしたのを、今お見捨てになるのはつらいことでございます」と申し上げさせなさるのを、中宮は好色めいた様子があるとはお思いにならなかった。薫は退出して、先日の思いを寄せる人(小宰相)に会おう、あの渡殿も慰めに見ようとお思いになって、御前を歩いて西の方においでになるのを、御簾の内の人々は特に心づかいする。本当にたいそう様子よくこの上ない振る舞いで、渡殿の方は左大臣家の公達などがいて話をする気配がするので、妻戸の前にお座りになって、「おおよそには参りながら、この御方にお目にかかることが難しゅうございますので、たいそう思いがけず年寄りじみてしまった心地がいたしますが、これからはと思い立ちまして。
- 1覺覺おぼえええ給給たまへへえりりりととと見見みるるるにににもももまづまづまず戀戀こいしきしきしきををを、、、いといといとあるあるあるまじきまじきまじきことことことゝゝとしづむるしづむるしずむるぞぞぞたゞたゞただなりなりなりしししよりよりよりははは苦苦くるしきしきしき。。。繪繪えをををいといといと多多おおくくく持持もたたたせせせててて參參まいりりり給給たまへへえりりりけるけるける女房女房にょうぼうしししてててあなたあなたあなたににに參參まいらららせせせ給給たまひひいてててわれわれわれももも渡渡わたらららせせせ給給たまひひいぬぬぬ。。。大大たい將將しょうももも近近ちかくくく參參まいりりりよりよりより給給たまひひいててて御御おん八八はつ講講こうのののたふとくたふとくとうとく侍侍はべりりりしししことことこといにしへいにしへいにしえののの御御おん事事こと少少すこししし聞聞きこえええつゝつゝつつ殘殘のこりりりたるたるたる繪繪え見見み給給たまふふうついでついでついでににに「「「このこのこの里里さとにににものものものししし給給たまふふう御御おん子子こののの雲雲くもののの上上うえはなれはなれはなれててて思思おもひひいくしくしくし給給たまへへえるるるこそこそこそいとほしういとほしういとおしゅう見見み給給たまふれふれうれ。。。姫姫ひめ宮宮みやののの御御おん方方かたよりよりより御御おんせうそこせうそこしょうそこももも侍侍はべらららぬぬぬををを、、、かくかくかく品品しな定定さだまりりり給給たまへへえるるるにににおぼしおぼしおぼし捨捨すてててさせさせさせ給給たまへへえるるるやうやうようににに思思おもひひいててて心心こころゆかゆかゆかぬぬぬ氣色氣色けしきのみのみのみ侍侍はべるるるをををかやうかやうかようのののものものもの時々時々ときどきものものものせせせさせさせさせ給給たまははわなむなむなん。。。なにがしなにがしなにがしがががおろしおろしおろしてててもてもてもてまからまからまからむむん、、、はたはたはた見見みるるるかひかひかいももも侍侍はべらららじじじかしかしかし」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえばばば「「「怪怪あやしくしくしくなどなどなどてててかかか捨捨すててて聞聞きこえええ給給たまははわむむん。。。內內うちにてにてにてははは近近ちかかりかりかりしししにににつきつきつきててて時々時々ときどきももも聞聞きこえええかよひかよひかよい給給たまふふうめりめりめりしししををを、、、所所ところ々々どころににになりなりなり給給たまひひいししし折折おりにににとだえとだえとだえそめそめそめ給給たまへへえるるるにににこそこそこそあらあらあらめめめ。。。今今いまそゝのかしそゝのかしそそのかし聞聞きこえええむむん。。。それそれそれよりよりよりもももなどなどなどかかかははは」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 2「「「かれかれかれよりよりよりはははいかでいかでいかでかかかははは。。。もともともとよりよりより數數かずまへまへまえさせさせさせ給給たまははわざらざらざらむむんをををもももかくかくかくしたしくしたしくしたしくしししててて侍侍さぶらふふうべきべきべきゆかりゆかりゆかりににによせよせよせててておぼしおぼしおぼし召召めしししかずかずかずまへまへまえさせさせさせ給給たまははわむむんをををこそこそこそ嬉嬉うれしくしくしくははは侍侍はべるるるべけれべけれべけれ。。。ましてましてましてさささももも聞聞きこえええなれなれなれ給給たまひひいにににけむけむけんををを今今いま捨捨すてててさせさせさせ給給たまははわむむんはははからきからきからき事事ことににに侍侍はべりりり」」」ととと啓啓けいせせせさせさせさせ給給たまふふうをををすきばみすきばみすきばみたるたるたる氣色氣色けしきあるあるあるかかかとととはははおぼしおぼしおぼしかけかけかけざりざりざりけりけりけり。。。