源氏物語 第49帖 宿木(8)
霧の朝顔
やはり浮気な方面に進んで移りやすい人は、女のためばかりでなく、頼りなく軽々しいこともあるに違いないなどと、薫は匂宮を憎らしく思う。自分は本当にあまりに一途に思い込む性分なので、人はひどくもどかしく見えるのだろう、あの人(大君)をむなしく亡くしてから思うと、帝が御娘をくださろうとお考えになっているのもうれしくもなく、この中の君を妻にしていたらと思う心が月日とともにまさるのも、ただあの方の縁者だと思うので思い離れがたいのだ、姉妹という中でもこの上なく思い合っていらしたのに、今はの際にも、残る人を自分と同じと思えと言って、万事に思うようにならないことはない、ただあの心づもりに背かれたことだけが残念で恨めしい点としてこの世に残るだろうとおっしゃったのに、空を翔けりながらもこうしたことにつけてますますつらいとご覧になっているだろうかなどと、つくづくと自分のせいの独り寝をなさる夜々は、ちょっとした風の音にも目が覚めて、過去や未来や人の身の上まで、つまらない世を思い巡らす。かりそめの慰みに言葉をかけ、身近に使い慣らしている女房たちの中には、自然と憎からず思われる者もいるだろうが、本当に心の留まる者はいないのがさっぱりしている。実は、あの姫君たちの身分に劣らない家柄の人々で、時勢に従って落ちぶれ、心細げな暮らしをしている者などを探し出しては仕えさせていることが多いが、今はと世を背き離れる時、この人こそと取り立てて心の留まる絆になるようなことはなく過ごそうと思う心づかいが深かったのに、いやもう、何と見苦しく、我ながらひねくれていることよなどと、いつもより、そのまままどろまずに夜を明かした朝、霧の籬から花々がさまざまに趣深く見えわたる中に、朝顔がはかなげに混じっているのが、やはり格別に目にとまる心地がする。
- 1猶猶なおあだあだあだなるなるなるかたかたかたににに進進すすみみみ移移うつりりりやすやすやすなるなるなる人人ひとははは、、、女女おんなのののためためためのみのみのみにににもももあらあらあらずずず、、、たのもしげたのもしげたのもしげなくなくなくかるがるしきかるがるしきかるがるしきことことこともももありありありぬぬぬべきべきべきなななめりめりめりかしかしかしなどなどなどにくゝにくゝにくく思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまふふう。。。わがわがわが誠誠まことにににあまりあまりあまりひとひとひとかたかたかたにににしみしみしみたるたるたる心心こころならひならひならいににに人人ひとはははいといといとこよなくこよなくこよなくもどかしくもどかしくもどかしく見見みゆるゆるゆるなるなるなるべしべしべし、、、かのかのかの人人ひとをををむなしうむなしうむなしゅう見見み奉奉たてまつりりりなしなしなしてててししし後後のちおもふおもふおもうにににははは、、、帝帝みかどののの御御おんむすめむすめむすめをををたまはたまはたまわむむんとととおぼしおぼしおぼしおきおきおきつるつるつるももも嬉嬉うれしくしくしくもももあらあらあらずずず、、、このこのこの君君きみをををえええましかましかましかばばばとととおぼゆるおぼゆるおぼゆる心心こころののの月月つき日日ひにににそへそへそえてててまさるまさるまさるももも唯唯ただかのかのかの御御おんゆかりゆかりゆかりととと思思おもふふうににに思思おもひひい離離はなれれれがたきがたきがたきぞぞぞかしかしかし、、、はらからはらからはらからととといふいふいう中中なかにににももも限限かぎりなくなくなく思思おもひひいかはしかはしかわし給給たまへへえりりりしししものものものををを今今いまはははとととなりなりなり給給たまひひいにににしししはてはてはてにににもももとまらとまらとまらむむん人人ひとををを同同おなじじじことことことゝゝと思思おもへへえとてとてとて萬萬よろずははは思思おもははわずずずなるなるなることことこともももなしなしなし、、、唯唯ただかのかのかの思思おもひひいおきおきおきてててしししさまさまさまをををたがへたがへたがえ給給たまへへえるるるのみのみのみなむなむなん、、、口口くち惜惜おしうしうしゅううらめしきうらめしきうらめしきふしふしふしにてにてにてこのこのこの世世よにににははは殘殘のこりりりぬぬぬべきべきべきとととのたまひのたまひのたまいしししものものものををを、、、あまあまあまがけりがけりがけりてててもももかやうかやうかようなるなるなるにににつけつけつけてててはははいとゞいとゞいとどつらしつらしつらしとととややや見見み給給たまふふうらむらむらんなどなどなど、、、つくづくつくづくつくずくととと人人ひとやりやりやりならならならぬぬぬひとりひとりひとりねねねししし給給たまふふうよなよなよなよなよなよなははは、、、はかなきはかなきはかなき風風かぜののの音音おとにににもももめめめのみのみのみさめさめさめつゝつゝつつきききしししかたかたかた行行ゆくくくさきさきさきののの人人ひとののの上上うえさへさへさへあぢきなきあぢきなきあじきなき世世よををを思思おもひひいめぐらしめぐらしめぐらし給給たまふふう。。。
