源氏物語 第51帖 浮舟(25)
夢に見える匂宮
匂宮は、たいそう高貴な身分の人は多いが、これほどの様子をした人は少ないだろうとご覧になる。見苦しいほどに遊び戯れながら日をお暮らしになる。忍んで連れ出して隠してしまうことを、返す返すおっしゃる。その間にあの人(薫)に会ったらと、ひどい誓いを立てさせなさるので、浮舟はたいそう無理なことと思って、返事もできず涙までこぼれる様子に、全く目の前でさえ心が移らないのだなと胸が痛くお思いになる。恨んだり泣いたりして、万事を語り明かして、夜深くに浮舟を連れてお帰りになる。いつものように抱きなさる。「たいそう大切にお思いのような人は、まさかこうはしないだろうよ。おわかりになったか」とおっしゃると、本当にと思ってうなずいているのが、たいそう可憐である。右近が妻戸を開けてお入れ申し上げる。そのままここから別れてお出かけになるのも、名残惜しくつらいとお思いになる。このような帰りは、やはり二条院においでになる。たいそうご気分が悪くなりなさって、食事なども全く召し上がらず、日を経て青ざめ痩せなさるご様子が変わるのを、帝もどこでもお嘆きになるので、いっそう騒がしくて、お手紙さえ細やかにはお書きになれない。あちらでも、あの口うるさい乳母が娘のお産の所に出ていたのが帰ってきたので、気楽に手紙を見ることもできない。このような粗末な住まいも、ただあの殿(薫)のお扱いになる様子を楽しみに待つことで、母君も心を慰めていたが、忍んだ様子ながらも近くに移そうと薫がお思いになったので、たいそう見苦しくなくうれしいことと思って、だんだん女房を探し、見苦しくない女童などを迎えてよこしなさる。浮舟は、自分の心でもそれこそあるべきことで、初めから待ち続けていたことだとは思いながら、無理強いした人のことを思い出すと、恨みなさった様子や、おっしゃったことどもが面影にぴったりと添って、少しまどろむと夢にお見えになりつつ、たいそういやなほどに思われる。雨が降りやまず日数が多くなる頃、宮はいっそう山路も通えなくなって、どうしようもなくお思いになったので、親の飼う蚕のような身は窮屈なものだとお思いになるのももったいない。
- 1いといといとやんごとなきやんごとなきやんごとなききはきはきわののの人人ひと多多おおかれかれかれどどど、、、かばかりかばかりかばかりのののさまさまさましししたるたるたるはははかたくかたくかたくやややととと見見み給給たまふふうかたはかたはかたわなるなるなるまでまでまで遊遊あそびびび戯戯たわぶれれれつゝつゝつつ暮暮くらししし給給たまふふう忍忍しのびびびてててゐゐいてててかくしかくしかくしてててむむん事事ことをををかへすがへすかへすがへすかえすがえすのたまふのたまふのたまう。。。そのそのそのほどほどほどかのかのかの人人ひとににに見見みえええたらたらたらばばばととといみじきいみじきいみじき事事ことどもどもどもををを誓誓ちかははわせせせ給給たまへへえばばば、、、いといといとわりなきわりなきわりなき事事ことととと思思おもひひいててて、、、いらへいらへいらえもももやらやらやらずずず淚淚なみださへさへさへ墮墮おつるつるつる氣色氣色けしき、、、更更さらににに目目めのののまへまへまえだにだにだに思思おもひひいうつらうつらうつらぬぬぬなななめりめりめりととと胸胸むね痛痛いとうううおぼさおぼさおぼさるるる。。。恨恨うらみみみてててももも泣泣なきききてててももも萬萬よろずのたまひのたまひのたまいあかしあかしあかしててて、、、夜夜よ深深ふかくくくゐゐいててて歸歸かえりりり給給たまふふう。。。例例れいのののいだきいだきいだき給給たまふふう。。。「「「いみじくいみじくいみじくおぼすおぼすおぼすめるめるめる人人ひとははは、、、かうかうこうはははよもよもよもあらあらあらじじじよよよ。。。