源氏物語 第51帖 浮舟(6)
宇治行きの相談
匂宮は「やはりたいそうわけがあって、並の人に似ないお心だな。左大臣などが、この人があまりに道心に進んで、山寺に夜さえともすればお泊まりになるのを軽々しいと非難なさると聞いたが、本当にどうしてそれほど仏の道には忍び歩くのだろう、やはりあの故里に心を留めているのだと聞いていた。このようなことがあったのだ。さあ、人よりはまじめだと賢がる人こそ、特に人の思いつかないような隠れた企てだよ」とおっしゃって、たいそうおもしろいとお思いになった。この大内記はあの殿にたいそう親しくお仕えする家司の婿だったので、薫が隠していらっしゃることも聞くのだろう。宮はお心の中では、何とかしてこの人を、あの見た人かどうかと見定めよう、あの君がそれほどにして据えているのは、並の人ではあるまい、このあたり(中の君)とはどうして疎遠でない縁なのだろう、心を合わせて隠していらっしゃったのも、たいそう妬ましく思われる。ただそのことをこの頃は思い詰めていらっしゃった。賭弓や内宴なども済んで心のどかになったが、司召などといって人が心を尽くすような方面は何ともお思いにならないので、宇治へ忍んでおいでになることばかりを思いめぐらしなさる。この大内記は望むことがあって、夜昼何とかして宮のお気に入ろうと思う頃なので、宮はいつもより親しく召し使って、「たいそう難しいことでも、私の言うことを工夫してくれるか」などとおっしゃる。「畏まってお仕えいたします」。「たいそう不都合なことだが、あの宇治に住んでいるという人は、以前ほのかに見た人で行方もわからなくなってしまったのが、大将に尋ね取られてしまったと聞き合わせることがあるのだ。確かには知る方法もないが、ただ物陰からのぞきなどして、その人かどうか見定めようと思う。少しも人に知られないような手立ては、どうしたらよいか」とおっしゃると、大内記は、ああ厄介なと思うが、「おいでになることは、たいそう険しい山越えでございますが、特に遠くはございません。
- 1猶猶なおいといといと氣色氣色けしきありありありててて、、、なべてなべてなべてののの人人ひとににに似似にぬぬぬ御心御心みこころなりなりなりややや「「「左左ひだりのののおとゞおとゞおとどなどなどなど、、、このこのこの人人ひとのののあまりあまりあまり道道どう心心しんににに進進すすみみみててて山山やま寺寺でらににによるよるよるさへさへさへともともともすれすれすれははは泊泊とまりりり給給たまふふうなるなるなる、、、輕輕かろ々々がろしさしさしさととともどきもどきもどき給給たまふふうととと聞聞ききききしししををを、、、げにげにげになどなどなどかかかさしもさしもさしも佛佛ほとけののの道道みちにににははは忍忍しのびびびありくありくありくらむらむらん、、、猶猶なおかのかのかのふるふるふるさとさとさとににに心心こころをををとゞめとゞめとどめたるたるたるとととなむなむなん聞聞ききききししし。。。かゝるかゝるかかることことことこそこそこそはははありありありけれけれけれ、、、いつらいつらいつら人人ひとよりよりよりはははまめまめまめなるなるなるとととさかしさかしさかしがるがるがる人人ひとしもしもしも、、、ことことことににに人人ひとののの思思おもひひいいたるいたるいたるまじきまじきまじき、、、くまくまくまあるあるあるかまへかまへかまえよよよ」」」とととのたまひのたまひのたまいててて、、、いといといとをかしをかしおかしとととおぼえおぼえおぼえたりたりたり。。。このこのこの人人ひとはははかのかのかの殿殿とのにににいといといとむつましくむつましくむつましく仕仕つこうううまつるまつるまつるけいしけいしけいしののの聟聟むこににになむなむなんありありありけれけれければばば、、、かくしかくしかくし給給たまふふう事事ことももも聞聞きくくくなるなるなるべしべしべし。。。