源氏物語 第49帖 宿木(28)
後朝めいた文
また一時の自分の心の乱れに任せて無理な心を使った後では、気安くもいられないだろうし、無理に忍び歩く間も心を尽くし、女の方もあれこれ思い乱れるだろうなどと賢く思うにもかかわらず、こらえきれず今この間も恋しいのは困ったことだった。もう会わずにはいられないと思われるのも、返す返すも意地の悪い心である。昔より少し痩せて上品で可憐だった気配などは、離れているとも思えず、身に添っている心地がして、ほかのことは全く思われなくなった。宇治にたいそう行きたそうにしているようなので、そのように連れて行って差し上げようかなどと思うが、まさか匂宮がお許しになるだろうか、かといって忍んでは、またたいそう不都合だろう、どうしたら人目に見苦しくなく思う心がかなうだろうなどと、心もうわの空で物思いにふけって臥せっている。まだたいそう朝早くに薫からお手紙がある。いつものように表向きはたいそうはっきりした立て文で、薫は、むなしく分けてきた道の露が多いので、昔が思い出される秋の空ですと詠み、「ご様子の情けなさは、道理を知らないつらさばかりで、申し上げようもなく」とある。お返事がないのも、女房たちがいつもと違うと見咎めるだろうから、たいそう苦しいので、中の君は「承りました。たいそう気分が悪くてお返事申し上げられません」とだけ書いたのを、薫はあまりに言葉少ないことだと物足りなくて、美しかったご様子ばかりが恋しく思い出される。少し世の中を知っていらっしゃるせいか、あれほど呆れるほどひどいと思っていらしたものの、ひたすら気詰まりにするのではなく、たいそう才気があって気後れするほどの様子も加わり、さすがに優しく言いなだめて帰してくださったお心ばえなどを思い出すにつけても、悔しくも悲しくもさまざまに心にかかってつらい。何事も昔より多くまさって思い出される。
- 1又又またたちまちたちまちたちまちののの我我わががが心心こころ亂亂みだれれれにににまかせまかせまかせてててあながちあながちあながちなるなるなる心心こころをををつかひつかひつかいててて後後のち心心こころ安安やすくくくしもしもしもえええあらあらあらざらざらざらむむんものものものからからから、、、わりなくわりなくわりなく忍忍しのびびびありかありかありかむむん程程ほどももも心心こころづくしづくしずくしににに、、、女女おんなのののかたがたかたがたかたがたおぼしおぼしおぼし亂亂みだれれれむむんことことことよよよなどなどなどさかしくさかしくさかしく思思おもふふうにににせかせかせかれれれずずず今今いまのののまままももも戀戀こいしきしきしきぞぞぞわりなかりわりなかりわりなかりけるけるける。。。更更さらににに見見みででではははえええあるあるあるまじくまじくまじく覺覺おぼえええ給給たまふふうもももかへすがへすかへすがへすかえすがえすあやにくあやにくあやにくなるなるなる心心こころなりなりなりややや。。。昔昔むかしよりよりよりははは少少すこししし細細ほそやぎやぎやぎてててあてあてあてにににらうたかりらうたかりろうたかりつるつるつるけはひけはひけはいなどなどなどははは、、、たちたちたちはなれはなれはなれたりたりたりとととももも覺覺おぼえええずずず、、、身身みにににそひそひそいたるたるたる心心こころちちちしししててて更更さらにににことことことごとごとごとももも覺覺おぼえええずずずなりなりなりにににたりたりたり。。。宇宇う治治じにににいといといと渡渡わたらららまほしげまほしげまほしげにににおぼいおぼいおぼい給給たまふふうめるめるめるをををさささもももややや渡渡わたししし聞聞きこえええてててましましましなどなどなど思思おもへへえどどど、、、まさにまさにまさに宮宮みやははは許許ゆるししし給給たまひひいてててむむんややや、、、さりとてさりとてさりとて忍忍しのびびびてててはははたたたいといといとびんなからびんなからびんなからむむん、、、いかさまいかさまいかさまにににしししてててかかかははは人人ひと目目め見見み苦苦ぐるしからしからしからででで思思おもふふう心心こころののの行行ゆくくくべきべきべきなどなどなど、、、心心こころもももあくがれあくがれあくがれてててながめながめながめふしふしふし給給たまへへえりりり。。。まだまだまだいといといと深深ふかきききあしたあしたあしたににに御御おん文文ふみありありあり。。。例例れいのののうはべうはべうわべはははいといといとけざやかけざやかけざやかなるなるなるたてたてたてぶみぶみぶみにてにてにて、、、「「「いたづらいたづらいたずらにににわけわけわけつるつるつるみちみちみちののの露露つゆしげみしげみしげみむかしむかしむかしおぼゆるおぼゆるおぼゆる秋秋あきののの空空そらかなかなかな。。。御御おんけしきけしきけしきののの心心こころうさうさうさはははことわりことわりことわり知知しらららぬぬぬつらさつらさつらさのみのみのみなむなむなん聞聞きこえええさせさせさせむむんかたかたかたなくなくなく」」」とととありありあり。。。
