源氏物語 第49帖 宿木(16)
六の君との初夜
「そうはいっても、もとの志が深く思い始めた仲は名残がなくなることはないものです」などと言い合うのも、さまざまに聞き苦しく、中の君は、今はどうあっても口に出して言わないでほしい、ただ黙って見ていようと思われるのは、人には言わせまい、自分一人で恨み申し上げようというのだろうか。いやもう、中納言殿のあれほど哀れなお心の深さを、などと宇治以来の女房たちは言い合って、人のご宿縁は不思議なものだと言い合っている。匂宮はたいそう心苦しく思いながらも、色めいたお心は、何とかしてすばらしい様子で待ち迎えられようと心づかいして、えも言われず香を薫きしめていらっしゃるご様子は言いようもない。待ち受けていた六の君の所の様子もたいそう趣深かった。六の君のお体つきは小柄でか弱いなどということはなく、ほどよく成熟した感じでいらっしゃるのを、匂宮は、どうだろう、ものものしく派手で、心ばえも柔らかなところがなく高慢だったりするのだろうか、そうだったら嫌だろうなどと思っていたが、そのようなご様子ではないのか、お志もおろそかにはならないと思われた。秋の夜とはいえ更けてから来たからか、ほどなく明けた。帰ってからも、匂宮は対の屋(中の君)へはすぐには渡れない。しばらくお休みになって、起きて六の君への後朝の手紙を書く。「ご様子は悪くないようだ」と御前の女房たちはつつき合う。「対の御方こそお気の毒です。天下に行き渡るほど広いお心でも、自然と気圧されることもあるでしょう」などと、ただではいられず、皆宇治から慣れ仕えてきた女房たちなので、穏やかでなく言うことどももあって、やはり何事も妬ましいことである。匂宮は六の君のお返事もこちらで見ようと思うが、夜の間の気がかりさもいつもの隔てとは違ってどうかと心苦しいので、急いで中の君のもとへ渡る。
- 1さささいへいへいえどどど、、、もともともとののの志志こころざし深深ふこううう思思おもひひいそめそめそめつるつるつる中中なかははは名名な殘殘ごりなからなからなからぬぬぬものものものぞぞぞ」」」などなどなどいひいひいいあへあへあえるるるもももさまざまさまざまさまざまににに聞聞ききにくゝにくゝにくく、、、今今いまはははいかにいかにいかにもももいかにいかにいかにもももかけかけかけててていはいはいわざらざらざらなむなむなん、、、たゞたゞただにににこそこそこそ見見みめめめとととおぼさおぼさおぼさるゝるゝるるははは、、、人人ひとにににはははいはいはいわせせせじじじわれわれわれひとりひとりひとり恨恨うらみみみ聞聞きこえええむむんとととにににやややあらあらあらむむん。。。いでやいでやいでや中中ちゅう納納な言言ごん殿殿どののののさばかりさばかりさばかり哀哀あわれなるなるなる御心御心みこころ深深ふかさささをををなどなどなどそのそのそのかみかみかみののの人々人々ひとびとはははいひいひいいあはせあはせあわせててて、、、人人ひとののの御御おんすくせすくせすくせのののあやしかりあやしかりあやしかりけるけるけることことことよよよととといひいひいいあへあへあえりりり。。。宮宮みやはははいといといと心苦心苦こころぐるしくしくしくおぼしおぼしおぼしながらながらながら色色いろめかしきめかしきめかしき御心御心みこころははは、、、いかでいかでいかでめでたきめでたきめでたきさまさまさまににに待待まちちち思思おもははわれれれむむんととと心心こころげさうげさうげそうしししててて、、、えええならならならずずずたきたきたきしめしめしめ給給たまへへえるるる御御おんけはひけはひけはいいはいはいわむむん方方かたなしなしなし。。。まちまちまちつけつけつけ給給たまへへえるるる所所ところののの有有あり樣樣さまもももいといといとをかしかりをかしかりおかしかりけりけりけり。。。人人ひとののの御御おん程程ほどさゝやかさゝやかささやかにににあえかあえかあえかににになどなどなどはははあらあらあらでででよきよきよきほどほどほどににになりなりなりあひあひあいたるたるたる心心こころちちちししし給給たまへへえるるるををを、、、いかならいかならいかならむむんものものものものしくものしくものしくあざやぎあざやぎあざやぎててて心心こころばへばへばえもももたをやかたをやかたおやかなるなるなるかたかたかたはははなくなくなく物物ものほこりかほこりかおこりかににになどなどなどやややあらあらあらむむん、、、さささあらあらあらむむんこそこそこそうたてうたてうたてあるあるあるべけれべけれべけれなどなどなどおぼせおぼせおぼせどどど、、、さやうさやうさようなるなるなる御御おんけはひけはひけはいにににはははあらあらあらぬぬぬにににややや御御おん志志こころざしおろかおろかおろかなるなるなるべうべうびょうもももおぼさおぼさおぼされれれざりざりざりけりけりけり。。。
