源氏物語 第49帖 宿木(48)
薫の昇進
修法をまた次々と始め加えさせる。中の君がたいそうひどく苦しむので、后の宮(明石の中宮)からもお見舞いがある。こうして三年になったが、匂宮お一人のお志こそおろそかでないものの、世間一般では重々しくも扱われていなかったのを、この折に、あちらでもこちらでもお聞きになって驚いて、お見舞いを申し上げた。中納言の君(薫)は、匂宮が思い騒ぐのにも劣らず、どうなられるだろうと嘆いて心苦しく気がかりに思うが、限りのあるお見舞いだけはするものの、あまり参ることもできず、忍んでご祈祷などをさせていた。実は女二の宮の裳着がちょうどこの頃になって、世間は騒ぎ立てて準備している。万事を帝のお心一つのように急がれるので、御後見のないのがかえってすばらしく見えた。母女御が準備しておかれたことはもとより、作物所や然るべき受領たちなどがそれぞれお仕えすることがたいそう限りない。そのまますぐに薫が通い始めることになっていたので、男方も心づかいする頃だが、例の性分なのでそちらには心も入らず、中の君のことばかりを気の毒にお嘆きになる。二月の初め頃に、直物とかいうことで、薫は権大納言になって右大将を兼ねた。右大臣(夕霧)が左大将でいらしたのを辞した所だった。お礼回りにあちこち歩いて、この二条院にも参った。中の君がたいそう苦しんでいるので、匂宮はこちらにいらっしゃる時だったので、そのまま参った。僧などが控えていて、たいそう不都合な所にと驚いて、匂宮は鮮やかな直衣や下襲などを召して身なりを整え、階を下りて答拝をなさるお二人のご様子はそれぞれたいそうすばらしい。そのまま今宵、右近衛府の人々に禄を与える饗宴を催す。主人の所としてお招きするのを、匂宮は苦しんでいる人がいるのでためらっていらっしゃるようだ。夕霧がなさった例のとおりということで、六条院で行うことになった。
- 1又又また々々また始始はじめめめそへそへそえさせさせさせ給給たまふふう。。。いといといといたういたういとう煩煩わずらひひい給給たまへへえばばば、、、きさいきさいきさいののの宮宮みやよりよりよりももも御御おんとぶらひとぶらひとぶらいありありあり。。。かくかくかくててて三三みとせとせとせににになりなりなりぬれぬれぬれどどど、、、一一ひと所所ところののの御御おん志志こころざしこそこそこそおろかおろかおろかならならならねねね。。。大大おおかたかたかたののの世世よにににはははものものものものしうものしうものしゅうももももてもてもてなしなしなし聞聞きこえええ給給たまははわざりざりざりつるつるつるををを、、、このこのこのをりをりおりぞぞぞ、、、いづこいづこいずこにににもももいづこいづこいずこにににももも聞聞きこししし召召めししし驚驚おどろきききててて御御おんとぶらひとぶらひとぶらいどもどもども聞聞きこえええ給給たまひひいけるけるける。。。中中ちゅう納納な言言ごんののの君君きみははは宮宮みやのののおぼしおぼしおぼし騷騷さわくくくらむらむらんにににももも劣劣おとらららずずず、、、いかにいかにいかにおはせおはせおわせむむんととと歎歎なげきききててて心苦心苦こころぐるしくしくしくうしろめたくうしろめたくうしろめたくおぼさおぼさおぼさるれるれるれどどど、、、限限かぎりあるあるある御御おんとぶらひとぶらひとぶらいばかりばかりばかりこそこそこそあれあれあれ、、、あまりあまりあまりもももえええまうでまうでもうで給給たまははわででで忍忍しのびびびてててぞぞぞ御御おんいのりいのりいのりなどなどなどもももせせせさせさせさせ給給たまひひいけるけるける。。。さるはさるはさるは女女おんな二二にののの宮宮みやののの御御おんもももぎぎぎたゞたゞただこのこのこのごろごろごろににになりなりなりててて世世よののの中中なかひゞきひゞきひびきいとなみいとなみいとなみのゝしるのゝしるののしる。。。よろづよろづよろずのののことことこと帝帝みかどののの御心御心みこころひとつひとつひとつなるなるなるやうやうようにににおはしおはしおわし急急いそげげげばばば、、、御御おん後後うしろ見見みなきなきなきしもしもしもぞぞぞなかなかなかなかなかなかめでたげめでたげめでたげににに見見みえええけるけるける。。。女女にょう御御ごのののしししおきおきおき給給たまへへえるるることことことをををばばばさるさるさるものものものにてにてにて、、、つくもつくもつくもどころどころどころさるべきさるべきさるべきずりやうずりやうずりょうどもどもどもなどなどなどとりどりとりどりとりどりににに仕仕つこうううまつるまつるまつる事事ことどもどもどもいといといと限限かぎりなしなしなし。。。