- 2御御おんかへしかへしかへしなからなからなからむむんももも人人ひとののの例例れいならならならずずず見見み咎咎とがむむむべきべきべきをををいといといと苦苦くるしけれしけれしければばば「「「うけたまはりうけたまはりうけたまわりぬぬぬ。。。いといといとなやましうなやましうなやましゅうてててえええ聞聞きこえええさせさせさせずずずとととばかりばかりばかり書書かききき給給たまへへえるるるををを、、、あまりあまりあまりことことことずくなずくなずくなゝるゝるなるかなかなかなとととさうざうしくさうざうしくそうぞうしくててて、、、をかしかりをかしかりおかしかりつるつるつる御御おんけはひけはひけはいのみのみのみ戀戀こいしうしうしゅう思思おもひひい出出いでででらるらるらる。。。少少すこししし世世よののの中中なかをををももも知知しりりり給給たまへへえるるるけけけにににややや、、、さばかりさばかりさばかりあさましうあさましうあさましゅうわりなしわりなしわりなしとととははは思思おもひひい給給たまへへえりりりつるつるつるものものものからからから、、、ひたぶるひたぶるひたぶるにににいぶせくいぶせくいぶせくなどなどなどはははあらあらあらでででいといといとらうらうしくらうらうしくろうろうしく恥恥はずかしげしげしげなるなるなる氣色氣色けしきもももそひそひそいててて、、、さすがさすがさすがににになつかしうなつかしうなつかしゅういひいひいいこしらへこしらへこしらえなどなどなどしししててていだしいだしいだし給給たまへへえるるるほどほどほどののの御御おん心心こころばへばへばえなどなどなどををを思思おもひひい出出いづるづるずるももも妬妬ねとうううももも悲悲かなしうしうしゅうもももさまざまさまざまさまざまににに心心こころにににかゝりかゝりかかりてててわびしくわびしくわびしくおぼゆおぼゆおぼゆ。。。何何なに事事こともももいにしへいにしへいにしえにににはははいといといと多多おおくくくまさりまさりまさりててて思思おもひひい出出いでででらるらるらる。。。
現代語訳
また一時の自分の心の乱れに任せて、無理な心を使った後では、気安くもいられないだろうものの、無理に忍び歩く間も心を尽くし、女の方もあれこれ思い乱れなさるだろうことよなどと、賢く思うにもかかわらず、こらえきれず、今この間も恋しいのは困ったことであった。もう会わずにはいられないと思われなさるのも、返す返すも意地の悪い心であるよ。昔より少し痩せて、上品で可憐だった気配などは、離れているとも思われず、身に添っている心地がして、ほかのことは全く思われなくなってしまった。宇治にたいそう行きたそうにお思いになっているようなので、そのようにお連れ申し上げようかなどと思うが、まさか匂宮はお許しになるだろうか、かといって忍んでは、またたいそう不都合だろう、どのようにしたら人目に見苦しくなく、思う心がかなうだろうかなどと、心もうわの空で物思いにふけって臥せっていらっしゃる。まだたいそう朝早くにお手紙がある。いつものように表向きはたいそうはっきりした立て文で、「むなしく分けてきた道の露が多いので、昔が思い出される秋の空です。ご様子の情けなさは、道理を知らないつらさばかりで、申し上げようもなく」とある。
お返事がないのも、女房たちがいつもと違うと見咎めるだろうから、たいそう苦しいので、中の君は「承りました。たいそう気分が悪くて、お返事申し上げられません」とだけお書きになったのを、薫はあまりに言葉少ないことだと物足りなくて、美しかったご様子ばかりが恋しく思い出される。少し世の中を知っていらっしゃるせいか、あれほど呆れるほどひどいとは思っていらっしゃったものの、ひたすら気詰まりにするのではなく、たいそう才気があって気後れするほどの様子も加わって、さすがに優しく言いなだめて、帰してくださったお心ばえなどを思い出すにつけても、悔しくも悲しくも、さまざまに心にかかってつらく思われる。何事も昔よりは、たいそう多くまさって思い出される。
意訳
薫は、無理な恋は互いを苦しめると分かっていながら、中の君が恋しくてたまらない。中の君の気配が身に添っているようで、ほかのことは考えられない。宇治に連れて行こうかと思うが、匂宮の許しは得られまいと悩む。早朝、薫は表向きはまじめな立て文で歌を送り、中の君は短い返事を書く。薫は、中の君が自分を責めながらも優しくなだめて帰してくれたことを思い、悔しく悲しい。
語釈・文法注
文法
- 「あやにくなる心」(かへすがへすあやにくなる心なりや)
- 意地の悪い、思うようにならない心。
- 「たてぶみ」(いとけざやかなるたてぶみにて)
- 立て文。礼紙で縦長に包んだ正式な手紙。恋文ではないふりをする。
- 「いたづらにわけつるみちの露しげみ」(いたづらにわけつるみちの露しげみ)
- むなしく分けてきた道の露。思いを遂げずに帰った薫の嘆き。
解説
薫は理性では自制しながら、心は中の君への恋に支配されていく。「更に見ではえあるまじく」という思いは、かつて大君に抱いた思いと同じ激しさを持つ。
中の君は、薫を責めながらも優しくなだめて帰した。その大人びた対応が、かえって薫の恋心を深める。薫は中の君の中に、大君以上の魅力を見出し始めている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1030–1033頁(コマ226–227)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日