- 2秋秋あきののの夜夜よなれなれなれどどどふけふけふけにににしかしかしかばばばにににややや程程ほどもももなくなくなく明明あけけけぬぬぬ歸歸かえりりり給給たまひひいてててももも對對たいへへへはははふとふとふとももも得得え渡渡わたりりり給給たまははわずずず。。。しばししばししばしおほとのごもりおほとのごもりおおとのごもりててて起起おきききてててぞぞぞ御御おん文文ふみ書書かききき給給たまふふう。。。「「「御御おんけしきけしきけしきけしうけしうけしゅうはははあらあらあらぬぬぬなななめりめりめり」」」とととおまへおまへおまえなるなるなる人々人々ひとびとつきじろふつきじろふつきじろう。。。「「「對對たいののの御御おん方方かたこそこそこそ心苦心苦こころぐるしけれしけれしけれ。。。あめあめあめのののしたしたしたにににあまねきあまねきあまねき御心御心みこころなりなりなりともともともおのづからおのづからおのずからけけけおさるゝおさるゝおさるることことこともももありありありなななむむんかしかしかし」」」などなどなどたゞたゞただにににしもしもしもあらあらあらずずず皆皆みな馴馴なれれれ仕仕つこううう奉奉たてまつりりりたるたるたる人々人々ひとびとなれなれなればばば、、、やすからやすからやすからずずずうちうちうちいふいふいうことことことゞゞどもももありありありててて、、、すべてすべてすべて猶猶なお妬妬ねたげげげなるなるなるわざわざわざにににぞぞぞありありありけるけるける。。。御御おん返返かえりりりもももこなたこなたこなたにてにてにてこそこそこそはははとととおぼせおぼせおぼせどどど夜夜よのののほどほどほどののの覺束覺束おぼつかなさなさなさももも常常つねのののへだてへだてへだてよりよりよりはははいかゞいかゞいかがととと心苦心苦こころぐるしけれしけれしければばば急急いそぎぎぎわたりわたりわたり給給たまふふう。。。
現代語訳
「そうはいっても、もとの志が深く思い始めた仲は、名残がなくなることはないものです」などと言い合っているのも、さまざまに聞き苦しく、今はどうあっても、口に出して言わないでほしい、ただ黙って見ていようとお思いになるのは、人には言わせまい、自分一人で恨み申し上げようというのだろうか。いやもう、中納言殿のあれほど哀れなお心の深さを、などと宇治以来の女房たちは言い合って、人のご宿縁は不思議なものだったことよと言い合っている。匂宮はたいそう心苦しくお思いになりながら、色めいたお心は、何とかしてすばらしい様子で待ち迎えられようと心づかいして、えも言われず香を薫きしめていらっしゃるご様子は言いようもない。待ち受けていらっしゃった所の様子もたいそう趣深かった。六の君のお体つきは、小柄でか弱いなどということはなく、ほどよく成熟した心地がなさるのを、匂宮は、どうだろうか、ものものしく派手で、心ばえも柔らかなところはなく、高慢だったりするのだろうか、そうであったら嫌だろうなどとお思いになったが、そのようなご様子ではないのだろうか、お志もおろそかになりそうにはお思いにならなかった。
秋の夜ではあるが、更けてから来たからだろうか、ほどなく明けた。お帰りになっても、匂宮は対の屋へは、すぐにはお渡りになれない。しばらくお休みになって、起きてから後朝のお手紙をお書きになる。「ご様子は悪くないようだ」と御前の女房たちはつつき合う。「対の御方こそお気の毒です。天下に行き渡るほど広いお心であっても、自然と気圧されることもあるでしょう」などと、ただではいられず、皆慣れお仕えしてきた女房たちなので、穏やかでなく言うことどももあって、すべてやはり妬ましいことであった。お返事もこちらでと匂宮はお思いになるが、夜の間の気がかりさも、いつもの隔てよりはどうかと心苦しいので、急いで中の君のもとへお渡りになる。
意訳
女房たちのうわさを聞き苦しく思い、中の君は一人で恨みを抱える。宇治以来の女房たちは、薫と結ばれていればと言い合う。匂宮は香を薫きしめて六の君のもとへ行き、思ったより好ましい六の君に心惹かれる。夜明けに戻った匂宮は、まず六の君に後朝の文を書き、女房たちは中の君が気圧されることを案じる。匂宮は中の君が気がかりで急いで渡る。
語釈・文法注
文法
- 「つきじろふ」(おまへなる人々つきじろふ)
- 互いにつつき合って合図する。ひそひそ話す。
- 「けおさるゝ」(おのづからけおさるゝこともありなむかし)
- 気圧される。勢いに押されて劣ること。
- 「御文書き給ふ」(起きてぞ御文書き給ふ)
- 後朝の文。結婚の翌朝に男から女に送る手紙。
解説
匂宮は中の君を気づかいながらも、六の君の魅力にも惹かれる。「御志おろかなるべうもおぼされざりけり」という一文に、匂宮の心の揺れが表れている。
宇治以来の女房たちは、薫と結ばれていればよかったと言い合う。中の君の周囲には、薫への期待が根強く残っている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1018–1019頁(コマ220)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日