御心御心みこころのののうちうちうちにににははは、、、いかにいかにいかにしししてててこのこのこの人人ひとををを見見みししし人人ひとかかかとととももも見見み定定さだめめめむむん、、、かのかのかの君君きみのののさばかりさばかりさばかりにてにてにてすゑすゑすえたるたるたるははは、、、なべてなべてなべてのののよろしきよろしきよろしき人人ひとにににはははあらあらあらじじじ、、、このこのこのわたりわたりわたりにににははは、、、いかでいかでいかでかかかうとからうとからうとからぬぬぬにににかかかあらあらあらむむん、、、心心こころをををかはしかはしかはしてててかくしかくしかくし給給たまへへえりりりけるけるけるももも、、、いといといとねたうねたうねとうおぼゆおぼゆおぼゆ。。。唯唯ただそのそのそのことことことをををこのこのこの頃頃ごろはははおぼしおぼしおぼししみしみしみたりたりたり。。。
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現代語訳
「やはりたいそうわけがあって、並の人に似ないお心だな。左大臣などが、この人があまりに道心に進んで、山寺に夜さえともすればお泊まりになるのを、軽々しいと非難なさると聞いたが、本当にどうしてそれほど仏の道には忍び歩くのだろう、やはりあの故里に心を留めているのだと聞いていた。このようなことがあったのだ。さあ、人よりはまじめだと賢がる人こそ、特に人の思いつかないような、隠れた企てだよ」とおっしゃって、たいそうおもしろいとお思いになった。この人は、あの殿にたいそう親しくお仕えする家司の婿だったので、隠していらっしゃることも聞くのだろう。お心の中では、何とかしてこの人を、あの見た人かどうかと見定めよう、あの君がそれほどにして据えているのは、並のよい程度の人ではあるまい、このあたりとは、どうして疎遠でない縁なのだろう、心を合わせて隠していらっしゃったのも、たいそう妬ましく思われる。ただそのことをこの頃は思い詰めていらっしゃった。
賭弓や内宴なども済んで心のどかになったが、司召などといって人が心を尽くすような方面は何ともお思いにならないので、宇治へ忍んでおいでになることばかりを思いめぐらしなさる。この内記は望むことがあって、夜昼何とかしてお気に入ろうと思う頃なので、いつもより親しく召し使って、「たいそう難しいことでも、私の言うことを工夫してくれるか」などとおっしゃる。「畏まってお仕えいたします」。「たいそう不都合なことだが、あの宇治に住んでいるという人は、以前ほのかに見た人で行方もわからなくなってしまったのが、大将に尋ね取られてしまったと聞き合わせることがあるのだ。確かには知る方法もないが、ただ物陰からのぞきなどして、その人かどうか見定めようと思う。少しも人に知られないような手立ては、どうしたらよいか」とおっしゃると、ああ厄介なと思うが、「おいでになることは、たいそう険しい山越えでございますが、特に遠くはございません。
意訳
匂宮は、まじめぶる薫が宇治に女を隠していたことをおもしろがる。匂宮は、その女が二条院で見た人かどうか確かめたく、中の君と薫が示し合わせて隠していたことを妬む。正月の行事が終わると、匂宮は宇治へ忍んで行くことばかり考え、昇進を望む大内記に手立てを相談する。大内記は困惑しつつも、宇治は遠くないと答える。
語釈・文法注
文法
- 「のりゆみ」(のりゆみ內宴などすぐして)
- 賭弓。正月十八日に行われる弓の競技。
- 「つかさめし」(つかさめしなどいひて)
- 司召。官吏の任命の儀式。
- 「くまあるかまへ」(くまあるかまへよ)
- 隠れたところのある企て。
解説
匂宮は、まじめな薫が女を隠していたことに、ある種の痛快さを感じる。親友であり競争相手でもある薫への対抗心が、匂宮の行動を駆り立てる。
昇進を望む大内記は、匂宮の無理な頼みを断れない。宮廷社会の利害関係が、浮舟への接近を手助けしていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1112–1115頁(コマ267–268)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日