源氏物語 第49帖 宿木(7)
薫の後悔
中の君が二条院に移ってからは、特別なことがなければ、匂宮は内裏に参っても夜泊まることは特になさらず、あちこちへの夜離れもなかったのに、急に中の君がどう思うだろうと心苦しい紛らわしに、この頃は時々宿直と称して参内したりして、前もって慣らしておこうとなさるのも、中の君にはただつらい方にばかり思われることだろう。中納言殿(薫)もたいそう気の毒なことだと聞いて、浮気なお心の匂宮なので、哀れとはお思いでも、新しい方に必ず心が移るだろう、六の君の方もたいそう抜け目のない家なので、ゆるみなく匂宮をつなぎ止めたら、中の君は何か月もそうした慣れもなく、待つ夜を多く過ごされるのが哀れだろうなどと思い寄るにつけても、つまらないことだ、我が心よ、どうして中の君を匂宮に譲ってしまったのか、昔の人(大君)に心を寄せてからは、世の中をすっかり思い離れていた心も濁り始めたので、ただあの方のことばかりあれこれと思いながら、さすがに相手の心が許さないままでは初めの本意に背くだろうと憚りながら、ただ何とかして少しでも哀れと思われて打ち解けてくださる様子を見ようと、将来のことばかり思い続けていたのに、大君は心にもなく振る舞いながら、さすがに一方的に突き放すこともできないと思っていらした慰めに、同じ身だと言いなして中の君を本意でない方に向けさせなさったのが悔しく恨めしかったので、まずそのお考えを違えようとして急いでしたことだったのだ、などと、ひどく女々しく物狂おしく匂宮を連れて歩き手引きした頃を思い出すと、たいそう不届きな心だったと、返す返すも悔しい。匂宮も、それでもその頃の有様を思い出されたら、私の聞くところを少しは憚られるだろうかと思うが、いやもう今はその折のことなど少しも口にされないようだ。
- 1かくかくかく渡渡わたりりり給給たまひひいにににししし後後のちはははことことことなるなるなることことことなけれなけれなければばばうちうちうちににに參參まいりりり給給たもうううてててもももよるよるよるとまるとまるとまることことことはははことことことにににししし給給たまははわずずず、、、こゝこゝここかしこかしこかしこののの御御おんよよよがれがれがれなどなどなどもももなかりなかりなかりつるつるつるををを、、、俄俄にわかにににいかにいかにいかに思思おもひひい給給たまははわむむんととと心苦心苦こころぐるしきしきしきまぎらはしまぎらはしまぎらわしににに、、、このこのこの頃頃ころははは時々時々ときどき御御おんとのとのとのゐゐいとてとてとて參參まいりりりなどなどなどししし給給たまひひいつゝつゝつつかねかねかねてててよりよりよりならはしならはしならわし聞聞きこえええ給給たまふふうをををももも唯唯ただつらきつらきつらき方方かたにににのみのみのみぞぞぞ思思おもひひいおかおかおかれれれ給給たまふふうべきべきべき。。。中中ちゅう納納な言言ごん殿殿どのもももいといといといとほしきいとほしきいとおしきわざわざわざかなかなかなととと聞聞きききき給給たまふふうににに、、、花花はなごゝろごゝろごころにににおはするおはするおわする宮宮みやなれなれなればばば哀哀あわれとととはははおぼすおぼすおぼすともともともいまめかしきいまめかしきいまめかしきかたかたかたににに必必かならずずず御心御心みこころうつろひうつろひうつろいなななむむんかしかしかし、、、女女おんながたがたがたもももいといといとまたゝかまたゝかまたたかににに物物ものししし給給たまふふうわたりわたりわたりにてにてにてゆるびゆるびゆるびなくなくなく聞聞きこえええまつはしまつはしまつわし給給たまははわゞゞば月月つき頃頃ごろもももさささもももならひならひならい給給たまははわででで待待まつつつ夜夜よおほくおほくおおく過過すぐししし給給たまははわむむんこそこそこそ哀哀あわれなるなるなるべけれべけれべけれなどなどなど思思おもひひいよるよるよるにににつけつけつけてててももも、、、あいなしあいなしあいなしややや、、、我我わががが心心こころよよよ何何なにしししにににゆづりゆづりゆずり聞聞きこえええけむけむけん、、、昔昔むかしののの人人ひとににに心心こころをををしめしめしめてててししし後後のち大大おお方方かたののの世世よをををももも思思おもひひい離離はなれれれででで住住すみみみはてはてはてたりたりたりしししかたかたかたののの心心こころももも濁濁にごりりりそめそめそめしかしかしかばばば、、、唯唯ただかのかのかの御御おん事事ことをををのみのみのみとととざまざまざまかうかうこうざまざまざまにににははは思思おもひひいながらながらながらさすがさすがさすがににに人人ひとののの心心こころ許許ゆるささされれれででであらあらあらむむんことことことははは始始はじめよりよりより思思おもひひいしししほいほいほいなかるなかるなかるべしべしべしととと憚憚はばかりりりつゝつゝつつ、、、唯唯ただいかにいかにいかにしししててて少少すこしししももも哀哀あわれととと思思おもははわれれれてててうちうちうち解解とけけけ給給たまへへえらららむむん氣色氣色けしきをををももも見見みむむんととと行行ゆくくくさきさきさきのののあらましあらましあらましごとごとごとのみのみのみ思思おもひひい續續つづけけけしししににに、、、人人ひとははは心心こころにににもももあらあらあらずずずもてもてもてなしなしなしてててさすがさすがさすがににに一一ひとかたかたかたにてにてにてもももえええさしさしさし放放はなつつつまじうまじうまじゅう思思おもひひい給給たまへへえるるるなぐさめなぐさめなぐさめににに、、、同同おなじじじ身身みぞぞぞととといひいひいいなしなしなしてててほいほいほいならならならぬぬぬかたかたかたにににおもむけおもむけおもむけ給給たまひひいしししががが妬妬ねたくくくうらめしかりうらめしかりうらめしかりしかしかしかばばば、、、まづまづまずそのそのその心心こころおきておきておきてをををたがへたがへたがえむむんとてとてとて急急いそぎぎぎせせせしししわざわざわざぞぞぞかしかしかしなどなどなど、、、あながちあながちあながちにににめゝしうめゝしうめめしゅう物物ものぐるほしくぐるほしくぐるおしくゐゐいてててありきありきありきたばかりたばかりたばかり聞聞きこえええしししほどほどほど思思おもひひい出出いづるづるずるもももいといといとけしからけしからけしからざりざりざりけるけるける心心こころかなかなかなととと返返かえすすす返返がえすすすぞぞぞくやしきくやしきくやしき、、、宮宮みやもももさりともさりともさりともそのそのその程程ほどののの有有あり樣樣さま思思おもひひい出出いででで給給たまははわゞゞばわがわがわが聞聞きかかかむむん所所ところをををももも少少すこしししははは憚憚はばかりりり給給たまははわじじじやややととと思思おもふふうににに、、、いでやいでやいでや今今いまはははそのそのそのをりをりおりのののことことことなどなどなどかけかけかけてててももものたまひのたまひのたまい出出いでででざざざめりめりめりかしかしかし。。。
現代語訳
中の君がこうしてお移りになってから後は、特別なことがなければ、匂宮は内裏に参上なさっても、夜泊まることは特になさらず、あちこちへのお夜離れなどもなかったのに、急に中の君がどうお思いになるだろうかと心苦しい紛らわしに、この頃は時々御宿直と称して参内などなさりながら、前もって慣らし申し上げようとなさるのも、中の君にはただつらい方にばかり思われなさることだろう。中納言殿もたいそう気の毒なことだとお聞きになるにつけ、浮気なお心でいらっしゃる匂宮なので、哀れとはお思いになっても、新しい方に必ずお心が移ってしまうだろう、六の君の方もたいそう抜け目なくいらっしゃる家なので、ゆるみなく匂宮をおつなぎ止め申し上げなさったら、中の君は何か月もそうしたことにも慣れていらっしゃらないで、待つ夜を多く過ごしなさるのが哀れだろうなどと思い寄るにつけても、つまらないことよ、我が心よ、どうして中の君を匂宮にお譲り申し上げてしまったのか、昔の人に心を寄せてしまってから後は、大方の世の中を思い離れて住み果てていた方面の心も濁り始めたので、ただあの方のことばかりあれこれと思いながら、さすがに相手の心が許さないままでいることは、初めから思っていた本意に背くだろうと憚りながら、ただ何とかして少しでも哀れと思われて、打ち解けてくださる様子を見ようと、将来の心づもりばかり思い続けていたのに、あの方は心にもなく振る舞いながら、さすがに一方的には突き放しきれまいとお思いになっていた慰めに、同じ身だと言いなして、本意でない方に向けさせなさったのが悔しく恨めしかったので、まずそのお考えを違えようとして急いでしたことだったのだなどと、むやみに女々しく物狂おしく、匂宮を連れて歩き、手引き申し上げた頃を思い出すにつけても、たいそう不届きな心だったと、返す返すも悔しい、匂宮もそれでもその頃の有様を思い出しなさったなら、私の聞くところを少しは憚りなさらないだろうかと思うが、いやもう今は、その折のことなど少しも口にお出しにならないようだ。
意訳
匂宮は中の君を慣らそうと、宮中に泊まる夜を作り始める。薫は、匂宮の心が六の君に移り、中の君が待つ夜を重ねることを思って同情する。そして、大君が自分を中の君に向けようとしたことへの反発から匂宮を手引きしたことを悔やみ、中の君を匂宮に譲ったことを後悔する。
語釈・文法注
文法
- 「御よがれ」(こゝかしこの御よがれなどもなかりつるを)
- 夜離れ。夫が妻のもとに通わなくなること。
- 「またゝかに」(女がたもいとまたゝかに物し給ふわたりにて)
- 抜け目なく、しっかりと。
- 「同じ身ぞといひなして」(同じ身ぞといひなしてほいならぬかたにおもむけ給ひし)
- 大君が中の君を自分と同じだと言って、薫の心を中の君に向けようとしたこと。
解説
薫は、匂宮を中の君のもとに手引きした理由を振り返る。それは大君の意図を覆すための、半ば意地からの行動だった。その結果が中の君を苦しめていることに、薫は深い悔いを抱く。
「我が心よ何しにゆづり聞えけむ」という薫の自問は、中の君への思いが芽生えていることを示す。大君の形見として見ていた中の君が、次第に恋の対象となっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1008–1011頁(コマ215–216)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日