見見み知知しりりり給給たまひひいたりたりたりややや」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、げにげにげにととと思思おもひひいててて、、、うなづきうなづきうなずきててて居居いたるたるたる、、、いといといとらうたげらうたげろうたげなりなりなり。。。右右う近近こん妻妻つま戶戶ど放放はなちちちててて入入いれれれ奉奉たてまつるるる、、、やがてやがてやがてこれこれこれよりよりより別別わかれれれててて出出いででで給給たまふふうももも飽飽あかかかずずずいみじいみじいみじとととおぼさおぼさおぼさるるる。。。かやうかやうかようのののかへさかへさかえさははは猶猶なお二二に條條じょう院院いんにににぞぞぞおはしますおはしますおわします。。。いといといと惱惱なやましうましうましゅうししし給給たまひひいててて物物ものなどなどなどももも絕絕たえええててて聞聞きこしししめさめさめさずずず、、、日日ひををを經經へててて靑靑あおみみみ瘠瘠やせせせ給給たまふふう御御おん氣色氣色けしき變變かわるるるををを、、、うちうちうちにににもももいづくいづくいずくにににもももおもほしおもほしおもおし歎歎なげくくくににに、、、いとゞいとゞいとど物物ものさわがしくさわがしくさわがしくててて御御おん文文ふみだにだにだにこまかこまかこまかにににははは得得え書書かききき給給たまははわずずず。。。
- 2かしこかしこかしこにににもももかのかのかのさかしきさかしきさかしきめのとめのとめのと、、、娘娘むすめののの子子こ產產うむむむ所所ところににに出出いでででたりたりたりけるけるける、、、歸歸かえりりり來來きにににけれけれければばば心心こころやすくやすくやすくももも得得え見見みずずず、、、かくかくかくあやしきあやしきあやしき住住すまひひいををを唯唯ただかのかのかの殿殿とののののもてもてもてなしなしなし給給たまははわむむんさまさまさまをををゆかしくゆかしくゆかしく待待まつつつことことことにてにてにて、、、母母はは君君ぎみももも思思おもひひい慰慰なぐさめめめたるたるたるににに、、、忍忍しのびびびたるたるたるさまさまさまながらながらながらももも近近ちかくくく渡渡わたしししてててむむんことことことをををおぼしおぼしおぼしなりなりなりにににけれけれければばば、、、いといといとめやすくめやすくめやすく嬉嬉うれしかるしかるしかるべきべきべきことことことににに思思おもひひいててて、、、やうやうやうやうようよう人人ひともとめもとめもとめ、、、わらはわらはわらわのののめやすきめやすきめやすきなどなどなど迎迎むかへへえててておこせおこせおこせ給給たまふふう。。。我我わががが心心こころにににもももそれそれそれこそこそこそはははあるあるあるべきべきべきことことことににに初初はじめよりよりより待待まちちち渡渡わたれれれとととははは思思おもひひいながらながらながら、、、あながちあながちあながちなるなるなる人人ひとののの御御おん事事ことををを思思おもひひい出出いづるづるずるににに、、、恨恨うらみみみ給給たまひひいしししさまさまさま、、、のたまひのたまひのたまいししし事事ことどもどもども面面おもかげかげかげにににつとつとつとそひそひそいててて、、、いさゝかいさゝかいささかまどろめまどろめまどろめばばば夢夢ゆめににに見見みえええ給給たまひひいつゝつゝつつ、、、いといといとうたてうたてうたてあるあるあるまでまでまでおぼゆおぼゆおぼゆ。。。雨雨あめ降降ふりりりやまやまやまででで、、、日日ひ頃頃ごろ多多おおくくくなるなるなるころころころ、、、いとヾいとヾいとど山山やま路路じおぼしおぼしおぼし絕絕たえええててて、、、わりなくわりなくわりなくおぼさおぼさおぼされれれけれけれければばば、、、おやおやおやのののかうこかうここうこははは所所ところせきせきせきものものものにににこそこそこそとととおぼすおぼすおぼすもももかたじけなしかたじけなしかたじけなし。。。
