源氏物語 第49帖 宿木(55)
藤の歌と女二の宮の移転
紙燭をともして歌などを差し上げる。文台のもとに寄って歌を置く時の様子はそれぞれ得意顔だったが、例によってどんなにぎこちなく古めかしかったろうと思いやられるので、むやみに全部を尋ねて書き留めはしない。上の町の人々も上臈とて、詠みぶりは特に優れたところは見えなかったようだが、しるしばかりにと、一つ二つ尋ねて聞いたのである。これは大将の君が下りて帝の挿頭の藤を折って参ったときの歌だとか。薫は、帝の挿頭にと折った藤の花、及ばぬ枝に袖をかけてしまったと詠む。得意顔なのが憎らしい。帝は、万代かけて匂うはずの花なので、今日も飽かぬ色と見ると詠む。またある人は、君のために折った挿頭は紫の雲に劣らない花の様子かと詠む。また、世の常の色とも見えない、雲居まで立ち上った藤波の花と詠む。これがあの腹を立てていた大納言の歌だったろうと見える。一部は聞き違いもあったろうか、このように格別趣深い節もないものばかりだったようだ。夜が更けるにつれて御遊びはたいそう趣深い。大将の君が「あな尊」と謡いなさる声は限りなくすばらしかった。按察大納言も昔優れていらしたお声の名残なので、今もたいそう堂々として声を合わせる。左大臣(夕霧)の七男が童で笙の笛を吹くのがたいそう珍しかったので、御衣を賜る。大臣は下りて舞踏なさる。明け方近くになってお帰りになった。禄などは、上達部や親王たちには帝からくださる。殿上人や楽所の人々には女二の宮の方から品々に応じて賜った。その夜に、宮を退出させ申し上げた。儀式はたいそう格別である。帝付きの女房がそのままお送りに仕えた。廂のある御車で、廂のない糸毛の車三つ、檳榔毛の黄金造り六つ、ただの檳榔毛二十、網代二つ、女房三十人、童と下仕えが八人ずつ控えたうえに、また迎えの出し車十二台に、三条の宮の人々を乗せていた。
- 1紙紙し燭燭そくさしさしさしててて歌歌うたどもどもども奉奉たてまつるるる。。。ぶんだいぶんだいぶんだいのののもともともとににによりよりよりつゝつゝつつ、、、おくおくおくほどほどほどののの氣色氣色けしきはははおのおのおのおのおのおのしたりしたりしたり顔顔がおなりなりなりけれけれけれどどど、、、例例れいのののいかにいかにいかに怪怪あやしげしげしげにににふるめいふるめいふるめいたりたりたりけむけむけんととと思思おもひひいやれやれやればばば、、、あながちあながちあながちににに皆皆みなももも尋尋たずねねねかゝかゝかかずずず。。。かみかみかみのののまちまちまちももも上上じょう﨟﨟ろうとてとてとて御御おん口口くちつきつきつきどもどもどもははは異異ことなるなるなることことこと見見みえええざざざめれめれめれどどど、、、しるししるししるしばかりばかりばかりとてとてとて、、、一一ひとつつつ二二ふたつつつぞぞぞ問問とひひい聞聞ききききたりたりたりししし。。。これこれこれははは大大たい將將しょうののの君君きみのののおりおりおりててて御御おんかざしかざしかざしをりをりおりててて參參まいりりり給給たまへへえりりりけるけるけるとととかかか。。。「「「すべらぎすべらぎすべらぎのののかざしかざしかざしにににをるをるおるととと藤藤ふじののの花花はなおよばおよばおよばぬぬぬえだえだえだににに袖袖そでかけかけかけてててけりけりけり」」」。。。うけばりうけばりうけばりたるたるたるぞぞぞにくきにくきにくきややや。。。「「「よろづよろづよろず世世よをををかけかけかけてててにほはにほはにおわむむん花花はななれなれなればばばけふけふきょうをををもももあかあかあかぬぬぬ色色いろとととこそこそこそみれみれみれ」」」。。。またまたまたたれたれたれとととかかか、、、「「「君君きみがががためためためをれをれおれるるるかざしかざしかざしははは紫紫むらさきののの雲雲くもにににおとらおとらおとらぬぬぬ花花はなのののけしきけしきけしきかかか」」」。。。「「「世世よのののつねつねつねののの色色いろとととももも見見みえええずずず雲雲くも井井いまでまでまでたちたちたちのぼりのぼりのぼりけるけるける藤藤ふじなみなみなみののの花花はな」」」。。。これこれこれやややこのこのこのはらだつはらだつはらだつ大大だい納納な言言ごんのののなりなりなりけむけむけんとととこそこそこそ見見みゆれゆれゆれ。。。かたかたかたへへへはははひがひがひがごとごとごとにににもももやややありありありけむけむけん、、、かやうかやうかようにににことことことなるなるなるをかしきをかしきおかしきふしふしふしもももなくなくなくのみのみのみぞぞぞあああなりなりなりししし。。。
