源氏物語 第49帖 宿木(22)
按察の君との朝
本当に自分でもよいと思う娘を持っていたら、この匂宮を差し置いて、帝にさえ差し上げはしないだろうと思うにつけ、誰もかれも匂宮に差し上げようと志していた娘は、やはり源中納言にこそと、それぞれに言い並べるそうなのは、自分の評判も悪くないのだろう、とはいえひどく世慣れず古風な者なのになどと得意にもなる。帝のご意向が本当におありだとしたら、こうばかり気が進まないならどうしよう、名誉なことではあってもどうだろう、どうだろうか、亡き大君にたいそうよく似ていらしたらうれしいだろうと思い寄るのは、さすがに無縁ではいられない心なのだろう。いつものように寝覚めがちの所在なさなので、按察の君という、人よりは少し寵愛している女房の局にいらして、その夜は明かした。夜が明け過ぎても人が咎めるはずもないのに、苦しげに急いで起きるのを、按察の君はただならず思うのだろう。按察の君は、渡るのを世に許されない関川を見慣れ始めた浮き名こそ惜しいことと詠む。薫は気の毒なので、深くはないと上辺は見えても、関川の下の流れは絶えるものではないと返す。深いとおっしゃってさえ頼りないのに、上辺の浅さはますます不快に思われるだろう。薫は妻戸を押し開けて「本当はこの空をご覧なさい。どうしてこれを知らぬ顔で明かせましょう。風流な人のまねではなく、ますます明かしにくくなっていく夜々の寝覚めには、この世も来世も思いやられて哀れなのです」などと言い紛らわして出ていく。特に面白いことを言い尽くすわけではないが、様子の優美さのせいだろうか、情けない人とは思われない。かりそめの戯れ言を言い始めた女房たちは、近くでなりともお見かけしたいとばかり思うのだろうか、強いて出家なさった母宮の御方に縁を頼って参り集まって仕えるのも、哀れなことが身分に応じて多いだろう。
- 1げにげにげに我我わにてにてにてもももよしよしよしととと思思おもふふうをんなをんなおんなごごごをををもたもたもたらららましかましかましかばばば、、、このこのこの宮宮みやをををおきおきおき奉奉たてまつりりりてててうちうちうちにににだにだにだにえええ參參まいらせらせらせざらざらざらましましましととと思思おもふふうににに、、、誰誰たれももも誰誰たれももも宮宮みやににに奉奉たてまつらららむむんととと心心こころざしざしざし給給たまへへえるるるむすめむすめむすめははは猶猶なお源源げん中中ちゅう納納な言言ごんにににこそこそこそととと、、、とりどりとりどりとりどりにににいひいひいいならぶならぶならぶなるなるなるこそこそこそ我我わがががおぼえおぼえおぼえののの口口くち惜惜おしくしくしくはははあらあらあらぬぬぬなななめれめれめれ、、、さるはさるはさるはいといといとあまりあまりあまり世世よづかづかずかずずずふるめいふるめいふるめいたるたるたるものものものをををなどなどなど心心こころおごりおごりおごりもももせせせらるらるらる。。。うちうちうちののの御御おんけしきけしきけしきあるあるあることことこと誠誠まことにににおぼしおぼしおぼしたらたらたらむむんににに、、、かくかくかくのみのみのみものものものうくうくうく覺覺おぼえええばばばいかゞいかゞいかがすすすべからべからべからむむん、、、おもだゝしきおもだゝしきおもだたしき事事ことにににはははありありありともともともいかゞいかゞいかがはははあらあらあらむむん、、、いかにいかにいかにぞぞぞ故故こ君君ぎみにににいといといとよくよくよく似似に給給たまへへえらららむむん時時ときににに嬉嬉うれしからしからしからむむんかしかしかしととと思思おもひひいよらよらよらるゝるゝるるはははさすがさすがさすがにににえええもてもてもてはなるはなるはなるまじきまじきまじき心心こころなななめりめりめりかしかしかし。。。例例れいのののねねねざめざめざめがちがちがちなるなるなるつれづれつれづれつれずれなれなれなればばば、、、あぜちあぜちあぜちののの君君きみとてとてとて人人ひとよりよりよりははは少少すこししし思思おもひひいましましまし給給たまへへえるるるがががつぼねつぼねつぼねにににおはしおはしおわしててて、、、そのそのその夜夜よははは明明あかししし給給たまひひいつつつ。。。明明あけけけ過過すぎぎぎたらたらたらむむんををを人人ひとののの咎咎とがむむむべきべきべきにににもももあらあらあらぬぬぬににに、、、苦苦くるしげしげしげににに急急いそぎぎぎおきおきおき給給たまふふうををを、、、たゞたゞただならならならずずず思思おもふふうべかべかべかめりめりめり。。。「「「うちうちうちわたしわたしわたし世世よにににゆるしゆるしゆるしなきなきなき關關せき川川かわをををみなれみなれみなれそめそめそめけむけむけん名名なこそこそこそをしけれをしけれおしけれ」」」。。。いとほしけれいとほしけれいとおしければばば、、、「「「深深ふかからからからずずずうへうへうえははは見見みゆれゆれゆれどどどせきせきせき川川かわのののしたしたしたのののかよひかよひかよいはははたゆるたゆるたゆるものものものかかかははは」」」。。。
