源氏物語 第51帖 浮舟(11)
帰らぬ匂宮
たいそう気兼ねの多かった二条院でさえ、無理強いなさったお心なので、ひたすら呆れるばかりである。初めから別人と知っていたら、少しは言いようもあっただろうに、夢の心地がするうちに、だんだんとあの折のつらかったことや、長年思い続けた様子をおっしゃるので、浮舟はこの宮だと知った。ますます恥ずかしく、あの上(中の君)がどうお思いになるかなどと思うと、ほかにどうしようもないので、限りなく泣く。宮もかえって、たやすく会えないだろうことなどをお思いになると、お泣きになる。夜はただもう明けていく。御供の人が来て咳払いをする。右近が聞いて参った。宮はお出かけになる気持ちもなく、名残惜しく哀れなうえに、またおいでになることも難しいので、京では探し騒がれても、今日だけはこうしていよう、何事も生きている間のためなのだ、今すぐお出かけになったら本当に死んでしまいそうにお思いになるので、この右近を召し寄せて、「たいそう思慮がないと思われるだろうが、今日は出ていけそうにない。男どもは、このあたりの近い所に、よく隠れて控えていよ。時方は京へ行って、山寺に忍んでいるとでも、もっともらしく返事などをせよ」とおっしゃると、右近はたいそう呆れて、思慮のなかった夜の過ちを思うと、心も惑いそうになるのを思い静めて、今はどんなに慌て騒いでも甲斐はないものの、失礼なことだ、二条院の妙な折にたいそう深く思い込んでいらしたのも、こうして逃れられなかったご宿縁だったのだ、人のしたことではないと思い慰めて、「今日お迎えにと申していましたが、どうなさるおつもりなのでしょう。このように逃れ申し上げられないご宿縁は、たいそう申し上げようもございません。折がたいそう悪うございます。今日はお出かけになって、お志がございましたら、のどかな時にでも」と申し上げる。宮は、ませた口をきくものだとお思いになって、「私は何か月も物思いをしていたので、すっかりぼんやりしてしまって、人が非難するのも知らず、ひたすら思い込むようになってしまった。
- 1いといといとつゝましかりつゝましかりつつましかりししし所所ところにてにてにてだにだにだに、、、わりなかりわりなかりわりなかりししし御心御心みこころなれなれなればばば、、、ひたぶるひたぶるひたぶるにににあさましあさましあさまし。。。初初はじめよりよりよりあらあらあらぬぬぬ人人ひとととと知知しりりりたらたらたらばばば聊聊いささかいふかひいふかひいうかいもももあるあるあるべきべきべきををを、、、夢夢ゆめののの心心こころちちここちするするするににに、、、やうやうやうやうようようそのそのそのをりをりおりのののつらかりつらかりつらかりしししことことこと、、、年年とし頃頃ごろ思思おもひひいわたるわたるわたるさまさまさまのたまふのたまふのたまうににに、、、このこのこの宮宮みやととと知知しりりりぬぬぬ。。。いよいよいよいよいよいよはづかしくはづかしくはずかしく、、、かのかのかのうへうへうえのののおぼさおぼさおぼさむむんことことことなどなどなど思思おもふふうににに、、、又又また猛猛たけきききことことことなけれなけれなければばば、、、限限かぎりりりなうなうのうなくなくなく。。。宮宮みやもももなかなかなかなかなかなかにてにてにて、、、たはやすくたはやすくたわやすくあひあひあい見見みざらざらざらむむんことことことなどなどなどをををおぼすおぼすおぼすににに、、、泣泣なききき給給たまふふう。。。夜夜よはははたゞたゞただあけあけあけににに明明あくくく。。。御御おん供供ともののの人人ひと來來きてててこわこわこわづくるづくるずくる。。。右右う近近こん聞聞ききききててて參參まいれれれりりり。。。出出いででで給給たまははわむむんこゝちこゝちここちもももなくなくなく飽飽あかかかずずずあはれあはれあわれなるなるなるににに、、、又又またおはしまさおはしまさおわしまさむむんことことことももも難難かたけれけれければばば京京きょうにににははは求求もとめめめさわがさわがさわがるるるともともとも、、、けふけふきょうばかりばかりばかりはははかくかくかくてててあらあらあらむむん、、、何何なに事事ことももも生生いけけけるるるかぎりかぎりかぎりのののためためためこそこそこそあれあれあれ、、、只只ただ今今いま出出いでででおはしまさおはしまさおわしまさばばば誠誠まことににに死死しぬぬぬべくべくべくおぼさおぼさおぼさるれるれるればばば、、、このこのこの右右う近近こんををを召召めししし寄寄よせせせててて、、、「「「いといといと心心こころちちここちなしなしなしととと思思おもははわれれれぬぬぬべけれべけれべけれどどど、、、けふけふきょうははは得得え出出いづづずまじうまじうまじゅうなむなむなんあるあるある。。。をのこをのこおのこどもどもどもははは、、、このこのこのわたりわたりわたり近近ちかからからからむむん所所ところににに、、、よくよくよくかくろへかくろへかくろえてててさぶらへさぶらへさぶらえ時時とき方方かたははは京京きょうへへへものものものしししててて、、、山山やま寺寺でらににに忍忍しのびびびてててなむなむなんととと、、、つきづきしからつきづきしからつきずきしからむむんさまさまさまににに、、、いらへいらへいらえなどなどなどせせせよよよ」」」とととのたまふのたまふのたまうににに、、、
