源氏物語 第52帖 蜻蛉(7)
薫の後悔
そうしていっそうあちら(宇治)を気がかりにお思いになったが、はっきりとこうだと言う人はいなかったので、このようなひどいことにも、まず殿のお使いがないのを、人目にもつらいと思っていたところに、御荘の人が参ってこれこれと申し上げさせたので、薫は呆れた心地がなさって、お使いがその翌日まだ早朝に参った。「ひどいことは聞くとすぐに自分で行くべきだが、このように母宮がご病気でいらっしゃるので、慎んでこのような所に日を限って籠もっているので。昨夜のことは、どうしてこちらに知らせて、日を延ばしてでもそのようなことはするものなのに、たいそう軽々しい様子で急いでなさったのか。どうあっても同じ言いようのないことだが、最期のことにまで山賤の謗りを負うのは、こちらのためにもつらい」などと、あの親しい大蔵大夫を使いにしておっしゃった。お使いが来たことにつけても、いっそうひどく、申し上げようもないことどもなので、ただ涙に溺れているばかりを口実にして、はっきりとも答えないままになった。殿は、やはりたいそうあっけなくひどいとお聞きになるにつけても、情けない所だな、鬼などが住んでいるのだろうか、どうして今までそのような所に住まわせておいたのだろう、思いがけない筋の紛れがあったようなのも、このように放っておいたので、気楽に人も言い寄りなさったのだろうと思うにつけても、ご自分の怠けた世慣れない心ばかりが悔やまれて、お胸がひどく痛く思われなさる。ご病気の方のあたりで、このようなことにお思い乱れになるのもいやなので、京にお帰りになった。女二の宮の御方にもおいでにならず、「仰々しいほどでもございませんが、不吉なことを近くで聞きましたので、心が乱れております間も忌まわしくて」などと申し上げなさって、尽きることなくはかなくつらい世をお嘆きになる。生きていた時の様子や容貌、たいそう愛嬌があって美しかった気配などがひどく恋しく悲しいので、生きていた時はどうしてこれほど思い入れず、のんびりと過ごしたのだろう。
- 1さてさてさていとゞいとゞいとどかしこかしこかしこはははおぼつかなうおぼつかなうおぼつかのうおぼしおぼしおぼしけれけれけれどどど、、、はかばかしうはかばかしうはかばかしゅうさささなむなむなんととといふいふいう人人ひとはははなかりなかりなかりけれけれければばば、、、かゝるかゝるかかるいみじきいみじきいみじき事事ことにににもももまづまづまず御御おん使使つかいのののなきなきなきををを人人ひとめめめももも心憂心憂うしししととと思思おもふふうににに、、、みみみさうさうそうののの人人ひとなむなむなん參參まいりりりてててしかしかしかしかしかしかととと申申もうさささせせせけれけれければばば、、、あさましきあさましきあさましき心地心地ここちししし給給たまひひいててて御御おん使使つかいそのそのそのまたまたまたののの日日ひまだまだまだつとめてつとめてつとめて參參まいりりりたりたりたり。。。「「「いみじきいみじきいみじき事事ことははは聞聞きくくくまゝまゝままにににみづからみづからみずから物物ものすすすべきべきべきにににかくかくかく惱惱なやみみみ給給たまふふうことことことににによりよりよりつゝしみつゝしみつつしみてててかゝるかゝるかかる所所ところににに日日ひををを限限かぎりりりててて籠籠こもりりりたれたれたればばばなむなむなん。。。よべよべよべのののことことことはははなどなどなどかかかこゝこゝここにににせうそこせうそこしょうそこしししててて日日ひををを延延のべべべてててもももさるさるさる事事ことはははするするするものものものををを、、、いといといと輕輕かろらからからかなるなるなるさまさまさまにてにてにて急急いそぎぎぎせせせられられられにににけるけるける。。。とてもとてもとてもかくかくかくてててももも同同おなじじじいふかひなさいふかひなさいうかいなさなれなれなれどどど、、、とぢめとぢめとじめのののことことことをををしもしもしもやまやまやまがつがつがつのののそしりそしりそしりをををさへさへさへ負負おふふうなむなむなん、、、こゝこゝここのののためためためもももからきからきからき」」」などなどなどかのかのかのむつましきむつましきむつましき大大おお藏藏くらののの大大たい夫夫ふしししてててのたまへのたまへのたまえりりり。。。御御おん使使つかいののの來來きたるたるたるにににつけつけつけてててもももいとゞいとゞいとどいみじきいみじきいみじきににに聞聞きこえええむむん方方かたなきなきなき事事ことどもどもどもなれなれなればばば唯唯ただ淚淚なみだにににおぼゝれおぼゝれおぼほれたるたるたるばかりばかりばかりをををかごとかごとかごとにてにてにてはかばかしうはかばかしうはかばかしゅうもももいらへいらへいらえずずずなりなりなりぬぬぬ。。。