- 2深深ふかしししとととのたまはのたまはのたまわむむんにてにてにてだにだにだにたのもしげたのもしげたのもしげなきなきなきををを、、、このこのこのうへうへうえののの淺淺あささささはははいとゞいとゞいとど心心こころやましうやましうやましゅう覺覺おぼゆゆゆらむらむらんかしかしかし。。。妻妻つま戶戶どををを押押おしししあけあけあけててて「「「まことまことまことはははこのこのこのそらそらそらををを見見み給給たまへへえ。。。いかでいかでいかでかかかこれこれこれををを知知しらららずずず顏顏がおにてにてにてはははあかさあかさあかさむむんとととよよよ。。。えんえんえんなるなるなる人人ひとまねまねまねにににはははあらあらあらででで、、、いとゞいとゞいとど明明あかしししがたくがたくがたくなりなりなり行行ゆくくくよなよなよなよなよなよなのののねねねざめざめざめにににはははこのこのこの世世よ後後のちののの世世よまでまでまでなむなむなん思思おもひひいやらやらやられれれててて哀哀あわれなるなるなる」」」などなどなどいひいひいいまぎらはしまぎらはしまぎらわしてててぞぞぞ出出いででで給給たまふふう。。。殊殊ことにににをかしきをかしきおかしきことことことのののかずかずかずををを盡盡つくさささねねねどどどさまさまさまのののなまめかしきなまめかしきなまめかしき見見みなしなしなしにににやややあらあらあらむむん、、、なさけなさけなさけなくなくなくなどなどなどははは人人ひとににに思思おもははわれれれ給給たまははわずずず。。。かりそめかりそめかりそめのののたはぶれたはぶれたわぶれごとごとごとをををもももいひいひいいそめそめそめ給給たまへへえるるる人人ひとののの、、、けけけぢかくぢかくじかくてててだにだにだに見見み奉奉たてまつらららばやばやばやとととのみのみのみ思思おもひひい聞聞きこゆるゆるゆるにににややや。。。あながちあながちあながちににに世世よををを背背そむききき給給たまへへえるるる宮宮みやののの御御おん方方かたにににえんえんえんををを尋尋たずねねねつゝつゝつつ參參まいりりり集集あつまりまりまりててて侍侍さぶらふらふらうももも、、、哀哀あわれなるなるなることことことほどほどほどほどほどほどにににつけつけつけつゝつゝつつ多多おおかるかるかるべしべしべし。。。
現代語訳
本当に自分でもよいと思う娘を持っていたならば、この匂宮を差し置き申し上げて、帝にさえ差し上げはしないだろうと思うにつけ、誰もかれも匂宮に差し上げようと志していらっしゃった娘は、やはり源中納言にこそと、それぞれに言い並べているそうなのは、自分の評判も残念なものではないようだ、とはいえ、ひどくあまりに世慣れず古風な者なのになどと、得意にもなられる。帝のご意向があることを本当にお思いだとしたら、こうばかり気が進まなく思われたら、どうしたらよいだろう、名誉なことではあっても、どうだろうか、どうだろう、亡き君にたいそうよく似ていらっしゃったならば、その時はうれしいだろうと思い寄られるのは、さすがにかけ離れてはいられない心なのだろう。いつものように寝覚めがちの所在なさなので、按察の君といって、人よりは少し思いを寄せていらっしゃる女房の局にいらっしゃって、その夜はお明かしになった。夜が明け過ぎても、人が咎めるはずもないのに、苦しげに急いで起きなさるのを、按察の君はただならず思うのだろう。「渡るのを世に許されない関川を見慣れ始めた、浮き名こそ惜しいことです」。薫は気の毒なので、「深くはないと上辺は見えても、関川の下の流れは絶えるものでしょうか」。
深いとおっしゃってさえ頼りないのに、この上辺の浅さは、ますます不快に思われるだろう。薫は妻戸を押し開けて、「本当は、この空をご覧なさい。どうしてこれを知らぬ顔で明かせましょうか。風流な人のまねではなく、ますます明かしにくくなっていく夜々の寝覚めには、この世も来世までも思いやられて哀れなのです」などと言い紛らわしてお出になる。特に面白いことを言い尽くしなさるわけではないが、様子の優美さに見なされるのだろうか、情けない人などとは人に思われなさらない。かりそめの戯れ言をも言い始めなさった女房たちは、近くでなりともお見かけしたいとばかり思い申し上げるのだろうか、強いて世を背きなさった母宮の御方に縁を求めて参り集まってお仕えしているのも、哀れなことが身分に応じて多いことだろう。
意訳
薫は、娘を持つ親たちが自分を婿に望んでいると聞いて、少し得意になる。帝の女二の宮との縁談も、大君に似ていればうれしいだろうと思う。眠れない夜、薫は女房の按察の君の局で夜を明かし、急いで帰ろうとする。按察の君は関川の歌で恨み、薫は下の流れは絶えないと返して、明け方の空に紛らわして出ていく。薫に心を寄せる女房たちは、女三の宮のもとに縁を求めて集まって仕えている。
語釈・文法注
文法
- 「あぜちの君」(あぜちの君とて人よりは少し思ひまし給へるが)
- 按察の君。薫が情けをかけている女房の一人。
- 「世にゆるしなき關川」(うちわたし世にゆるしなき關川を)
- 世間に認められない関係のたとえ。按察の君の恨み。
- 「せき川のしたのかよひ」(せき川のしたのかよひはたゆるものかは)
- 関川の下を流れる水。表には出ない思いは絶えないという薫の言い逃れ。
解説
大君への思いに沈む薫も、女房の按察の君とは関係を持っている。薫の一途さは、すべての女性に向けられたものではない。当時の貴公子の現実がうかがえる。
薫に心を寄せる女房たちが、女三の宮のもとに集まって仕える。薫の魅力は、身分の高い女性だけでなく、多くの女房たちをも惹きつけている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1024–1027頁(コマ223–224)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日