立立たちちちいでいでいでゝゝて一一ひと夜夜よののの志志こころざしののの人人ひとにににあはあはあわむむん、、、ありありありししし渡渡わた殿殿どのもももなぐさめなぐさめなぐさめににに見見みむむんかしかしかしとととおぼしおぼしおぼしててて御御お前前まえをををあゆみあゆみあゆみ渡渡わたりりりててて西西にしざまざまざまにににおはするおはするおわするををを、、、御御み簾簾すのののうちうちうちののの人人ひとははは心心こころことことことににに用用よう意意いすすす。。。げにげにげにいといといとさまさまさまよくよくよく限限かぎりなきなきなきもてなしもてなしもてなしにてにてにて渡渡わた殿殿どのののの方方かたははは左左ひだりのののおほいおほいおおい殿殿とのののの君君きん達達だちなどなどなど居居いててて物物ものいふいふいうけはひけはひけはいすれすれすればばば、、、妻妻つま戶戶どののの前前まえににに居居い給給たまひひいててて「「「大大おお方方かたにににはははまゐりまゐりまいりながらながらながらこのこのこの御御おん方方かたのののげざんげざんげざんににに入入いるるる事事ことのののかたくかたくかたく侍侍はべれれればばば、、、いといといとおぼえおぼえおぼえなくなくなくおきなおきなおきなびびびはてはてはてにににたるたるたる心地心地ここちしししはべるはべるはべるををを、、、今今いまよりよりよりはははととと思思おもひひいおこしおこしおこし侍侍はべりりりてててなむなむなん。。。
現代語訳
似ていらっしゃると見るにつけても、まず恋しいのを、たいそうあってはならないことと静めるのが、何もなかった時よりは苦しい。絵をたいそう多く持たせて参っていた女房を使って、あちらに差し上げさせなさって、ご自分もお移りになった。大将も近くに参り寄りなさって、御八講の尊かったことや、昔のことを少し申し上げながら、残った絵をご覧になるついでに、「こちらにお住まいの皇女が、宮中を離れて沈んでいらっしゃるのがお気の毒に拝見されます。姫宮の御方からお便りもございませんのを、このように身分が定まりなさったので、お見捨てになったように思って、心が晴れない様子ばかりでございますので、このような物を時々お贈りくださいませ。私が持ち帰りましても、また見る甲斐もございますまい」と申し上げなさると、「妙なことを。どうしてお見捨てになりましょう。内裏では近かったので時々お便りを交わしていらしたようですが、別々の所におなりになった時に途絶え始めたのでしょう。今に勧めましょう。あちらからもどうしてなさらないのでしょう」とおっしゃる。
「あちらからはどうして。もともと人数にお入れくださらなかったとしても、このように親しくお仕えすべき縁に寄せて、お心にかけてくださるのこそうれしいことでございましょう。ましてそのようにお便りを交わしていらしたのを、今お見捨てになるのはつらいことでございます」と申し上げさせなさるのを、好色めいた様子があるとはお思いにならなかった。退出して、先日の思いを寄せる人に会おう、あの渡殿も慰めに見ようとお思いになって、御前を歩いて西の方においでになるのを、御簾の内の人々は特に心づかいする。本当にたいそう様子よくこの上ない振る舞いで、渡殿の方は左大臣家の公達などがいて話をする気配がするので、妻戸の前にお座りになって、「おおよそには参りながら、この御方にお目にかかることが難しゅうございますので、たいそう思いがけず年寄りじみてしまった心地がいたしますが、これからはと思い立ちまして。
意訳
薫は匂宮に女一の宮の面影を見て恋しく思い、その思いを抑えるのに苦しむ。中宮の御前で絵を見ながら、薫は女二の宮が女一の宮から便りがないのを寂しがっていると言い、文通を勧めてほしいと頼む。中宮は薫の下心に気づかない。退出した薫は、小宰相に会い、女一の宮を見た渡殿を慰めに見ようと西の方へ行き、妻戸の前に座って女房たちに話しかける。
語釈・文法注
文法
- 「雲の上はなれて」(この里にものし給ふ御子の雲の上はなれて)
- 宮中を離れて。女二の宮が臣下の薫に降嫁したこと。
- 「げざん」(この御方のげざんに入る事のかたく侍れば)
- 見参。お目にかかること。
- 「おきなびはてにたる」(いとおぼえなくおきなびはてにたる心地しはべるを)
- 年寄りじみてしまった。
解説
薫は女二の宮を口実に、女一の宮との接点を作ろうとする。中宮が薫の下心に気づかないのは、薫の誠実な人柄への信頼ゆえである。その信頼を利用する薫の姿には、ある種の屈折が見える。
薫は女一の宮を見た渡殿を「なぐさめに見む」と訪ねる。満たされない思いを抱えてさまよう薫の姿は、浮舟を失った後の空虚さを映している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1180–1181頁(コマ301)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日