源氏物語 第49帖 宿木(4)
夕霧の焦りと中宮の説得
こうしたことを左大臣殿(夕霧)がほのかに聞いて、六の君は、それでもこの君(薫)にこそ、しぶしぶでも本気で恨み寄ったら、ついには断りきれまいと思っていたのに、思いがけないことが起こりそうだと悔しく思ったので、兵部卿宮(匂宮)がわざとではないが折々につけて趣深く手紙を寄こすことが絶えなかったので、ままよ、いい加減な好き心であっても、そうなる縁で心が留まることもないとは限らない、水も漏らさぬように堅い婿をと思い定めても、平凡な身分に下るのはひどく見苦しく物足りない気がするだろうなどと思うようになった。夕霧は「娘の身が案じられる末の世で、帝でさえ婿を求めなさるような世に、まして臣下の娘が盛りを過ぎるのもつまらない」などと非難がましく言って、中宮にも真剣に恨み申し上げることが度重なったので、中宮はお聞きになって困って、匂宮に「お気の毒に、こうして一途に思い込んで年月を経ていらしたのに、あいにく逃れ申し上げるのも情けないことでしょう。親王たちは後見次第でどうにでもなるものです。帝のご治世も末になっていくとばかりお思いになりおっしゃるようですが、臣下こそ一人に定まれば、また心を分けることも難しいようです。それでさえあの大臣はたいそうまじめながら、あちらこちら恨まれないように扱っていらっしゃるではありませんか。ましてあなたは、思い置いて申し上げることもかなうなら、妻が大勢いても何の差し支えがありましょう」などと、いつになく言葉を重ねて、あるべきように申し上げるので、匂宮は自分のお心でももとからかけ離れてお思いではないので、強いてどうしてありえないことのようにお返事しよう、ただたいそうきちんとした家に取り込められて、気安く過ごしてきた有様が窮屈になるのを何となく苦しく思って気が進まないが、本当にこの大臣にあまり恨まれるのもつまらないだろうなどと、だんだん気が弱くなっていったのだろう。
- 1かゝるかゝるかかる事事ことををを左左さ大大だい臣臣じん殿殿どのほのほのほの聞聞きききき給給たまひひいててて、、、六六ろくののの君君きみはははさりともさりともさりともこのこのこの君君きみにににこそこそこそはははしぶしぶしぶしぶしぶしぶなりなりなりともともともまめやかまめやかまめやかににに恨恨うらみみみよらよらよらばばば遂遂ついにににはははえええいなびいなびいなびはてはてはてじじじとととおぼしおぼしおぼしつるつるつるををを、、、思思おもいのののほかほかほかなるなるなる事事こと出出いででできききぬぬぬべかべかべかめりめりめりととと妬妬ねたくくくおぼさおぼさおぼされれれけれけれければばば、、、兵兵ひょう部部ぶ卿卿きょうののの宮宮みやはははたたた、、、わざとわざとわざとにににはははあらあらあらねねねどどど折折おり々々おりにににつけつけつけつゝつゝつつをかしきをかしきおかしきさまさまさまににに聞聞きこえええ給給たまふふう事事こと絕絕たえええざりざりざりけれけれければばば、、、さばれさばれさばれなほざりなほざりなおざりののの御御おんすきすきすきにににはははありありありともともともさるべきさるべきさるべきにてにてにて御心御心みこころとまるとまるとまるやうやうようもももなどなどなどかかかなからなからなからむむん、、、水水みずもるもるもるまじくまじくまじく思思おもひひい定定さだむむむとてとてとてもももなほなほしきなほなほしきなおなおしききはきはきわにににくだらくだらくだらむむんはははたたたいといといと人人ひとわろくわろくわろく飽飽あかかかぬぬぬこゝちこゝちここちすすすべしべしべしなどなどなどおぼしおぼしおぼしなりなりなりにににたりたりたり。。。「「「女女おんなごごごうしろめたげうしろめたげうしろめたげなるなるなる世世よののの末末すえにてにてにてみかどみかどみかどだにだにだに婿婿むこもももとめとめとめ給給たまふふうめるめるめる世世よにににましてましてましてたゞたゞただ人人びとのののさかりさかりさかりすぎすぎすぎむむんもももあいなしあいなしあいなし」」」などなどなどそしらはしげそしらはしげそしらわしげにににのたまひのたまひのたまいててて、、、中中ちゅう宮宮ぐうにににもももまめやかまめやかまめやかににに恨恨うらみみみ申申もうししし給給たまふふうことことこと度度たびかさなりかさなりかさなりけれけれければばば、、、
- 2きこしきこしきこしめしめしめし煩煩わずらひひいててて「「「いとほしくいとほしくいとおしくかくかくかくおふなおふなおふなおふなおうなおうな思思おもひひい心心こころざしざしざしててて年年としへへへたまひたまひたまいぬるぬるぬるをををあやにくあやにくあやにくににに遁遁のがれれれ聞聞きこえええ給給たまははわむむんもももなさけなさけなさけなきなきなきやうやうようならならならむむん。。。みこみこみこたちたちたちははは御御おん後後うしろ見見みからからからこそこそこそともともともかくかくかくもももあああなれなれなれ、、、うへうへうえののの御御み世世よももも末末すえににになりなりなり行行ゆくくくとととのみのみのみおぼしおぼしおぼしのたまふのたまふのたまうめるめるめるをををたゞたゞただ人人びとこそこそこそひとひとひとかたかたかたにににさだまりさだまりさだまりぬれぬれぬればばば又又また心心こころをををわけわけわけむむんことことこともももかたげかたげかたげなななめれめれめれ。。。