源氏物語 第51帖 浮舟(15)
匂宮の嘆き
宮は、自然とそれは聞き出そうとお思いになるものの、本人に言わせたいのが困ったことだ。夜になって京へ遣わした大夫(時方)が参って右近に会った。「后の宮からもお使いが参って、左大臣も機嫌を損じ申し上げなさって、人に知らせなさらないお出歩きは、たいそう軽々しく無礼なこともあるのを、すべて帝などがお聞きになることも、ご自身のためにたいそうつらいことだと、ひどく申し上げなさいました。東山に聖をご覧においでになったと、人には申しておきました」などと語って、「女こそ罪深くいらっしゃるものだ。わけもない懸想人まで惑わしなさって、嘘までつかせなさるよ」と言うと、右近は「聖の名までお付け申し上げなさったのなら、たいそう結構です。ご自分の罪もそれで滅ぼしなさるでしょう。本当にたいそう妙なお心で、どうしてお習いになったのでしょう。前もってこうおいでになると承っていたら、たいそう恐れ多いので、うまく取り計らい申し上げましたのに、無分別なお出歩きですこと」と、お世話申し上げる。右近が参って、これこれと伝え申し上げると、宮は本当にどうなるだろうとお思いやりになって、「窮屈な身はつらいものだ。身軽な程度の殿上人などで、しばらくいたいものだ。どうしよう、このように憚るべき人目も、とても気にしてはいられないだろう。大将もどう思うだろう。然るべき縁とはいいながら、不思議なほど昔から親しい仲なのに、このような心の隔てが知られた時は、恥ずかしく、またどうなることか。世のたとえに言うこともあるので、待ち遠しくさせた自分の怠りも知らず、そなたが恨まれなさることまでも心配だ。夢にも人に知られなさらないようにして、ここではない所に連れ出し申し上げよう」とおっしゃる。今日までもこうして籠っていらっしゃるわけにもいかないので、お出かけになろうとするにも、魂は袖の中にとどめていらっしゃるのだろう。夜が明けきらないうちにと、人々が咳払いをしてお促し申し上げる。
- 1おのづからおのづからおのずからそれそれそれははは聞聞きききき出出いでででむむんとととおぼすおぼすおぼすものものものからからから、、、いはいはいわせせせまほしきまほしきまほしきぞぞぞわりなきわりなきわりなきややや。。。夜夜よさりさりさり京京きょうへへへ遣遣つかわしししつるつるつる大大たい夫夫ふ參參まいりりりててて右右う近近こんににに逢逢あひひいたりたりたり。。。「「「后后きさいののの宮宮みやよりよりよりももも御御おん使使つかい參參まいりりりててて、、、左左ひだりのののおとゞおとゞおとどもももむつかりむつかりむつかり聞聞きこえええさせさせさせ給給たまひひいててて人人ひとににに知知しらさらさらさせせせ給給たまははわぬぬぬ御御おんありきありきありきははは、、、いといといとかるがるしくかるがるしくかるがるしくなめげなめげなめげなるなるなることことこともももあるあるあるををを、、、すべてすべてすべて內內うちなどなどなどににに聞聞きこしししめさめさめさむむんことことことももも身身みのののためためためなむなむなんいといといとからきからきからきととと、、、いみじくいみじくいみじく申申もうさささせせせ給給たまひひいけりけりけり。。。東東ひんがし山山やまにににひじりひじりひじり御御ご覽覽らんじじじにににとととなむなむなん、、、人人ひとにににははは物物ものししし侍侍はべりりりつるつるつる」」」などなどなど語語かたりりりててて、、、「「「女女おんなこそこそこそ罪罪つみ深深ふこうううおはするおはするおわするものものものにににはははあれあれあれ。。。すゞろすゞろすずろなるなるなるけざうけざうけぞうののの人人ひとをををさへさへさへ惑惑まどはしはしわし給給たまひひいててて、、、そらそらそらごとごとごとをををさへさへさへせせせさせさせさせ給給たまふふうよよよ」」」ととといへいへいえばばば、、、「「「ひじりひじりひじりののの名名なをををさへさへさへつけつけつけ聞聞きこえええさせさせさせ給給たまひひいてててけれけれければばば、、、いといといとよしよしよし。。。私私わたくしののの罪罪つみもももそれそれそれにてにてにてほろぼしほろぼしほろぼし給給たまふふうらむらむらん。。。誠誠まことにににいといといとあやしきあやしきあやしき御心御心みこころののの、、、げにげにげにいかでいかでいかで習習ならははわせせせ給給たまひひいけむけむけん。。。かねてかねてかねてかうかうこうおはしますおはしますおわしますべしべしべしととと、、、うけたまはらうけたまはらうけたまわらましにもましにもましにも、、、いといといとかたじけなけれかたじけなけれかたじけなければばば、、、たばかりたばかりたばかり聞聞きこえええさせさせさせてててましましましものものものををを、、、あうなきあうなきおうなき御御おんありきありきありきにににこそこそこそははは」」」ととと、、、あつかひあつかひあつかい聞聞きこゆゆゆ。。。