- 2なげなげなげのののすさみすさみすさみににに物物ものをををもももいひいひいいふれふれふれけけけぢかくぢかくじかくつかひつかひつかいならしならしならし給給たまふふう人々人々ひとびとののの中中なかにににははは、、、おのづからおのづからおのずからにくからにくからにくからずずずおぼさおぼさおぼさるゝるゝるるもももありありありぬぬぬべけれべけれべけれどどど、、、誠誠まことにににははは心心こころとまるとまるとまるもももなきなきなきこそこそこそさはやかさはやかさわやかなれなれなれ、、、さるはさるはさるはかのかのかの君君きん達達だちのののほどほどほどににに劣劣おとるるるまじきまじきまじききはきはきわののの人々人々ひとびとももも、、、時時とき世世よににに隨隨したがひひいつゝつゝつつ衰衰おとろへへえててて心心こころ細細ぼそげげげなるなるなる住住すまひまひまいするするするなどなどなどををを尋尋たずねねねとりとりとりつゝつゝつつあらあらあらせせせなどなどなどいといといと多多おおかれかれかれどどど、、、今今いまはははととと世世よををを背背そむきききはなれはなれはなれむむん時時ときこのこのこの人人ひとこそこそこそとりとりとりたてたてたてゝゝて心心こころとまるとまるとまるほだしほだしほだしににになるなるなるばかりばかりばかりのののことことことはははなくなくなくててて過過すぐしぐしぐしてててむむんととと思思おもふふう心心こころづかひづかひずかい深深ふかかりかりかりしししををを、、、いでいでいでさささもももわろくわろくわろくわがわがわが心心こころながらながらながらねぢけねぢけねじけてててもももあるあるあるかなかなかななどなどなど、、、常常つねよりよりよりもももやがてやがてやがてまどろままどろままどろまずずず明明あかししし給給たまへへえるるるあしたあしたあしたににに、、、霧霧きりのののまがきまがきまがきよりよりより花花はなのののいろいろいろいろいろいろおもしろくおもしろくおもしろく見見みえええわたるわたるわたる中中なかににに、、、朝朝あさ顏顏がおのののはかなげはかなげはかなげにてにてにてまじりまじりまじりたるたるたるををを猶猶なお殊殊ことにににめめめとまるとまるとまる心心こころちちちししし給給たまふふう。。。
現代語訳
やはり浮気な方面に進んで心の移りやすい人は、女のためばかりでもなく、頼りなく軽々しいこともあるに違いないようだなどと、薫は匂宮を憎らしくお思い申し上げなさる。自分は本当にあまりに一途に思い込む心の性分なので、人はひどくこの上なくもどかしく見えるのだろう、あの人をむなしく亡くしてしまってから思うと、帝が御娘をくださろうとお考えおきになっているのも、うれしくもなく、この中の君を得ていたならばと思われる心が月日とともにまさるのも、ただあの方の縁者だと思うので、思い離れがたいのだ、姉妹という中でもこの上なく思い合っていらっしゃったのに、今はとおなりになった最期にも、残る人を自分と同じと思えと言って、万事に思うようにならないこともない、ただあの心づもりにお背きになったことだけが、残念で恨めしい点としてこの世に残るだろうとおっしゃったのに、空を翔けりながらも、このようなことにつけては、ますますつらいとご覧になっているだろうかなどと、つくづくと自分のせいの独り寝をなさる夜々は、ちょっとした風の音にも目が覚めてばかりで、過去や未来や人の身の上までも、つまらない世を思い巡らしなさる。
かりそめの慰みに言葉をかけ、身近に使い慣らしていらっしゃる女房たちの中には、自然と憎からずお思いになる者もいるだろうが、本当に心の留まる者はいないのがさっぱりしている。実は、あの姫君たちの身分に劣らない家柄の人々でも、時勢に従って落ちぶれて、心細げな暮らしをしている者などを探し出しては仕えさせていることなどが多いけれど、今はと世を背き離れる時、この人こそと取り立てて心の留まる絆になるほどのことはなく過ごそうと思う心づかいが深かったのに、いやもう、何と見苦しく、我ながらひねくれていることよなどと、いつもよりそのまままどろまずに夜をお明かしになった朝、霧の籬から花々がさまざまに趣深く見えわたる中に、朝顔がはかなげに混じっているのを、やはり格別に目にとまる心地がなさる。
意訳
薫は浮気な匂宮を憎らしく思う。帝の娘との縁談も喜べず、大君の縁者である中の君を妻にしていればと思う心が日に日に募る。大君の遺言に背いたことを悔やみ、眠れない夜を過ごす。女房たちの中にも心を留める者はおらず、出家の妨げとなる絆は作るまいと思ってきたのに、と自分のひねくれた心を思う。夜明け、霧の中の朝顔に目を留める。
語釈・文法注
文法
- 「人やりならぬひとりね」(つくづくと人やりならぬひとりねし給ふよなよな)
- 自分から招いた独り寝。中の君を譲った自分のせいであること。
- 「ほだし」(心とまるほだしになるばかりのことは)
- 絆。出家を妨げる心の束縛。
- 「朝顏」(朝顏のはかなげにてまじりたるを)
- 朝顔。はかなさの象徴。大君を偲ばせる。
解説
薫は、中の君を妻にしていればと思う心が日々強まるのを、大君の縁者だからだと自分に言い聞かせる。しかしその思いは、すでに中の君自身への恋へと変わりつつある。
霧の中の朝顔は、はかなく消えた大君の象徴である。眠れぬ夜を明かした薫の目に、朝顔だけが格別に映る。この朝顔が、次の場面で中の君への贈り物となる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1010–1011頁(コマ216)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日