源氏物語 第49帖 宿木(34)
思い乱れる中の君
今度はまたいつものように見苦しくない品々などを作らせて、小袿を織らせ、綾の材料を与えたりした。この薫こそ、匂宮にも劣らず格別に大切に育てられて、度が過ぎるほど誇り高く世を澄まして、上品な心ざまはこの上ないが、亡き八の宮の山住まいを見始めてからは、寂しい所の哀れさは格別だったと心苦しくお思いになって、世間一般のことも思い巡らし、深い情けも身につけたのだった。気の毒な、人を感化することよ。こうして薫は、やはり何とかして安心できる分別のある後見人で終わろうと思うにつけても、心が従わず気にかかって苦しいので、お手紙などを以前より細やかにして、ともすれば忍びきれない様子を見せながら申し上げるので、中の君はたいそうつらいことが加わった身だとお嘆きになる。全く知らない人なら、ああ気違いじみたことと、きまり悪い思いをさせて突き放すのも気楽だろうに、昔から格別な頼みの人として慣れてきて、今さら仲が悪くなるのもかえって人目が悪いだろう、さすがに浅はかでもない薫のお心ばえや有様の哀れを知らないわけではない、かといって心を通わせた顔で応じるのもたいそう気が引ける、どうしたらよいだろうと万事に思い乱れるが、仕える女房たちも、少し物の言いがいのありそうな若い者は皆新しく来た者で、見慣れた人といえばあの山里の古女房たちである。思うことを同じ心で親しく話し合える人のいないままに、亡き姉君を思い出さない時はない。生きていらしたら、この薫もこのような心を添えなさっただろうかとたいそう悲しく、匂宮がつれなくおなりになる嘆きよりも、このことがたいそう苦しく思われる。男君(薫)も、強いて思い悩んで、例のしめやかな夕方にいらした。
- 1今今いまぞぞぞ又又また例例れいのののめやすきめやすきめやすきさまさまさまのののものものものどもどもどもなどなどなどせせせさせさせさせ給給たまひひいててて御御おん小小こ袿袿うちき織織おらららせせせ綾綾あやのののれうれうりょう賜賜たまははわせせせなどなどなどししし給給たまひひいけるけるける。。。このこのこの君君きみしもしもしもぞぞぞ宮宮みやにににももも劣劣おとりりり聞聞きこえええ給給たまははわずずず、、、さまさまさまことことことにににかしづきかしづきかしずきたてたてたてられられられててて、、、かたはかたはかたわなるなるなるまでまでまで心心こころおごりおごりおごりもももししし世世よををを思思おもひひいすましすましすましててて、、、あてあてあてなるなるなる心心こころざまざまざまはははこよなけれこよなけれこよなけれどどど、、、故故こみこみこみこののの御御おん山山やまずみずみずみをををみみみそめそめそめ給給たまひひいしししよりよりよりぞぞぞ、、、寂寂さびしきしきしき所所ところのののあはれさあはれさあわれさはははさまさまさまことことことなりなりなりけりけりけりととと心苦心苦こころぐるしうしうしゅうおぼさおぼさおぼされれれててて、、、なべてなべてなべてののの世世よをををももも思思おもひひいめぐらしめぐらしめぐらし深深ふかきききなさけなさけなさけをををもももならひならひならい給給たまひひいにににけるけるける。。。いとほしいとほしいとおしののの人人ひとならはしならはしならわしやややとととぞぞぞ。。。かくかくかくててて猶猶なおいかでいかでいかでうしろうしろうしろやすくやすくやすくおとなしきおとなしきおとなしき人人ひとにてにてにてやみやみやみなななむむんととと思思おもふふうにににもももしたがはしたがはしたがわずずず、、、心心こころにににかゝりかゝりかかりててて苦苦くるしけれしけれしければばば御御おん文文ふみなどなどなどをををありありありしししよりよりよりはははこまやかこまやかこまやかにてにてにて、、、ともすれともすれともすればばば忍忍しのびびびあまりあまりあまりたるたるたる氣色氣色けしき見見みせせせつゝつゝつつ聞聞きこえええ給給たまふふうををを、、、女女おんな君君ぎみいといといとわびしきわびしきわびしきことことことそひそひそいにににたるたるたる身身みとととおぼしおぼしおぼしなげかなげかなげかるるる。。。
- 2ひとへひとへひとえににに知知しらららぬぬぬ人人ひとならならならばばば、、、あなあなあなものものものぐるほしぐるほしぐるおしととと、、、はしたなめはしたなめはしたなめさしさしさしはなたはなたはなたむむんにににももも安安やすかるかるかるべきべきべきををを、、、昔昔むかしよりよりよりさまさまさまことことことなるなるなるたのもしたのもしたのもし人人びとにににならひならひならいきききててて今今いまさらさらさらににに中中なかあしうあしうあしゅうならならならむむんもももなかなかなかなかなかなか人人ひとめめめあしかるあしかるあしかるべしべしべし、、、さすがさすがさすがににに淺淺あさはかはかはかにににもももあらあらあらぬぬぬ御御おん心心こころばへばへばえありさまありさまありさまののの哀哀あわれををを知知しらららぬぬぬにににはははあらあらあらずずず、、、さりとてさりとてさりとて心心こころかはしかはしかわし顔顔がおにににあひしらはあひしらはあいしらわむむんもももいといといとつゝましくつゝましくつつましく、、、いかゞいかゞいかがはははすすすべからべからべからむむんととと萬萬よろずににに思思おもひひい亂亂みだれれれ給給たまふふうににに、、、さぶらふさぶらふさぶらう人々人々ひとびとももも少少すこしししものものものゝゝのいふかひいふかひいうかいありありありぬぬぬべくべくべく若若わかやかやかやかなるなるなるははは皆皆みなあたらしきあたらしきあたらしき心心こころちちちしししててて、、、見見み給給たまひひいなれなれなれたるたるたる人人ひととてとてとてはははかのかのかの山山やま里里ざとのののふるふるふる女女おんなばらばらばらなりなりなり。。。思思おもふふうことことことをををももも同同おなじじじ心心こころににになつかしうなつかしうなつかしゅういひいひいいあはすあはすあわすべきべきべき人人ひとのののなさなさなさまゝまゝままにににははは、、、故故こ姫姫ひめ君君ぎみををを思思おもひひい出出いででで聞聞きこえええ給給たまははわぬぬぬをりをりおりなしなしなし。。。おはせおはせおわせましかましかましかばばば、、、このこのこの人人ひともももかゝるかゝるかかる心心こころもももそへそへそえ給給たまははわましましましやややととといといといとかなしうかなしうかなしゅう、、、宮宮みやのののつらくつらくつらくなりなりなり給給たまははわむむんなげきなげきなげきよりよりよりもももこのこのこのことことこといといといと苦苦くるしうしうしゅう覺覺おぼゆゆゆ。。。男男おとこ君君ぎみもももしひてしひてしいて思思おもひひいわびわびわびててて例例れいのののまめやかまめやかまめやかなるなるなる夕夕ゆうつつつ方方かたおはしおはしおわしたりたりたり。。。
現代語訳
今度はまた、いつものように見苦しくない品々などを作らせなさって、御小袿を織らせ、綾の材料をお与えになったりした。この君こそ、匂宮にも劣り申し上げず、格別に大切に育てられて、度が過ぎるほど誇り高く、世を思い澄まして、上品な心ざまはこの上ないが、亡き八の宮の山住まいを見始めなさってからは、寂しい所の哀れさは格別だったと心苦しくお思いになって、世間一般のことも思い巡らし、深い情けも身につけなさったのだった。気の毒な、人を感化することよとか。こうして、やはり何とかして安心できる分別のある人で終わろうと思うにつけても、心が従わず気にかかって苦しいので、お手紙などを以前より細やかにして、ともすれば忍びきれない様子を見せながら申し上げなさるので、女君はたいそうつらいことが加わった身だとお嘆きになる。
全く知らない人ならば、ああ気違いじみたことと、きまり悪い思いをさせて突き放すのも気楽だろうに、昔から格別な頼みの人として慣れてきて、今さら仲が悪くなるのも、かえって人目が悪いだろう、さすがに浅はかでもないお心ばえや有様の哀れを知らないわけではない、かといって、心を通わせた顔で応じるのも、たいそう気が引ける、どうしたらよいだろうと、万事に思い乱れなさるが、お仕えする女房たちも、少し物の言いがいのありそうな若い者は皆新しく来た者で、見慣れていらっしゃる人といえば、あの山里の古女房たちである。思うことを同じ心で親しく話し合える人のいないままに、亡き姉君を思い出し申し上げない時はない。生きていらっしゃったら、この人もこのような心を添えなさっただろうかと、たいそう悲しく、匂宮がつれなくおなりになる嘆きよりも、このことがたいそう苦しく思われる。男君も、強いて思い悩んで、例のしめやかな夕方にいらっしゃった。
意訳
薫は、高貴に育ちながら、宇治に通ううちに寂しい暮らしの哀れを知り、細やかな心づかいを身につけた。薫は後見に徹しようとしながら抑えきれず、手紙に思いをにじませる。中の君は、見知らぬ人ならはねつけられるが、長年の恩人を拒むこともできず、心を許すこともできず思い悩む。相談相手もなく、姉が生きていればと思う。思い悩んだ薫が、夕方に訪れる。
語釈・文法注
文法
- 「御小袿」(御小袿織らせ綾のれう賜はせ)
- 小袿。女性の略式の礼装。
- 「人ならはし」(いとほしの人ならはしやとぞ)
- 人を習わせること。宇治の暮らしが薫を変えたことを言う。
- 「あひしらはむ」(心かはし顔にあひしらはむも)
- 応対する、相手をする。
解説
語り手は、薫が宇治に通ったことで人情の機微を知ったと評する。高貴な貴公子が、侘しい暮らしに触れて成長した。その成長が、中の君への細やかな心づかいとなって表れる。
中の君は、匂宮の冷たさよりも、薫の恋の方が苦しいと感じる。信頼する人から寄せられる恋は、拒むことも受け入れることもできない、深い苦しみである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1036–1039頁(コマ229–230)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日