源氏物語 第52帖 蜻蛉(2)
匂宮の使い
下女は「頼りになる方もいらっしゃらない折なので、お仕えなさる人々はただ物にぶつかって惑っていらっしゃいます」と言う。使いは深い事情も知らない男なので、詳しくも尋ねずに参った。「このようでございます」と申させると、宮は夢かと思われてたいそう妙だ。ひどく患っているとも聞かず、日頃気分が悪いとばかりあったが、昨日の返事はそのような様子もなく、いつもより趣深かったのにとお思いやりになる方法もないので、「時方が行って様子を見て、確かなことを尋ねてこい」とおっしゃると、時方は「あの大将殿がどういうことかお聞きになったことがございましたのでしょうか、宿直する者が怠っているなどと戒めて仰せられるといって、下人が退出するのをも見咎めて問いただすそうですので、口実もなく時方が参りましたら、噂が立ちました時に、お思い合わせになることなどがございましょう。それに急に人がお亡くなりになったような所は、言うまでもなく騒がしく人が多いでしょうに」と申し上げる。宮は「そうはいっても、たいそう気がかりなままでいられようか。やはり何とか然るべきように工夫して、例の事情を知っている侍従などに会って、どういうことでこのように言うのかと探ってこい。下衆は間違ったことも言うものだ」とおっしゃるので、お気の毒なご様子も恐れ多くて、夕方に行く。身軽な者はすぐに行き着いた。雨は少し降りやんだが、難儀な道にやつれて下衆の姿で来ると、人が大勢立ち騒いで「今夜すぐに葬り申し上げるのだ」などと言うのを聞く気持ちも呆れるばかりに思われる。右近に便りをしたが会えない。「ただ今は何もわからず、起き上がる気持ちもしなくて。それにしても今夜ぐらいはこうして立ち寄ってくださったのに。お目にかかれないと」と言わせた。「そうはいっても、このように気がかりなままでは、どうして帰れましょう。せめてもう一人だけでも」と熱心に言ったので、侍従が会った。「たいそう呆れるほど思いも寄らない様子でお亡くなりになったので、悲しいと言っても言い足りず、夢のようで誰も彼も惑っておりますと申し上げてください。少し気持ちも落ち着きましてから。
- 1たのもしきたのもしきたのもしき人人ひともももおはしまさおはしまさおわしまさぬぬぬをりをりおりなれなれなればばばさぶらひさぶらひさぶらい給給たまふふう人々人々ひとびとははは唯唯ただ物物ものにににあたりあたりあたりてててなむなむなんまどひまどひまどい給給たまふふう」」」ととといふいふいう。。。心心こころももも深深ふかくくく知知しらららぬぬぬをのこをのこおのこにてにてにて委委くわしうしうしゅうももも問問とはははでででまゐりまゐりまいりぬぬぬ。。。「「「かくかくかくなむなむなん」」」ととと申申もうさささせせせたるたるたるににに夢夢ゆめととと覺覺おぼえええててていといといとあやしあやしあやし。。。いたくいたくいたくわづらふわづらふわずらうともともとも聞聞きかかかずずず、、、日日ひ比比ごろなやましなやましなやましとととのみのみのみありありありしかしかしかどどど昨日昨日きのうののの返返かえり事事ごとはははさりげさりげさりげもももなくなくなくててて常常つねよりよりよりもももをかしげをかしげおかしげなりなりなりしししものものものをををととと覺覺おぼしししやるやるやる方方かたなけれなけれなければばば「「「時時とき方方かたいきいきいきててて氣色氣色けしき見見み、、、たしかたしかたしかなるなるなる事事こと問問とひひい聞聞きけけけ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、「「「かのかのかの大大たい將將しょう殿殿どのいかいかいかなるなるなる事事ことかかか聞聞きききき給給たまふふうことことこと侍侍はべりりりけむけむけん、、、とのとのとのゐゐいするするするものものものおろかおろかおろかなりなりなりなどなどなどいましめいましめいましめ仰仰おおせせせらるゝらるゝらるるとてとてとて下下しも人人びとののの罷罷まかりりり出出いづるづるずるをををももも見見みとがめとがめとがめ問問とひひい侍侍はべるるるなれなれなればばば、、、ことことことづくるづくるずくることことことなくなくなくててて時時とき方方かたまかりまかりまかりたらたらたらむむんををを物物ものののの聞聞きこえええ侍侍はべらららばばばおぼしおぼしおぼしあはするあはするあわすることことことなどなどなどややや侍侍はべらららむむん。。。