- 2參參まいりりりてててさささなむなむなんとととまねびまねびまねび聞聞きこゆれゆれゆればばば、、、げにげにげにいかいかいかならならならむむんとととおぼしおぼしおぼしやるやるやるににに、、、「「「所所ところせきせきせき身身みこそこそこそわびしけれわびしけれわびしけれ。。。輕輕かろらからからかなるなるなる程程ほどののの殿殿てん上上じょう人人びとなどなどなどにてにてにて、、、しばししばししばしあらあらあらばやばやばや。。。いかゞいかゞいかがすすすべきべきべき、、、かうかうこうつゝむつゝむつつむべきべきべき人人ひとめめめももも得得え憚憚はばかりりりあふあふあうまじくまじくまじくなむなむなん。。。大大たい將將しょうもももいかにいかにいかに思思おもははわむむんとととすすすらむらむらん。。。さるべきさるべきさるべき程程ほどとととはははいひいひいいながらながらながら、、、怪怪あやしきしきしきまでまでまで昔昔むかしよりよりよりむつましきむつましきむつましき中中なかににに、、、かゝるかゝるかかる心心こころのののへだてへだてへだてののの知知しららられれれたらたらたらむむん時時とき、、、耻耻はずかしうかしうかしゅう、、、またまたまたいかにいかにいかにぞぞぞややや。。。世世よのののたとひたとひたといにににいふいふいうことことこともももあれあれあればばば待待まち遠遠どおなるなるなる我我わがががをこたりをこたりおこたりをををももも知知しらららずずず怨怨うらみみみられられられ給給たまははわむむんをををさへさへさへなむなむなん思思おもふふう。。。夢夢ゆめにににももも人人ひとににに知知しららられれれ給給たまふふうまじきまじきまじきさまさまさまにてにてにて、、、こゝこゝここならならならぬぬぬ所所ところにににゐゐいててて離離はなれれれ奉奉たてまつらららむむん」」」とととぞぞぞのたまふのたまふのたまう。。。今日今日きょうさへさへさへかくかくかくててて籠籠こもりりり居居い給給たまふふうべきべきべきならならならねねねばばば、、、出出いででで給給たまひひいなななむむんとととするするするにににももも、、、袖袖そでののの中中なかにににぞぞぞとゞめとゞめとどめ給給たまへへえらららむむんかしかしかし。。。明明あけけけはてはてはてぬぬぬさきさきさきにににととと人々人々ひとびとしはぶきしはぶきしわぶきおどろかしおどろかしおどろかし聞聞きこゆゆゆ。。。
現代語訳
自然とそれは聞き出そうとお思いになるものの、言わせたいのが困ったことだ。夜になって京へ遣わした大夫が参って右近に会った。「后の宮からもお使いが参って、左大臣も機嫌を損じ申し上げなさって、人に知らせなさらないお出歩きは、たいそう軽々しく無礼なこともあるのを、すべて帝などがお聞きになることも、ご自身のためにたいそうつらいことだと、ひどく申し上げなさいました。東山に聖をご覧においでになったと、人には申しておきました」などと語って、「女こそ罪深くいらっしゃるものだ。わけもない懸想人まで惑わしなさって、嘘までつかせなさるよ」と言うと、「聖の名までお付け申し上げなさったのなら、たいそう結構です。ご自分の罪もそれで滅ぼしなさるでしょう。本当にたいそう妙なお心で、どうしてお習いになったのでしょう。前もってこうおいでになると承っていても、たいそう恐れ多いので、うまく取り計らい申し上げましたのに、無分別なお出歩きですこと」と、お世話申し上げる。
参って、これこれと伝え申し上げると、本当にどうなるだろうとお思いやりになって、「窮屈な身はつらいものだ。身軽な程度の殿上人などで、しばらくいたいものだ。どうしよう、このように憚るべき人目も、とても気にしてはいられないだろう。大将もどう思うだろう。然るべき縁とはいいながら、不思議なほど昔から親しい仲なのに、このような心の隔てが知られた時は、恥ずかしく、またどうなることか。世のたとえに言うこともあるので、待ち遠しくさせた自分の怠りも知らず、そなたが恨まれなさることまでも心配だ。夢にも人に知られなさらないようにして、ここではない所に連れ出し申し上げよう」とおっしゃる。今日までもこうして籠っていらっしゃるわけにもいかないので、お出かけになろうとするにも、魂は袖の中にとどめていらっしゃるのだろう。夜が明けきらないうちにと、人々が咳払いをしてお促し申し上げる。
意訳
夜、京に遣わした時方が戻り、明石の中宮や夕霧が匂宮の無断の外出を責めていると右近に伝える。時方は東山の聖に会いに行ったと言い繕ったと話し、右近と冗談を交わす。匂宮は窮屈な身分を嘆き、親しい薫に知られることを恥じつつ、浮舟を人知れずよそへ連れ出したいと言う。夜明け前、匂宮は名残を惜しみながら帰り支度をする。
語釈・文法注
文法
- 「けざうの人」(すゞろなるけざうの人をさへ惑はし給ひて)
- 懸想の人。恋する人。ここでは時方自身を戯れて言う。
- 「あうなき」(あうなき御ありきにこそは)
- 無分別な、軽率な。
- 「袖の中にぞとゞめ」(袖の中にぞとゞめ給へらむかし)
- 「飽かざりし袖の中にや入りにけむわが魂のなき心地する」(古今集)による。魂を恋人のもとに残すこと。
解説
匂宮は薫との友情を思って恥じつつも、浮舟を手放そうとはしない。「こゝならぬ所にゐて離れ奉らむ」という言葉は、浮舟を薫から奪う決意の表明である。
時方と右近の軽妙なやりとりは、主人たちの深刻な恋と対照的である。従者たちの会話が、物語に陰影を与えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1122–1123頁(コマ272)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日