源氏物語 第49帖 宿木(32)
下紐の歌
ただたいそうきまじめで言葉少なく、平凡な手紙などが、わざわざではないが物に取り混ぜてあるのを、妙だ、やはりこうばかりではあるまいと疑われるので、今日はますます穏やかでなく思われるのはもっともである。あの薫の様子も、心ある女なら哀れと思うに違いないものなのに、どうして格別に突き放すことがあろう、たいそうお似合いの間柄なので、互いに思い合っているだろうと思いやるのが、つらく腹立たしく悔しかった。やはりたいそう穏やかでなかったので、その日も匂宮は出かけられない。六条院(六の君)にはお手紙を二度三度差し上げるのを、いつの間にそんなに積もる言葉があるのかとつぶやく老女房たちもいる。中納言の君(薫)は、匂宮がこうして二条院に籠っていらっしゃると聞くにつけても不快に思われるが、どうしようもない、自分の心が愚かしく悪いのだ、安心できる後見をと思い始めた方のことを、こうも思ってよいものかと、強いて思い返して、そうはいっても匂宮は中の君をお見捨てにならないようだとうれしくもあり、女房たちの様子などが、慕わしい割には糊気の落ちた衣を着ていたのを思いやって、母宮の御方に参って、「よい出来合いの物などがございますか。使うことがありまして」と申し上げると、母宮が「例の来月の法事の料として白い物などはあるでしょう。染めた物などは今は特に置いていないので、急いで作らせましょう」とおっしゃるので、「いや大げさな用でもございません。ございますのに従って」と言って、御匣殿などに尋ねさせて、女の装束を何揃いも、清らかな細長なども、ただあるのに従って、無地の絹や綾などを取り揃える。中の君ご自身の料と思われるものには、ご自分の料にあった紅の砧で打った艶の並々でないものに白い綾などを何枚も重ねたが、袴の具がなかったのに、どうしたことだったのか、裳の腰紐が一つあったのを引き結んで添えて、薫は、結んだ契りの異なる下紐を、ただ一筋に恨みなどしましょうかと詠む。
- 1唯唯ただいといといとすくよかすくよかすくよかにににことことことずくなずくなずくなにてにてにてなほなほしきなほなほしきなおなおしきなどなどなどぞぞぞわざとわざとわざとしししなけれなけれなけれどどど物物ものにににとりとりとりまぜまぜまぜなどなどなどしししてててもももあるあるあるををを、、、あやしあやしあやし猶猶なおいといといとかくかくかくのみのみのみはははあらあらあらじじじかしかしかしとととうたがはうたがはうたがわるゝるゝるるににに、、、いとゞいとゞいとどけふけふきょうはははやすからやすからやすからずずずおぼさおぼさおぼさるるるるるることわりことわりことわりなりなりなりかしかしかし。。。かのかのかの人人ひとのののけしきけしきけしきももも心心こころあらあらあらむむん女女おんなののの哀哀あわれととと思思おもひひいぬぬぬべきべきべきををを、、、などなどなどてててかかかはははことことことののの外外ほかにににはははさしさしさしはなたはなたはなたむむん、、、いといといとよきよきよきあはひあはひあわいなれなれなればばばかたみかたみかたみにににぞぞぞ思思おもひひいかはすかはすかわすらむらむらんかしかしかしととと思思おもひひいやるやるやるぞぞぞわびしくわびしくわびしくはらだゝしくはらだゝしくはらだたしくねたかりねたかりねたかりけるけるける。。。猶猶なおいといといとやすからやすからやすからざりざりざりけれけれければばば、、、そのそのその日日ひもももえええいでいでいで給給たまははわずずず。。。六六ろく條條じょう院院いんにににははは御御おん文文ふみをををぞぞぞ二二ふたたびたびたび三三みたびたびたび奉奉たてまつれれれ給給たまふふうををを、、、いついついつのののほどほどほどにににつもるつもるつもる御御おん言言ことののの葉葉はならならならむむんとととつぶやくつぶやくつぶやくおいおいおい人人びとどもどもどもゝゝもありありあり。。。中中ちゅう納納な言言ごんののの君君きみははは宮宮みやのののかくかくかく籠籠こもりりりおはするおはするおわするををを聞聞きくくくにににしもしもしも心心こころやましくやましくやましく覺覺おぼゆれゆれゆれどどど、、、わりなしわりなしわりなしややや、、、わがわがわが心心こころのののをこがましうをこがましうおこがましゅうあしきあしきあしきぞぞぞかしかしかし、、、うしろうしろうしろやすくやすくやすくととと思思おもひひいそめそめそめてててしししあたりあたりあたりのののことことことをををかくかくかくははは思思おもふふうべしべしべしやややととと、、、しひてしひてしいてぞぞぞ思思おもひひい返返かえしししててて、、、さささはははいへいへいえどどどえええおぼしおぼしおぼし捨捨すてててざざざめりめりめりかしかしかしととと嬉嬉うれしくしくしくもももありありあり、、、人々人々ひとびとのののけはひけはひけはいなどなどなどのののなつかしきなつかしきなつかしきほどほどほどににに、、、なえなえなえばみばみばみたたためりめりめりしししををを思思おもひひいやりやりやり給給たまひひいててて、、、
