源氏物語 第49帖 宿木(33)
女房たちへの装束
大輔の君という年配で親しい女房のもとに薫は贈り物を送る。「急ごしらえで見苦しいのを、ふさわしく取り繕って」とおっしゃって、中の君の料のものはひそやかだが箱に入れて包みも格別である。中の君にはお見せしないが、以前からこのようなお心づかいはいつものことで見慣れているので、気取って返したりして押し問答するべきでもないので、どうしようなどと思い悩まず、女房たちに配ったりしたので、それぞれ縫い物などをする。若い女房で御前近くに仕える者などを特に装わせるべきだろう。下仕えたちのひどく糊気の落ちていた姿なども、白い袷などで目立たないのがかえって見苦しくなかった。誰がほかに何事もお世話申し上げる人がいようか。匂宮は並々でないお志のほどで、万事を何とかしてとお考えだが、細かな内々のことまではどうしてお思い寄りになろう。この上なく人にかしずかれるばかりで育っていらしたので、世の中の行き届かない寂しいことがどういうものかもご存じないのはもっともである。優雅にそぞろ寒く花の露を愛でて世は過ごすべきものとお思いになっている程度よりは、思う人のためだからこそ、自然と折節につけて実際的なことまで世話して教えなさるのは、めったにない珍しいことのようなので、いやもう、などと非難がましく申し上げる乳母などもいたのだった。童などの身なりのぱっとしない者が折々混じっていたりするのを、中の君はたいそう恥ずかしく、かえって中途半端な住まいだなどと人知れず思うこともないではないところに、ましてこの頃は世に評判の六の君のご様子の華やかさに、一方では匂宮の邸の人がどう見て思うだろうかと、人並みでないことと思い乱れることも加わって嘆かわしいのを、中納言の君はたいそうよく推し量り申し上げるので、疎遠な間柄なら見苦しくくどくどしいに違いない心づかいの様子も、見下すというのではないが、どうして大げさに仕立てた顔をするのも、かえって思いがけなく見咎める人もいるだろうかとお思いになるのだった。
- 1たいふたいふたいふののの君君きみとてとてとて、、、おとなおとなしきおとなおとなしきおとなおとなしき人人ひとのののむつましげむつましげむつましげなるなるなる人人ひとにににつかはすつかはすつかわす。。。「「「とりとりとりあへあへあえぬぬぬさまさまさまののの見見み苦苦ぐるしきしきしきををを、、、つきづきしうつきづきしうつきずきしゅうもてもてもてかくしかくしかくしてててなむなむなん」」」とととのたまひのたまひのたまいててて、、、御御おん料料りょうのののははは忍忍しのびびびやかやかやかなれなれなれどどど箱箱はこにてにてにてつゝみつゝみつつみもももことことことなりなりなり。。。御御ご覽覽らんぜぜぜさせさせさせねねねどどど、、、さきざきさきざきさきざきもももかやうかやうかようなるなるなる御御おん心心こころしらひしらひしらいははは常常つねののの事事ことにてにてにてめめめなれなれなれにににたれたれたればばば、、、氣氣け色色けしきばみばみばみかへしかへしかへしなどなどなどひこじろふひこじろふひこじろうべきべきべきにににもももあらあらあらねねねばばば、、、いかゞいかゞいかがなどなどなどももも思思おもひひい煩煩わずらははわででで人々人々ひとびとにににとりとりとりちらしちらしちらしなどなどなどしししたれたれたればばばおのおのおのおのおのおのさしさしさし縫縫ぬひひいなどなどなどすすす。。。若若わかききき人々人々ひとびとのののおおお前前まえ近近ちこううう仕仕つこうううまつるまつるまつるなどなどなどをををぞぞぞ、、、とりわきとりわきとりわきてててはははつくろひつくろひつくろいたつたつたつべきべきべき。。。しもしもしもづかへづかへずかえどもどもどものののいたういたういとうなえなえなえばみばみばみたりたりたりつるつるつる姿姿すがたどもどもどもなどなどなど、、、白白しろききき袷袷あわせなどなどなどにてにてにてけちえんけちえんけちえんならならならぬぬぬぞぞぞなかなかなかなかなかなかめやすかりめやすかりめやすかりけるけるける。。。誰誰たれかかかははは何何なに事事ことをををももも後後うしろ見見み聞聞きこゆるゆるゆる人人ひとのののあらあらあらむむん。。。宮宮みやはははおろかおろかおろかならならならぬぬぬ御御おん志志こころざしののの程程ほどにてにてにて萬萬よろずをををいかでいかでいかでとととおぼしおぼしおぼしおきておきておきてたれたれたれどどど、、、こまかこまかこまかなるなるなるうちうちうちうちうちうちのののことことことまでまでまではははいかゞいかゞいかがはははおぼしおぼしおぼしよらよらよらむむん。。。かぎりかぎりかぎりもももなくなくなく人人ひとにににのみのみのみかしづかかしづかかしずかれれれてててならはせならはせならわせたまへたまへたまえれれればばば、、、世世よののの中中なかのののうちうちうちあはあはあわずずずさびしきさびしきさびしきことことこといかなるいかなるいかなるものものものとととももも知知しりりり給給たまははわぬぬぬ、、、ことわりことわりことわりなりなりなり。。。