- 2殿殿とのははは猶猶なおいといといとあへなくあへなくあえなくいみじいみじいみじととと聞聞きききき給給たまふふうにににももも、、、心心こころうううかりかりかりけるけるける所所ところかなかなかな、、、鬼鬼おになどなどなどややや住住すむむむらむらむらん、、、などなどなどててて今今いままでまでまでさるさるさる所所ところにににすゑすゑすえたりたりたりつつつらむらむらん、、、思思おもははわずずずなるなるなるすぢすぢすじのののまぎれまぎれまぎれあるあるあるやうやうようなりなりなりしししもももかくかくかく放放はなちちち置置おきききたるたるたるににに心心こころやすくやすくやすくててて人人ひともももいひいひいいをかしをかしおかし給給たまふふうなりなりなりけむけむけんかしかしかしととと思思おもふふうにににももも、、、我我わがががたゆくたゆくたゆく世世よづかづかずかぬぬぬ心心こころのみのみのみくやしくくやしくくやしく御御おん胸胸むねいたくいたくいたく覺覺おぼえええ給給たまふふう。。。なやまなやまなやませせせ給給たまふふうあたりあたりあたりにににかゝるかゝるかかる事事ことおぼしおぼしおぼし亂亂みだるゝるゝるるもももうたてうたてうたてあれあれあればばば京京きょうにににおはしおはしおわしぬぬぬ。。。宮宮みやののの御御おん方方かたにににももも渡渡わたりりり給給たまははわずずず「「「ことごとしきことごとしきことごとしき程程ほどにににももも侍侍はべらららねねねどどどゆゝしきゆゝしきゆゆしき事事ことををを近近ちこううう聞聞きききき侍侍はべれれればばば、、、心心こころののの亂亂みだれれれ侍侍はべるるるほどほどほどもももいまいましういまいましういまいましゅうててて」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまひひいててて盡盡つくせせせずずずはかなくはかなくはかなくいみじきいみじきいみじき世世よををを歎歎なげききき給給たまふふう。。。ありありありしししさまさまさまかたちかたちかたちいといといと愛愛あい敬敬ぎょうづきづきずきをかしかりをかしかりおかしかりしししけはひけはひけはいなどなどなどのののいみじくいみじくいみじく戀戀こいしくしくしく悲悲かなしけれしけれしければばば、、、うつゝうつゝうつつののの世世よにににはははなどなどなどかくかくかくしもしもしも思思おもひひい入入いれれれずずずのどかのどかのどかにてにてにて過過すぐしぐしぐしけむけむけん。。。
現代語訳
そうしていっそうあちらを気がかりにお思いになったが、はっきりとこうだと言う人はいなかったので、このようなひどいことにも、まずお使いがないのを人目にもつらいと思っていたところに、御荘の人が参ってこれこれと申し上げさせたので、呆れた心地がなさって、お使いがその翌日まだ早朝に参った。「ひどいことは聞くとすぐに自分で行くべきだが、このようにご病気でいらっしゃるので、慎んでこのような所に日を限って籠もっているので。昨夜のことは、どうしてこちらに知らせて、日を延ばしてでもそのようなことはするものなのに、たいそう軽々しい様子で急いでなさったのか。どうあっても同じ言いようのないことだが、最期のことにまで山賤の謗りを負うのは、こちらのためにもつらい」などと、あの親しい大蔵大夫を使いにしておっしゃった。お使いが来たことにつけても、いっそうひどく、申し上げようもないことどもなので、ただ涙に溺れているばかりを口実にして、はっきりとも答えないままになった。
殿は、やはりたいそうあっけなくひどいとお聞きになるにつけても、情けない所だな、鬼などが住んでいるのだろうか、どうして今までそのような所に住まわせておいたのだろう、思いがけない筋の紛れがあったようなのも、このように放っておいたので、気楽に人も言い寄りなさったのだろうと思うにつけても、ご自分の怠けた世慣れない心ばかりが悔やまれて、お胸がひどく痛く思われなさる。ご病気の方のあたりで、このようなことにお思い乱れになるのもいやなので、京にお帰りになった。宮の御方にもおいでにならず、「仰々しいほどでもございませんが、不吉なことを近くで聞きましたので、心が乱れております間も忌まわしくて」などと申し上げなさって、尽きることなくはかなくつらい世をお嘆きになる。生きていた時の様子や容貌、たいそう愛嬌があって美しかった気配などがひどく恋しく悲しいので、生きていた時はどうしてこれほど思い入れず、のんびりと過ごしたのだろう。
意訳
石山に籠もっていた薫は、荘園の者から浮舟の死を聞いて驚き、大蔵大夫を使いに出して、なぜ知らせずに急いで葬ったのかと責める。右近たちは泣くばかりで答えない。薫は宇治を鬼の住む所と思い、浮舟を放っておいたから匂宮に言い寄られたのだと、自分ののんびりした性格を悔やむ。京に戻った薫は、浮舟の愛らしさを思い出して恋しく、生前になぜもっと大切にしなかったのかと悔やむ。
語釈・文法注
文法
- 「とぢめ」(とぢめのことをしもやまがつのそしりをさへ負ふなむ)
- 閉ぢ目。最期、終わり。
- 「かごと」(唯淚におぼゝれたるばかりをかごとにて)
- 口実、言い訳。
- 「たゆく」(我がたゆく世づかぬ心のみくやしく)
- 怠く。怠けた、のんびりした。
解説
薫は浮舟の死を知って初めて、自分ののんびりした性格を悔やむ。大君の時と同じく、失って初めてその存在の大きさに気づく薫の姿が繰り返される。
薫は、匂宮との関係も浮舟を放置した自分の責任だと思う。自責の念は、薫の浮舟への思いを改めて深めていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1160–1163頁(コマ291–292)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日