- 2母母はは宮宮みやののの御御おん方方かたににに參參まいりりり給給たまひひいててて、、、「「「よろしきよろしきよろしきまうけまうけもうけのののものものものどもどもどもやややさぶらふさぶらふさぶらう。。。つかふつかふつかうべきべきべきことことことなむなむなん」」」ととと申申もうしししたまへたまへたまえばばば、、、「「「例例れいのののたゝたゝたたむむん月月つきののの法法ほう事事じのののれうれうりょうににに白白しろきききものものものどもどもどもなどなどなどやややあらあらあらむむん染染そめめめたるたるたるなどなどなどははは今今いまはははわざとわざとわざともももえええおかおかおかぬぬぬをををいそぎいそぎいそぎてててこそこそこそせせせさせさせさせめめめ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、「「「なになになにかかかことごとしきことごとしきことごとしきようようようにににももも侍侍はべらららずずず、、、侍侍さぶらははわむむんにににしたがひしたがひしたがいててて」」」とてとてとて、、、みみみくしげくしげくしげ殿殿どのなどなどなどににに問問とはははせせせたまひたまひたまいててて、、、女女おんなのののさうぞくさうぞくそうぞくどもどもどもあまたあまたあまたくだりくだりくだりににに淸淸きよけなるけなるけなる細細ほそ長長ながどもどもどもゝゝも、、、たゞたゞただあるあるあるにににしたがひしたがひしたがいてててたゞたゞただなるなるなる絹絹きぬ綾綾あやなどなどなどとりとりとりぐしぐしぐしたまふたまふたまう。。。みづからみづからみずからののの御御おんれうれうりょうとととおぼしきおぼしきおぼしきにににははは、、、わがわがわが御御おん料料りょうにににありありありけるけるけるくれなゐくれなゐくれないのののうちうちうちめめめなべてなべてなべてならならならぬぬぬににに白白しろききき綾綾あやどもどもどもなどなどなどあまたあまたあまたかさねかさねかさね給給たまへへえるるるににに、、、袴袴はかまのののぐぐぐなかりなかりなかりけるけるけるにににいかにいかにいかにしししたるたるたるにににかかかありありありけむけむけん、、、こしこしこしのののひとつひとつひとつありありありけるけるけるををを引引ひききき結結むすびびびくはへくはへくわえててて、、、「「「むすびむすびむすびけるけるける契契ちぎりことことことなるなるなる下下した紐紐ひもをををたゞたゞただひとひとひとすぢすぢすじにににうらみうらみうらみやややはははするするする」」」。。。
現代語訳
ただたいそうきまじめで言葉少なく、平凡な手紙などが、わざわざではないが物に取り混ぜなどしてあるのを、妙だ、やはりたいそうこうばかりではあるまいと疑われるにつけ、ますます今日は穏やかでなくお思いになるのは、もっともであるよ。あの薫の様子も、心ある女なら哀れと思うに違いないものなのに、どうして格別に突き放すことがあろう、たいそうお似合いの間柄なので、互いに思い合っているだろうと思いやるのが、つらく腹立たしく悔しかった。やはりたいそう穏やかでなかったので、その日も匂宮はお出かけになれない。六条院にはお手紙を二度三度差し上げなさるのを、いつの間に積もるお言葉なのだろうとつぶやく老女房たちもいる。中納言の君は、匂宮がこうして籠っていらっしゃるのを聞くにつけても不快に思われるが、どうしようもないことよ、自分の心が愚かしく悪いのだ、安心できる後見をと思い始めた方のことを、こうも思ってよいものかと、強いて思い返して、そうはいっても、匂宮は中の君をお見捨てになれないようだとうれしくもあり、女房たちの様子などが、慕わしい割には糊気の落ちた衣を着ていたようだったのを思いやりなさって、
母宮の御方に参上なさって、「よい出来合いの物どもなどがございますか。使うことがありまして」と申し上げなさると、母宮が「例の来月の法事の料として、白い物などはあるでしょう。染めた物などは、今は特に置いていないので、急いで作らせましょう」とおっしゃるので、「いや、大げさな用でもございません。ございますのに従って」と言って、御匣殿などに尋ねさせなさって、女の装束を何揃いも、清らかな細長なども、ただあるのに従って、無地の絹や綾などを取り揃えなさる。中の君ご自身の料と思われるものには、ご自分の料にあった紅の砧で打った艶の並々でないものに、白い綾などを何枚も重ねなさったが、袴の具がなかったのに、どうしたことだったのだろうか、裳の腰紐が一つあったのを引き結んで添えて、「結んだ契りの異なる下紐を、ただ一筋に恨みなどいたしましょうか」。
意訳
匂宮が見つけた薫の手紙はきまじめなものばかりだが、匂宮はかえって疑いを深め、二人は思い合っているのだろうと嫉妬して二条院に留まり続ける。薫は匂宮が中の君のもとにいると聞いて不快に思うが、自分の心を戒める。中の君の女房たちの衣が古びていたのを思い、母宮のもとで装束を揃えさせ、中の君には紅の衣と白い綾を贈る。腰紐に、契りの異なる下紐を恨みはしないと歌を結びつける。
語釈・文法注
文法
- 「みくしげ殿」(みくしげ殿などに問はせたまひて)
- 御匣殿。衣服の調達を担う部署、またその女官。
- 「くれなゐのうちめ」(くれなゐのうちめなべてならぬに)
- 紅の打ち目。砧で打って艶を出した紅の衣。
- 「むすびける契ことなる下紐を」(むすびける契ことなる下紐を)
- 結んだ契りの相手が異なる下紐。中の君が匂宮と結ばれたことを恨まないという薫の歌。
解説
薫は、中の君を思う心を抑え、後見として女房たちの装束まで気を配る。その細やかな心づかいは、薫の誠実さの表れであると同時に、中の君への思いの表れでもある。
腰紐に結んだ歌は、恨まないと言いながら、契りが異なることへの未練を込めている。薫の贈り物は実用的でありながら、言葉の上では恋の嘆きを伝えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1034–1037頁(コマ228–229)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日