- 2えんえんえんにににそゞろそゞろそぞろさむくさむくさむく花花はなののの露露つゆををを翫翫もてあそびびびててて世世よはははすぐすすぐすすぐすべきべきべきものものものとととおぼしおぼしおぼしたるたるたる程程ほどよりよりよりははは、、、思思おもほすほすおす人人ひとのののためためためなれなれなればばば、、、おのづからおのづからおのずからをりをりおりふしふしおりふしにににつけつけつけつゝつゝつつまめやかまめやかまめやかなるなるなることことことまでまでまでもももあつかひあつかひあつかい知知しらららせせせ給給たまふふうこそこそこそ有有あり難難がたくくくめづらかめづらかめずらかなるなるなることことことなななめれめれめればばば、、、いでやいでやいでやなどなどなどそしらはしげそしらはしげそしらわしげににに聞聞きこゆるゆるゆる御御おんめのとめのとめのとなどなどなどもももありありありけりけりけり。。。わらはべわらはべわらわべなどなどなどのののなりなりなりあざやかあざやかあざやかならならならぬぬぬ、、、をりをりをりをりおりおりうちうちうちまじりまじりまじりなどなどなどしししたるたるたるををを女女おんな君君ぎみはははいといといとはづかしうはづかしうはずかしゅう、、、なかなかなかなかなかなかなるなるなる住住すまひまひまいにににもももあるあるあるかなかなかななどなどなど人人ひと知知しれれれずずずはははおぼすおぼすおぼすことことことなきなきなきにににしもしもしもあらあらあらぬぬぬににに、、、ましてましてましてこのこのこの頃頃ころははは世世よににに響響ひびきききたるたるたる御御おん有有あり樣樣さまののの華華はなやかさやかさやかさににに、、、かつかつかつははは宮宮みやののの內內うちののの人人ひとののの見見み思思おもふふうらむらむらんとととももも人人ひとげげげなきなきなきことことことゝゝとおぼしおぼしおぼし亂亂みだるゝるゝるることことこともももそひそひそいててて歎歎なげかしきかしきかしきををを、、、中中ちゅう納納な言言ごんののの君君きみはははいといといとよくよくよくおしはかりおしはかりおしはかり聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、うとからうとからうとからむむんあたりあたりあたりにににははは見見み苦苦ぐるしうしうしゅうくだくだしかりくだくだしかりくだくだしかりぬぬぬべきべきべき心心こころしらひしらひしらいのののさまさまさまももも、、、あなづるあなづるあなずるとととはははなけれなけれなけれどどど何何なにかかかはははことごとしくことごとしくことごとしくしたてしたてしたて顏顏がおならならならむむんももも、、、なかなかなかなかなかなか覺覺おぼえええなくなくなく見見み咎咎とがむるむるむる人人ひとやややあらあらあらむむんとととおぼすおぼすおぼすなりなりなりけりけりけり。。。
現代語訳
大輔の君といって、年配で親しくしている女房にお送りになる。「急ごしらえで見苦しいのを、ふさわしく取り繕って」とおっしゃって、中の君の御料のものはひそやかだが、箱に入れて包みも格別である。中の君にはお見せしないが、以前からもこのようなお心づかいはいつものことで見慣れているので、気取って返したりして押し問答するべきでもないので、どうしようなどと思い悩まず、女房たちに配ったりしたので、それぞれ縫い物などをする。若い女房で御前近くにお仕えする者などを、特に装わせるべきだろう。下仕えたちのひどく糊気の落ちていた姿なども、白い袷などで目立たないのが、かえって見苦しくなかった。誰がほかに何事もお世話申し上げる人がいようか。匂宮は並々でないお志のほどで、万事を何とかしてとお考えおきになっているが、細かな内々のことまでは、どうしてお思い寄りになろう。この上なく人にかしずかれるばかりでお育ちになったので、世の中の行き届かない寂しいことがどういうものかもご存じないのは、もっともである。
優雅にそぞろ寒く、花の露を愛でて世は過ごすべきものとお思いになっている程度よりは、お思いになる人のためなので、自然と折節につけて、実際的なことまでもお世話してお教えになるのは、めったになく珍しいことのようなので、いやもう、などと非難がましく申し上げる御乳母などもいたのだった。童などの身なりのぱっとしない者が、折々混じったりしているのを、女君はたいそう恥ずかしく、かえって中途半端な住まいであるよなどと、人知れずお思いになることもないではないところに、ましてこの頃は世に評判の六の君のご様子の華やかさに、一方では匂宮の邸の人がどう見て思っているだろうかと、人並みでないことと思い乱れなさることも加わって嘆かわしいのを、中納言の君はたいそうよく推し量り申し上げなさるので、疎遠な間柄では見苦しくくどくどしいに違いない心づかいの様子も、見下すというのではないが、どうして大げさに仕立てた顔をするのも、かえって思いがけなく見咎める人もいるだろうかとお思いになるのだった。
意訳
薫は年配の女房の大輔の君に装束を送り、中の君の分は特に丁寧に包む。中の君は慣れたことなので素直に受け取り、女房たちに分け与える。匂宮は大切に育てられたので、細かな暮らし向きには気が回らない。中の君は六の君の華やかさに比べて自分の住まいの見劣りを恥じていたが、薫はそれをよく察して、目立たないように心配りをしていたのである。
語釈・文法注
文法
- 「ひこじろふ」(気色ばみかへしなどひこじろふべきにもあらねば)
- 引きこじろふ。押し問答する、遠慮して受け取らない。
- 「けちえんならぬ」(白き袷などにてけちえんならぬぞ)
- 目立たない。派手でない。
- 「したて顏」(何かはことごとしくしたて顏ならむも)
- 仕立てたような顔。わざとらしく取り繕うこと。
解説
匂宮は高貴に育ったために、暮らしの細かなことに気が回らない。薫は宇治の姉妹を長年世話してきたので、中の君の女房たちの衣の古びにまで気づく。二人の男性の違いが、生活の細部を通して描かれる。
薫の心づかいは目立たないように配慮されている。中の君の面目を保つための思いやりであり、同時に匂宮に気づかれないための用心でもある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1036–1037頁(コマ229)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日