源氏物語 第49帖 宿木(18)
六の君からの返書
中の君は日頃も、何とかこう思っていたと見られまいとあれこれ紛らわしてきたが、さまざまに思い集めることが多いので、そうばかりも隠しきれないのか、こぼれ始めるとすぐには止められないのを、ひどく恥ずかしくつらく思ってすっかり背を向けると、匂宮は強いてこちらに向けながら、「申し上げるままに素直な方と見ていたのに、やはり隔てのあるお心だったのですね。そうでなければ夜の間にお心変わりなさったのか」と言って自分の袖で涙をぬぐうと、中の君は「夜の間の心変わりこそ、おっしゃることで推し量られます」と言って少し微笑んだ。匂宮は「本当にあなたは幼い物言いだ。けれども実のところ、私の心には隠しごとがないのでたいそう気が楽だ。ひどく言葉を選んで申し上げてもはっきり分かるものだ。全く世の道理をご存じないのが可愛いものの困ったことだ。まあ我が身になって考えてごらんなさい。身を思うままにもできない有様なのですよ。もし思うような世になったら、人にまさる志のほどもお知らせできる一つのことがある。たやすく口に出すべきことでもないので、命さえあれば」などとおっしゃるうちに、あちら(六の君)に差し上げた使者がたいそうひどく酔っていたので、少し憚るべきことも忘れて、はっきりとこの南面に参った。海人の刈る珍しい玉藻(禄の衣)に被き埋もれているのを、そうだろうと女房たちは見る。いつの間に急いで書いたのだろうと見るのも穏やかではなかったろう。匂宮もむやみに隠すべきではないが、いきなりではやはり気の毒なので、少しは用意があればよいのにと何となくきまり悪いが、今はかいがないので女房に手紙を取り入れさせる。同じことなら隔てのない様子で振る舞い通そうと思って開けると、継母の宮(落葉の宮)の御筆跡らしいので、少し安心して置いた。代筆でも気がかりなことだ。「差し出がましくてきまり悪いのですが、勧めましたものの、たいそう気分が悪そうでして。
- 1日日ひごろごろごろもももいかでいかでいかでかくかくかく思思おもひひいけりけりけりととと見見みえええ奉奉たてまつらららじじじとととよろづよろづよろずににに思思おもひひいまぎらはしまぎらはしまぎらわしつるつるつるををを、、、さまざまさまざまさまざまににに思思おもひひい集集あつむるむるむることことことししし多多おおかれかれかればばばさささのみのみのみもももえええもてもてもて隱隱かくささされれれぬぬぬにににややや、、、こぼれこぼれこぼれそめそめそめてててはははとみとみとみにににもももえええためらひためらひためらい給給たまははわぬぬぬををを、、、いといといと恥恥はずかしくしくしく侘侘わびしししととと思思おもひひいててていたくいたくいたくそむきそむきそむき給給たまへへえばばば、、、しひてしひてしいてひきひきひきむけむけむけ給給たまひひいつゝつゝつつ、、、「「「聞聞きこゆるゆるゆるまゝまゝままににに哀哀あわれなるなるなる御御おん有有あり樣樣さまととと見見みつるつるつるををを、、、猶猶なお隔隔へだてててたるたるたる御心御心みこころこそこそこそ物物ものししし給給たまひひいけれけれけれななな。。。さらさらさらずずずばばば夜夜よののの程程ほどにににおぼしおぼしおぼしかはりかはりかわりにににたるたるたるかかか」」」とてとてとてわがわがわが御御おん袖袖そでしししててて淚淚なみだをををのごひのごひのごい給給たまへへえばばば、、、「「「夜夜よのののまままののの心心こころがはりがはりがわりこそこそこそのたまふのたまふのたまうにににつけつけつけててて推推おしししはからはからはかられれれ侍侍はべりりりぬれぬれぬれ」」」とてとてとて少少すこしししほゝゑみほゝゑみほほえみぬぬぬ。。。「「「げにげにげにあがあがあが君君きみややや、、、をさなをさなおさなののの御御おん物物ものいひいひいいややや。。。されどされどされど誠誠まことにににははは心心こころにににくまくまくまのののなけれなけれなければばばいといといと心心こころやすしやすしやすし。。。いみじういみじういみじゅうことことことえりえりえりしししててて聞聞きこゆゆゆともともともいといといとしるかるしるかるしるかるべきべきべきわざわざわざぞぞぞ。。。むげむげむげににに世世よのののことわりことわりことわりををを知知しりりり給給たまははわぬぬぬこそこそこそらうたきらうたきろうたきものものものからからからわりなけれわりなけれわりなけれ。。。よしよしよしわがわがわが御御おん身身みににになしなしなしてててももも思思おもひひいめぐらしめぐらしめぐらし給給たまへへえ。。。身身みををを心心こころととともももせせせぬぬぬ有有あり樣樣さまなりなりなりかしかしかし。。。若若もししし思思おもふふうやうやうようなるなるなる世世よもももあらあらあらばばば人人ひとにににまさりまさりまさりけるけるける志志こころざしののの程程ほどももも知知しらららせせせ奉奉たてまつるるるべきべきべきひとひとひとふしふしふしなむなむなんあるあるある。。。たはやすくたはやすくたわやすくことことこといづいづいずべきべきべきことことことにににもももあらあらあらねねねばばば命命いのちのみのみのみこそこそこそ」」」などなどなどのたまふのたまふのたまうほどほどほどににに、、、