現代語訳
たいそう高貴な身分の人は多いが、これほどの様子をした人は少ないだろうとご覧になる。見苦しいほどに遊び戯れながら日をお暮らしになる。忍んで連れ出して隠してしまうことを、返す返すおっしゃる。その間にあの人に会ったらと、ひどい誓いを立てさせなさるので、たいそう無理なことと思って、返事もできず涙までこぼれる様子に、全く目の前でさえ心が移らないのだなと胸が痛くお思いになる。恨んだり泣いたりして、万事を語り明かして、夜深くに連れてお帰りになる。いつものように抱きなさる。「たいそう大切にお思いのような人は、まさかこうはしないだろうよ。おわかりになったか」とおっしゃると、本当にと思ってうなずいているのが、たいそう可憐である。右近が妻戸を開けてお入れ申し上げる。そのままここから別れてお出かけになるのも、名残惜しくつらいとお思いになる。このような帰りは、やはり二条院においでになる。たいそうご気分が悪くなりなさって、食事なども全く召し上がらず、日を経て青ざめ痩せなさるご様子が変わるのを、内裏でもどこでもお嘆きになるので、いっそう騒がしくて、お手紙さえ細やかにはお書きになれない。
あちらでも、あの口うるさい乳母が娘のお産の所に出ていたのが帰ってきたので、気楽に見ることもできない。このような粗末な住まいも、ただあの殿のお扱いになる様子を楽しみに待つことで、母君も心を慰めていたが、忍んだ様子ながらも近くに移そうとお思いになったので、たいそう見苦しくなくうれしいことと思って、だんだん女房を探し、見苦しくない女童などを迎えてよこしなさる。自分の心でもそれこそあるべきことで、初めから待ち続けていたことだとは思いながら、無理強いした人のことを思い出すと、恨みなさった様子や、おっしゃったことどもが面影にぴったりと添って、少しまどろむと夢にお見えになりつつ、たいそういやなほどに思われる。雨が降りやまず日数が多くなる頃、いっそう山路も通えなくなって、どうしようもなくお思いになったので、親の飼う蚕のような身は窮屈なものだとお思いになるのも、もったいないことである。
意訳
匂宮は浮舟と遊び戯れて日を過ごし、隠し連れ出すことを約束し、薫に会わないよう誓わせようとする。浮舟は泣くばかりで、匂宮は心が移らないのだと胸を痛める。夜深く匂宮は浮舟を抱いて宇治の邸に送り届け、二条院に帰って病に伏す。宇治では、薫が浮舟を京に移す準備を進め、母も喜ぶ。浮舟は薫を待つべきと思いながら、匂宮の面影が夢にまで現れて苦しむ。長雨で匂宮は宇治に通えず、窮屈な身分を嘆く。
語釈・文法注
文法
- 「かへさ」(かやうのかへさは猶二條院にぞおはします)
- 帰さ。帰り道、帰り。
- 「おやのかうこ」(おやのかうこは所せきものにこそ)
- 「たらちねの親のかふこの繭ごもりいぶせくもあるか妹に逢はずて」(拾遺集)による。親の飼う蚕のように籠もって窮屈な身。
- 「さかしきめのと」(かのさかしきめのと)
- 口うるさい乳母。浮舟の乳母。
解説
浮舟は、薫を待つべきだと理性では思いながら、匂宮の面影が夢にまで現れる。理性と情念の分裂が、浮舟の苦悩の核心である。
匂宮は病に伏し、浮舟に会えない。皇子という窮屈な身分が、匂宮の情熱を阻む。二人の恋は、身分の壁に阻まれながら燃え上がっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1132–1135頁(コマ277–278)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日