- 2いといといとあさましくあさましくあさましくあきれあきれあきれててて、、、心心こころもももなかりなかりなかりけるけるける夜夜よのののあやまちあやまちあやまちををを思思おもふふうににに、、、心地心地ここちももも惑惑まどひひいぬぬぬべきべきべきををを思思おもひひいしづめしづめしずめててて、、、今今いまははは萬萬よろずにににおぼゝれおぼゝれおぼほれ騷騷さわぐぐぐともともとも、、、かひかひかいあらあらあらじじじものものものからからからなめげなめげなめげなりなりなり。。。怪怪あやしかりしかりしかりしししをりをりおりににに、、、いといといと深深ふこうううおぼしおぼしおぼしつれつれつれたりたりたりしししももも、、、かうかうこうのがれのがれのがれざりざりざりけるけるける御御おん宿宿すく世世せにににこそこそこそありありありけれけれけれ、、、人人ひとのののしししたるたるたるわざわざわざかはかはかはととと思思おもひひい慰慰なぐさめめめててて、、、「「「今日今日きょう御御おん迎迎むかえにににととと侍侍はべりりりしししををを、、、いかにいかにいかにせせせさせさせさせ給給たまははわむむんとととするするする御御おんことことことにににかかか、、、かうかうこう遁遁のがれれれ聞聞きこえええさせさせさせ給給たまふふうまじかりまじかりまじかりけるけるける御御おん宿宿すく世世せははは、、、いといといと聞聞きこえええさせさせさせ侍侍はべらららむむんかたかたかたなしなしなし。。。をりをりおりこそこそこそいといといとわりなくわりなくわりなく侍侍はべれれれ。。。今日今日きょうははは出出いでででおはしましおはしましおわしましててて御御おん志志こころざし侍侍はべらららばばば長長のど閑閑かにににももも」」」ととと聞聞きこゆゆゆ。。。およすけおよすけおよすけてててもももいふいふいうかなかなかなとととおぼしおぼしおぼしててて、、、「「「我我わははは月月つき頃頃ごろ物物もの思思おもひひいつるつるつるににに、、、ほれほれほれはてはてはてにににけれけれければばば人人ひとのののもどかもどかもどかむむんももも知知しらららずずず、、、ひたぶるひたぶるひたぶるににに思思おもひひいなりなりなりにににたりたりたり。。。
現代語訳
たいそう気兼ねの多かった所でさえ、無理強いなさったお心なので、ひたすら呆れるばかりである。初めから別人と知っていたら、少しは言いようもあっただろうに、夢の心地がするうちに、だんだんとあの折のつらかったことや、長年思い続けた様子をおっしゃるので、この宮だと知った。ますます恥ずかしく、あの上がどうお思いになるかなどと思うと、またほかにどうしようもないので、限りなく泣く。宮もかえって、たやすく会えないだろうことなどをお思いになると、お泣きになる。夜はただもう明けていく。御供の人が来て咳払いをする。右近が聞いて参った。お出かけになる気持ちもなく、名残惜しく哀れなうえに、またおいでになることも難しいので、京では探し騒がれても、今日だけはこうしていよう、何事も生きている間のためなのだ、今すぐお出かけになったら本当に死んでしまいそうにお思いになるので、この右近を召し寄せて、「たいそう思慮がないと思われるだろうが、今日は出ていけそうにない。男どもは、このあたりの近い所に、よく隠れて控えていよ。時方は京へ行って、山寺に忍んでいるとでも、もっともらしく返事などをせよ」とおっしゃると、
たいそう呆れて、思慮のなかった夜の過ちを思うと、心も惑いそうになるのを思い静めて、今はどんなに慌て騒いでも甲斐はないものの、失礼なことだ、妙な折にたいそう深く思い込んでいらしたのも、こうして逃れられなかったご宿縁だったのだ、人のしたことではないと思い慰めて、「今日お迎えにと申していましたが、どうなさるおつもりなのでしょう。このように逃れ申し上げられないご宿縁は、たいそう申し上げようもございません。折がたいそう悪うございます。今日はお出かけになって、お志がございましたら、のどかな時にでも」と申し上げる。ませた口をきくものだとお思いになって、「私は何か月も物思いをしていたので、すっかりぼんやりしてしまって、人が非難するのも知らず、ひたすら思い込むようになってしまった。
意訳
浮舟は相手が匂宮と知って恥じ入り、中の君への申し訳なさに泣き続ける。匂宮も、この後なかなか会えないことを思って泣く。夜が明けても匂宮は帰る気になれず、京で騒がれても今日はここにいると決め、右近に供の者を隠し、時方を京に帰して言い繕わせるよう命じる。右近は呆然としつつも、これも宿縁と諦め、今日は帰るよう申し上げるが、匂宮は聞き入れない。
語釈・文法注
文法
- 「猛きこと」(又猛きことなければ)
- 強い手段、なしうること。
- 「おぼゝれ」(今は萬におぼゝれ騷ぐとも)
- 慌てふためく、取り乱す。
- 「ほれはて」(ほれはてにければ)
- 惚れ果つ。すっかりぼんやりする。
解説
匂宮は「何事も生けるかぎりのためこそあれ」と、身分も世間体も捨てて宇治に留まる。その情熱は、浮舟の心を次第に捉えていく。
右近は「かうのがれざりける御宿世」と諦める。仕える女房の判断が、浮舟の運命をさらに深い淵へと導いていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1118–1119頁(コマ270)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日