それそれそれだにだにだにかのかのかのおとゞおとゞおとどのののいといといとまめまめまめだちだちだちながらながらながらこなたこなたこなたかなたかなたかなたうらやみうらやみうらやみなくなくなくもてもてもてなしなしなしてててものものものししし給給たまははわずずずやややはははあるあるある。。。ましてましてましてこれこれこれははは思思おもひひいおきおきおきててて聞聞きこゆるゆるゆることことこともももかなはかなはかなわゞゞばあまたあまたあまたももも侍侍さぶらははわむむんににになどなどなどかかかあらあらあらむむん」」」などなどなど例例れいならならならずずずことことことつゞけつゞけつづけてててあるあるあるべかしうべかしうべかしゅう聞聞きこえええさせさせさせ給給たまふふうににに、、、我我わががが御心御心みこころにににももももともともとよりよりよりもてもてもてはなれはなれはなれてててはははたたたおぼさおぼさおぼさぬぬぬことことことなれなれなればばばあながちあながちあながちにににはははなどなどなどてててかかかはははあるあるあるまじきまじきまじきさまさまさまにににももも聞聞きこえええさせさせさせ給給たまははわむむん、、、唯唯ただいといといとことことことうるはしげうるはしげうるわしげなるなるなるあたりあたりあたりにににとりとりとりこめこめこめられられられててて心心こころ安安やすくくくならひならひならい給給たまへへえるるるありさまありさまありさまののの所所ところせからせからせからむむんことことことをををなまなまなまぐるしくぐるしくぐるしくおぼすおぼすおぼすににに物物ものうきうきうきなれなれなれどどど、、、げにげにげにこのこのこのおとゞおとゞおとどにににあまりあまりあまりゑんぜゑんぜえんぜられられられてててむむんもももあいなからあいなからあいなからむむんなどなどなどやうやうやうやうようようおぼしおぼしおぼしよわりよわりよわりにににたるたるたるなるなるなるべしべしべし。。。
現代語訳
このようなことを左大臣殿がほのかにお聞きになって、六の君は、それでもこの君にこそ、しぶしぶであっても本気で恨み寄ったならば、ついにはお断りしきれまいとお思いになっていたのに、思いのほかのことが起こりそうだと悔しくお思いになったので、兵部卿宮はまた、わざとではないが、折々につけて趣深く申し上げなさることが絶えなかったので、ままよ、いい加減な好き心であっても、そうなるべき縁で、お心が留まることも、どうしてないことがあろう、水も漏らさぬように堅い婿をと思い定めても、平凡な身分に下るのは、またひどく見苦しく物足りない気がするだろうなどとお思いになるようになった。「娘の身が案じられる末の世で、帝でさえ婿をお求めになるような世に、まして臣下の娘が盛りを過ぎるのもつまらない」などと非難がましくおっしゃって、中宮にも真剣に恨み申し上げなさることが度重なったので、
中宮はお聞きになってお困りになり、匂宮に「お気の毒に、こうして一途に思い心を寄せて年月を経ていらっしゃったのを、あいにく逃れ申し上げなさるのも、情けないことでしょう。親王たちは御後見次第で、どうにでもなるものです。帝のご治世も末になっていくとばかりお思いになりおっしゃるようですが、臣下こそ一方に定まってしまえば、また心を分けることも難しいようです。それでさえ、あの大臣はたいそうまじめでいながら、あちらこちら恨まれないように扱っていらっしゃるではありませんか。ましてあなたは、私が思い置いて申し上げることもかなうならば、妻が大勢おそばにいても、どうして差し支えがありましょう」などと、いつになく言葉を重ねて、あるべきように申し上げなさるので、匂宮はご自分のお心でも、もとからかけ離れてはお思いでないことなので、強いて、どうしてありえないことのようにお返事申し上げようか、ただ、たいそうきちんとした家に取り込められて、気安く過ごしてきた有様が窮屈になるのを、何となく苦しくお思いになるので気が進まないけれど、本当にこの大臣にあまり恨まれるのもつまらないだろうなどと、だんだん気が弱くなっていらっしゃったのであろう。
意訳
夕霧は、帝が薫を女二の宮の婿にしようとしていると聞き、六の君の婿を匂宮に定める。夕霧は中宮に繰り返し訴え、中宮は匂宮に、親王は後見次第であり、妻が何人いても構わないと説いて結婚を勧める。匂宮は窮屈な婿入りを嫌いながらも、夕霧の恨みを避けるため気持ちが傾いていく。
語釈・文法注
文法
- 「水もるまじく」(水もるまじく思ひ定むとても)
- 水も漏らさぬように。堅実で浮気しない婿を求めること。
- 「おふなおふな」(いとほしくかくおふなおふな思ひ心ざして)
- 一途に、懸命に。
- 「ゑんぜられて」(このおとゞにあまりゑんぜられてむも)
- 怨ぜられる。恨まれる。
解説
帝が薫を婿に選んだことで、夕霧は六の君の婿を匂宮に定める。宮中の縁談が連鎖し、中の君の運命にも影を落とす。
中宮は、親王は妻が何人いてもよいと説く。この論理が、二条院の中の君を苦しめることになる。匂宮は窮屈さを嫌いながらも、周囲の圧力に屈していく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1006–1007頁(コマ214)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日