さてさてさて俄俄にわかににに人人ひとのののうせうせうせ給給たまひひいつつつらむらむらん所所ところはははろなうろなうろのうさわがしくさわがしくさわがしく人人ひとしげくしげくしげく侍侍はべらららむむんををを」」」ととと聞聞きこゆゆゆ。。。「「「さりとてさりとてさりとていといといとおぼつかなくおぼつかなくおぼつかなくてててやややあらあらあらむむん猶猶なおとかくとかくとかくさるべきさるべきさるべきさまさまさまにににかまへかまへかまえててて例例れいののの心心こころ知知しれれれるるる侍侍じ從從じゅうなどなどなどにににあひあひあいててていかいかいかなるなるなる事事ことをををかくかくかくいふいふいうぞぞぞとととあないあないあないせせせよよよ。。。げすげすげすはははひがひがひがごとごとごともももいふいふいうなりなりなり」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、いとほしきいとほしきいとおしき御御おん氣色氣色けしきもももかたじけなくかたじけなくかたじけなくててて夕夕ゆうつつつかたかたかたゆくゆくゆく。。。
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現代語訳
「頼りになる方もいらっしゃらない折なので、お仕えなさる人々はただ物にぶつかって惑っていらっしゃいます」と言う。深い事情も知らない男なので、詳しくも尋ねずに参った。「このようでございます」と申させると、夢かと思われてたいそう妙だ。ひどく患っているとも聞かず、日頃気分が悪いとばかりあったが、昨日の返事はそのような様子もなく、いつもより趣深かったのにとお思いやりになる方法もないので、「時方が行って様子を見て、確かなことを尋ねてこい」とおっしゃると、「あの大将殿がどういうことかお聞きになったことがございましたのでしょうか、宿直する者が怠っているなどと戒めて仰せられるといって、下人が退出するのをも見咎めて問いただすそうですので、口実もなく時方が参りましたら、噂が立ちました時に、お思い合わせになることなどがございましょう。それに急に人がお亡くなりになったような所は、言うまでもなく騒がしく人が多いでしょうに」と申し上げる。「そうはいっても、たいそう気がかりなままでいられようか。やはり何とか然るべきように工夫して、例の事情を知っている侍従などに会って、どういうことでこのように言うのかと探ってこい。下衆は間違ったことも言うものだ」とおっしゃるので、お気の毒なご様子も恐れ多くて、夕方に行く。
身軽な者はすぐに行き着いた。雨は少し降りやんだが、難儀な道にやつれて下衆の姿で来ると、人が大勢立ち騒いで「今夜すぐに葬り申し上げるのだ」などと言うのを聞く気持ちも呆れるばかりに思われる。右近に便りをしたが会えない。「ただ今は何もわからず、起き上がる気持ちもしなくて。それにしても今夜ぐらいはこうして立ち寄ってくださるのでしょうに。お目にかかれないと」と言わせた。「そうはいっても、このように気がかりなままでは、どうして帰れましょう。せめてもう一人だけでも」と熱心に言ったので、侍従が会った。「たいそう呆れるほど思いも寄らない様子でお亡くなりになったので、悲しいと言っても言い足りず、夢のようで誰も彼も惑っておりますと申し上げてください。少し気持ちも落ち着きましてから。
意訳
匂宮の使いは浮舟の死を聞いて戻り、匂宮は夢かと驚く。匂宮は時方に宇治へ行って確かめるよう命じる。時方は、薫が警戒を厳しくしているので行けば疑われると渋るが、匂宮の頼みに折れて夕方に宇治へ向かう。宇治では今夜すぐに葬送するといって騒いでおり、右近は会えないと断る。時方が粘ると侍従が会い、浮舟が思いがけず亡くなり、皆夢のように惑っていると伝える。
語釈・文法注
文法
- 「ろなう」(所はろなうさわがしく)
- 論無う。言うまでもなく。
- 「をさめ奉る」(今宵やがてをさめ奉るなり)
- 納め奉る。葬る。
- 「あない」(いかなる事をかくいふぞとあないせよ)
- 案内。事情を探る、様子を尋ねる。
解説
匂宮は浮舟の最後の歌の不吉さに気づきながらも、その死を信じられない。「夢と覺えて」という匂宮の反応は、突然の喪失の衝撃を伝えている。
宇治では、浮舟の遺体もないまま、急いで葬送の準備が進められる。真相を隠そうとする女房たちの必死さが、この慌ただしさの裏にある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1154–1157頁(コマ288–289)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日