- 2やがてやがてやがてそのそのその程程ほどににに參參まいりりりそめそめそめ給給たまふふうべきべきべきやうやうようにににありありありけれけれければばば、、、男男おとこがたがたがたももも心心こころづかひづかひずかいししし給給たまふふうころころころなれなれなれどどど、、、例例れいのののことことことなれなれなればばばそなたそなたそなたざまざまざまにににははは心心こころもももいらいらいらででで、、、このこのこの御御おんことことことのみのみのみいとほしういとほしういとおしゅうおぼしおぼしおぼし歎歎なげかかかるるる。。。二二きさ月月らぎのののついついついたちたちたちごろごろごろににに、、、なほしなほしなおしものものものとととかかかいふいふいうことことことににに權權ごん大大だい納納な言言ごんににになりなりなりててて右右う大大だい將將しょうかけかけかけ給給たまひひいつつつ。。。右右みぎのののおほいおほいおおい殿殿との左左ひだりにてにてにておはしおはしおわしけるけるけるががが辭辭じししし給給たまへへえるるる所所ところなりなりなりけりけりけり。。。よろこびよろこびよろこびににに所所ところどころどころどころありきありきありき給給たまひひいててて、、、このこのこの宮宮みやにににももも參參まいりりり給給たまへへえりりり。。。いといといと苦苦くるしうしうしゅうししし給給たまへへえばばば、、、こなたこなたこなたにににおはしますおはしますおわします程程ほどなりなりなりけれけれければばばやがてやがてやがて參參まいりりり給給たまへへえりりり。。。僧僧そうなどなどなどさぶらひさぶらひさぶらいててて、、、いといといとびんなきびんなきびんなきかたかたかたにににととと驚驚おどろききき給給たまひひいててて、、、あざやかあざやかあざやかなるなるなる御御おんなほしなほしなおし、、、御御おんしたしたしたがさねがさねがさねなどなどなど奉奉たてまつりりり、、、ひきひきひきつくろひつくろひつくろいててて、、、おりおりおりてててたふたふとうののの拜拜はいしししたまふたまふたまう御御おん有有あり樣樣さまどもどもどもとりどりとりどりとりどりにににいといといとめでたしめでたしめでたし。。。やがてやがてやがて今今こ宵宵よいつかさつかさつかさののの人人ひとににに祿祿ろくたまふたまふたまう。。。あるじあるじあるじののの所所ところにににとととさうじさうじそうじ奉奉たてまつりりり給給たまふふうををを、、、惱惱なやみみみ給給たまふふう人人ひとににによりよりよりてててぞぞぞおぼしおぼしおぼしたゆたひたゆたひたゆたい給給たまふふうめるめるめる左左ひだりのののおほいおほいおおい殿殿とののののししし給給たまひひいけるけるけるまゝまゝままにににとてとてとて六六ろく條條じょう院院いんにてにてにてなむなむなんありありありけるけるける。。。
現代語訳
修法をまた次々と始め加えさせなさる。中の君がたいそうひどくお苦しみになるので、后の宮からもお見舞いがある。こうして三年になったが、匂宮お一人のお志こそおろそかでないものの、世間一般では重々しくもお扱い申し上げていなかったのを、この折に、あちらでもこちらでもお聞きになって驚いて、お見舞いどもを申し上げなさった。中納言の君は、匂宮が思い騒ぎなさるのにも劣らず、どうなられるだろうと嘆いて、心苦しく気がかりにお思いになるが、限りのあるお見舞いだけはするものの、あまり参上することもおできにならず、忍んでご祈祷などもおさせになった。実は女二の宮の御裳着が、ちょうどこの頃になって、世間は騒ぎ立てて準備している。万事を帝のお心一つのようにお急ぎになるので、御後見のないのが、かえってすばらしく見えた。女御が準備しておかれたことはもとより、作物所や然るべき受領たちなどが、それぞれにお仕えすることどもが、たいそう限りない。
そのまますぐに、その頃に薫が通い始めなさることになっていたので、男方も心づかいなさる頃だが、例の性分なので、そちらには心も入らず、中の君のことばかりを気の毒にお嘆きになる。二月の初め頃に、直物とかいうことで、権大納言になって、右大将を兼ねなさった。右大臣が左大将でいらっしゃったのを、辞しなさった所であった。お礼にあちこちお回りになって、この宮にも参上なさった。中の君がたいそう苦しんでいらっしゃるので、匂宮はこちらにいらっしゃる時だったので、そのまま参上なさった。僧などが控えていて、たいそう不都合な所にと驚きなさって、匂宮は鮮やかな直衣や下襲などをお召しになり、身なりを整えて、階を下りて答拝をなさるお二人のご様子は、それぞれにたいそうすばらしい。そのまま今宵、近衛府の人々に禄をお与えになる。主人の所としてお招き申し上げなさるのを、匂宮は苦しんでいらっしゃる人がいるので、ためらっていらっしゃるようだ。右大臣がなさった例のとおりということで、六条院で行うことになった。
意訳
中の君の苦しみが続き、匂宮は修法を重ね、中宮をはじめ人々が見舞う。薫も心配するが表立って見舞えず、ひそかに祈祷させる。同じ頃、女二の宮の裳着が盛大に準備され、薫の婚儀も迫るが、薫の心は中の君のことでいっぱいである。二月、薫は権大納言兼右大将に昇進し、お礼に二条院を訪れる。匂宮は身なりを整えて答拝し、その夜の饗宴は六条院で行われる。
語釈・文法注
文法
- 「つくもどころ」(つくもどころさるべきずりやうどもなど)
- 作物所。宮中の調度を作る役所。
- 「なほしもの」(なほしものとかいふことに)
- 直物。除目の誤りを正す儀式。この時に追加の任官が行われた。
- 「たふの拜」(おりてたふの拜したまふ)
- 答拝。昇進の礼を受けて返礼の拝をすること。
解説
中の君の出産と女二の宮の裳着が同時に進む。薫の心は自分の婚儀ではなく、中の君の安否に向いている。薫の心がどこにあるかが、はっきりと示される。
薫の昇進と、匂宮との答拝の場面は、二人の貴公子の華やかさを描く。その陰で、中の君は出産の苦しみに耐えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1050–1053頁(コマ236–237)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日