- 2夜夜よふくるふくるふくるまゝまゝままににに御御おんあそびあそびあそびいといといとおもしろしおもしろしおもしろし。。。大大たい將將しょうののの君君きみののの、、、あなあなあなたふとたふととうと謠謠うたひひい給給たまへへえるるる聲聲こえぞぞぞ限限かぎりなくなくなくめでたかりめでたかりめでたかりけるけるける。。。按按あ察察ぜちももも昔昔むかし勝勝すぐれれれ給給たまへへえりりりししし御御おん聲聲こえのののなごりなごりなごりなれなれなればばば今今いまもももいといといとものものものものしうものしうものしゅうてててうちうちうちあはせあはせあわせ給給たまへへえりりり。。。左左ひだりのののおほいおほいおおい殿殿とのののの御御おん七七しち郎郎ろう、、、わらはわらはわらわにてにてにてさうさうそうののの笛笛ふえふくふくふく、、、いといといと珍珍めずしかりしかりしかりけれけれければばば御御おんぞぞぞたまはすたまはすたまわす。。。おとゞおとゞおとどおりおりおりててて舞舞ぶ踏踏とうししし給給たまふふう。。。曉曉あかつき近近ちかくくくなりなりなりてててなむなむなん歸歸かえらららせせせ給給たまひひいけるけるける。。。祿祿ろくどもどもども、、、上上かん達達だち部部め、、、みこみこみこ達達たちにににはははうへうへうえよりよりよりたまはすたまはすたまわす。。。殿殿てん上上じょう人人びとがくそがくそがくそののの人々人々ひとびとにににははは宮宮みやののの御御おん方方かたよりよりより品品しな々々じなににに賜賜たまひひいけりけりけり。。。そのそのそのよさりよさりよさりなむなむなん宮宮みやまかでまかでまかでさせさせさせ奉奉たてまつりりり給給たまひひいけるけるける。。。儀儀ぎ式式しきいといといと心心こころことことことなりなりなり。。。うへうへうえののの女房女房にょうぼうさながらさながらさながら御御おん送送おくり仕仕つこうううまつらまつらまつらせせせ給給たまひひいけるけるける。。。ひさしひさしひさしののの御御おん車車くるまにてにてにて、、、ひさしひさしひさしなきなきなき糸糸いと毛毛げ三三みつつつ、、、びらうげびらうげびろうげのののこがねこがねこがねづくりづくりずくり六六むつつつ、、、たゞたゞただのののびらうげびらうげびろうげ二二に十十じゅう、、、網網あ代代じろ二二ふたつつつ、、、女房女房にょうぼう三三さん十十じゅう人人にん、、、わらはわらはわらわしもしもしもづかへづかへずかえ八八はち人人にんづゝづゝずつ侍侍さぶらふふうににに、、、又又また迎迎むかえのののいだしいだしいだし車車ぐるま十十じゅう二二に、、、ほんぞほんぞほんぞののの人々人々ひとびとのせのせのせてててなむなむなんありありありけるけるける。。。
現代語訳
紙燭をともして、歌などを差し上げる。文台のもとに寄っては、歌を置く時の様子はそれぞれ得意顔だったけれど、例によって、どんなにぎこちなく古めかしかったろうと思いやられるので、むやみに全部を尋ねて書き留めはしない。上の町の人々も上臈とて、詠みぶりは特に優れたことは見えなかったようだが、しるしばかりにと、一つ二つ尋ねて聞いたのである。これは大将の君が下りて、御挿頭の藤を折って参上なさったときの歌だとか。「帝の挿頭にと折った藤の花、及ばぬ枝に袖をかけてしまった」。得意顔なのが憎らしいことよ。帝は「万代かけて匂うはずの花なので、今日も飽かぬ色と見ることだ」。またある人だとか、「君のために折った挿頭は、紫の雲に劣らない花の様子であろうか」。「世の常の色とも見えない、雲居まで立ち上った藤波の花よ」。これがあの腹を立てていた大納言の歌だったろうと見える。一部は聞き違いもあったろうか、このように格別趣深い節もないものばかりだったようだ。
夜が更けるにつれて、御遊びはたいそう趣深い。大将の君が「あな尊」と謡いなさる声は、限りなくすばらしかった。按察大納言も、昔優れていらっしゃったお声の名残なので、今もたいそう堂々として声を合わせなさる。左大臣の七男が童で笙の笛を吹くのが、たいそう珍しかったので、御衣を賜る。大臣は下りて舞踏なさる。明け方近くになって、帝はお帰りになった。禄などは、上達部や親王たちには帝からくださる。殿上人や楽所の人々には、宮の御方から品々に応じてお与えになった。その夜に、宮を退出させ申し上げなさった。儀式はたいそう格別である。帝付きの女房が、そのままお送りにお仕えさせなさった。廂のある御車で、廂のない糸毛の車三つ、檳榔毛の黄金造り六つ、ただの檳榔毛二十、網代二つ、女房三十人、童と下仕えが八人ずつ控えたうえに、また迎えの出し車十二台に、本邸の人々を乗せていた。
意訳
宴では歌が詠まれる。薫は帝の挿頭の藤に寄せて、及ばぬ枝に袖をかけたと詠み、帝は万代匂う花と返す。按察大納言らも詠むが、語り手は格別の歌はなかったと言う。夜更け、薫は「あな尊」を謡い、按察大納言も声を合わせ、夕霧の七男が笙を吹いて禄を賜る。明け方に宴が終わり、その夜、女二の宮は大行列で三条の宮へ移る。
語釈・文法注
文法
- 「すべらぎのかざしにをると藤の花」(すべらぎのかざしにをると藤の花およばぬえだに袖かけてけり)
- 帝の挿頭にと藤の花を折って、及ばぬ枝(女二の宮)に袖をかけた。身に余る結婚を詠む薫の歌。
- 「あなたふと」(あなたふと謠ひ給へる聲ぞ)
- 催馬楽の曲名。「あな尊、今日の尊さ」と祝う歌。
- 「びらうげ」(びらうげのこがねづくり六つ)
- 檳榔毛の車。檳榔の葉で屋根を葺いた高貴な人の車。
解説
薫の「およばぬえだに袖かけてけり」は、身に余る帝の娘との結婚を謙遜する歌である。語り手は「うけばりたるぞにくきや」と、その得意顔を皮肉る。
女二の宮の三条の宮への移転は、豪華な行列で行われる。帝の娘の降嫁にふさわしい華やかさの中で、薫の心は宇治にある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1058–1061頁(コマ240–241)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日