- 2かしこかしこかしこににに奉奉たてまつりりり給給たまへへえるるる御御おん使使つかい、、、いといといといたういたういとうゑひゑひえいすぎすぎすぎにににけれけれければばば少少すこししし憚憚はばかるるるべきべきべきことことことももも忘忘わすれれれててて、、、けざやかけざやかけざやかにににこのこのこの南南みなみおもておもておもてににに參參まいれれれりりり。。。あまあまあまののの苅苅かるるるめづらしきめづらしきめずらしきたまたまたまもももにににかづきかづきかずきうづもれうづもれうずもれたるたるたるををを、、、さささなななめりめりめりととと人々人々ひとびと見見みるるる。。。いついついつののの程程ほどににに急急いそぎぎぎ書書かききき給給たまひひいつらむつらむつらむととと見見みるるるももも安安やすからからからずずずはははありありありけむけむけんかしかしかし。。。宮宮みやもももあながちあながちあながちにににかくすかくすかくすべきべきべきにににはははあらあらあらねねねどどど、、、さしさしさしぐみぐみぐみははは猶猶なおいとほしきいとほしきいとおしきををを少少すこしししののの用用よう意意いはははあれあれあれかしかしかしとととなまなまなまかたはらいたけれかたはらいたけれかたわらいたけれどどど、、、いまいまいまはははかひかひかいなけれなけれなければばば女房女房にょうぼうしししててて御御おん文文ふみとりとりとり入入いれれれさせさせさせ給給たまふふう。。。同同おなじくじくじくははは隔隔へだてなきなきなきさまさまさまにににもてもてもてなしなしなしはてはてはてゝゝてむむんとととおぼしおぼしおぼしてててひきひきひきあげあげあげ給給たまへへえるるるににに、、、まゝまゝままはゝはゝははののの宮宮みやののの御御おん手手てなななめりめりめりととと見見みゆれゆれゆればばば今今いま少少すこししし心心こころ安安やすくくくてててうちうちうち置置おききき給給たまへへえりりりせんじせんじせんじがきがきがきにてにてにてもももうしろめたうしろめたうしろめたのののわざわざわざややや「「「さかしらさかしらさかしらはははかたはらいたさかたはらいたさかたわらいたさにににそゞのかしそゞのかしそぞのかし侍侍はべれれれどどど、、、いといといとなやましげなやましげなやましげにてにてにてなむなむなん。。。
現代語訳
中の君は日頃も、何とかしてこう思っていたとはお見せ申し上げまいと、あれこれ紛らわしてきたが、さまざまに思い集めることが多いので、そうばかりも隠しきれないのだろうか、こぼれ始めると、すぐにはお止めになれないのを、たいそう恥ずかしくつらいと思って、すっかり背を向けなさると、匂宮は強いてこちらに向けなさりながら、「申し上げるままに素直なご様子と見ていたのに、やはり隔てのあるお心でいらっしゃったのですね。そうでなければ、夜の間にお心変わりなさったのか」と言って、ご自分の袖で涙をぬぐいなさると、中の君は「夜の間の心変わりこそ、おっしゃることにつけて推し量られました」と言って少し微笑んだ。匂宮は「本当にあなたは、幼い物言いだね。けれども実のところ、私の心には隠しごとがないので、たいそう気が楽だ。ひどく言葉を選んで申し上げても、はっきり分かるものですよ。全く世の道理をご存じないのが、可愛いものの困ったことだ。まあ、我が身になってもお考えなさい。身を思うままにもできない有様なのですよ。もし思うような世もあったら、人にまさった志のほどもお知らせ申し上げるべき一つのことがある。たやすく口に出すべきことでもないので、命さえあれば」などとおっしゃるうちに、
あちらに差し上げなさったお使いが、たいそうひどく酔ってしまっていたので、少し憚るべきことも忘れて、はっきりとこの南面に参上した。海人の刈る珍しい玉藻に被き埋もれているのを、そうであるようだと女房たちは見る。いつの間に急いでお書きになったのだろうと見るのも、穏やかではなかっただろう。匂宮もむやみに隠すべきではないが、いきなりでは、やはり気の毒なので、少しの用意はあればよいのにと、何となくきまり悪いけれど、今はかいがないので、女房にお手紙を取り入れさせなさる。同じことなら、隔てのない様子で振る舞い通そうとお思いになって開けなさると、継母の宮の御筆跡らしいと見えるので、もう少し安心してお置きになった。代筆でも気がかりなことよ。「差し出がましくて、きまり悪うございますので、お勧めいたしましたが、たいそう気分が悪そうでして。
意訳
中の君は涙をこらえきれず背を向ける。匂宮は袖で涙をぬぐい、心変わりを疑う中の君に、自分には隠しごとがない、立場上思うようにならない身だが、いずれ志の深さを示す時が来ると語る。そこへ六の君からの返書を持った使者が、禄の衣をかぶって酔ったまま現れる。匂宮は気まずく思いながら手紙を開くと、六の君の継母の落葉の宮の代筆であった。
語釈・文法注
文法
- 「をさなの御物いひや」(げにあが君や、をさなの御物いひや)
- 幼い物言いだこと。中の君の皮肉を子どもっぽいとかわす。
- 「人にまさりける志の程も知らせ奉るべきひとふし」(若し思ふやうなる世もあらば)
- 匂宮が東宮になれば、中の君を后にするという含み。
- 「まゝはゝの宮」(まゝはゝの宮の御手なめりと見ゆれば)
- 落葉の宮。夕霧の妻で、六の君の継母として養育している。
解説
匂宮は、思うような世になれば中の君への志を示せると語る。東宮になって中の君を后にするという約束をほのめかしているが、中の君にはそれが届かない。
酔った使者が禄の衣に埋もれて現れる場面は、気まずさの中に滑稽さがある。華やかな六の君の家の豊かさが、中の君の前にさらけ出される。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1020–1023頁(コマ221–222)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日